先日の中医協総会にてフォーミュラリーの診療報酬上の評価について議論がありました。
今日の医療現場では医薬品の適正使用がますます重要となっています。
これは経済的な視点やポリファーマシーへの対応に留まらず、抗菌薬や向精神薬の適正使用など標準的な薬物治療を進める、あるいは不必要な投薬を防止するといった点も含まれます。
そのような背景から医療機関における患者に対して最も有効で経済的な医薬品使用における指針としてフォーミュラリーの概念が提唱されており、医療機関におけるフォーミュラリー導入が広く求められています。
今回はそもそもフォーミュラリーってどういうことなのか、
これから先どのようなことが求められているのかということについて見ていきます。
目次
フォーミュラリーとは何?
結論
フォーミュラリー推進が後発医薬品の普及ひいては医療費削減につながります。
フォーミュラリー
フォーミュラリーって何?
フォーミュラリー(Formulary)とは学術的には
「疾患の診断、予防、治療や健康増進に対して、医師をはじめとする薬剤師・他の医療従事者による臨床的な判断を表すために必要な、継続的にアップデートされる医薬品のリストと関連情報」
と定義されています。
簡単に言うと
「医療機関において患者に対する最も有効で経済的な医薬品の使用方針」
となります。
またフォーミュラリーはファーマシューティカルケア理念(患者のQOLを改善するという明確な成果を引き出す為に責任ある薬物治療を提供するという考え方)
に基づいた医薬品使用基準の考え方であり欧米先進国ではすでに導入、活用されています。
フォーミュラリー導入のメリット
メリットとしては患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用を目指す標準薬物治療の推進があげられます。
後発医薬品を基準薬とすることで医薬品費の削減、院内採用薬品数や医薬品の効率活用による医薬品購入費の削減などから病院経営への寄与も期待出来ます。
またフォーミュラリー作成に際してはエビデンスを基にした医薬品の有効性・安全性評価が行われ運用管理において医薬品の使用実態調査や副作用モニタリング、
医薬品に関する過誤対策がなされるようになり医薬品リスク管理の向上にもつながります。
フォーミュラリーの役割
有効性や安全性、費用対効果などを踏まえて関係する医師や薬剤師らで構成される委員会で協議し
継続的にアップデートする使用指針(フォーミュラリー)を定めることにより質、安全性および経済性も高い薬物治療を行いやすくなります。
事前に評価し標準的な使用指針を定めておくことで、使用指針に沿う患者への対応がスムーズになるだけでなく、
それでは対応できない一部の患者の場合でも必要かつ有用な医薬品をフォーミュラリー外から選ぶことが容易になります。
医師は自分の専門領域の薬物療法は熟知されていますが専門外の薬剤選択には悩むことがあるかもしれません。
専門分野以外でも適切な薬物療法を効率的に行えるよう支援することが可能になります。
院内フォーミュラリーと地域フォーミュラリー
1つの病院内の医師や薬剤師などが作成するのが院内フォーミュラリーで、
地域の中核病院や医師、薬剤師などが共同で作成するのが地域フォーミュラリーと呼ばれます。
院内フォーミュラリーは意思決定者が病院内にとどまる為作成の難易度は低いですが地域の医療経済への影響は小さいです。
一方で地域フォーミュラリーはステークホルダーが多岐に渡る為難易度は高い一方で経済効果は大きいとされています。
厚労省としては院内で運用されていたフォーミュラリーを地域に拡大することで地域の経済的なインパクトを増大させるだけでなく、
重複投薬やポリファーマシーの解消、薬薬連携の充実など多くのメリットが見込めると期待しています。
フォーミュラリーと診療報酬
後発医薬品
2014年度診療報酬改定で後発医薬品調剤体制加算の要件が見直され国主導で後発医薬品の利用促進に取り組んでおり2020年9月までに後発医薬品使用割合80%を目標にしています。
しかし数量ベースでその割合が高まっていても金額ベースで増えているかと言えばそうともいえない現状だといいます。
PPI経口薬を例にとると2017年度の後発医薬品変換率は数量ベースでは約78%であったのに対し金額ベースでは約28%にとどまっています。
いくら後発医薬品の数量が増えても薬価が高い先発品が上位を占めていればそれほどの削減額につながらないということです。
この場合に後発医薬品のない先発医薬品を別の後発医薬品に代替するフォーミュラリーを導入すれば大いに薬剤費の削減につながります。
院内フォーミュラリーはもとより地域フォーミュラリーともなれば膨大な医療費削減が可能になると見られています。
フォーミュラリー加算
厚労省は診療報酬によってフォーミュラリーに誘導していきたいと考えています。
出来れば次期改定にてフォーミュラリー加算なるものを新設しインセンティブとしたいとしています。
しかし先日での総会ではフォーミュラリーの作成を診療報酬上で評価することについては、診療・支払各側とも慎重な姿勢を示しました。
まとめ
2020年度診療報酬改定の項目には入ってくるかどうか分かりませんが、フォーミュラリー推進は医療にとって正しい道です。
ですが医療費削減の為にというのはその本質ではありません。
患者ファーストの視点でどの薬剤を使用するのがいいのかを考えムダのない投薬を行うのが本質であり、
その副次的効果で医療費の削減に寄与するというのが正しい順序です。
フォーミュラリーやポリファーマシーは次期改定はもちろんその次の改定にも必ず関係してくる重要事項ですので今後も注視していきたいと思います。
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