医療事務の将来というのは正直かなり読みにくい時代に入ってきていると感じています。
確実にAI・ICTの波は押し寄せてきますがどの時点から加速度的に進んでいくのかはまだまだ未知数です。
たとえば2021年3月からマイナンバーカードに保険証機能を付与した仕組みの運用が開始されます。
ですが既存の保険証も廃止はされずに併用運用されます。
そうなるとこのシステムは形だけがあってほぼ進展しないようなものです。
テクノロジーが格段に進んでいるといった実感はその時点では得られないでしょう。
またレセプトのコンピューターチェックも強化されていくことになっています。
これもどこかのタイミングで機械対機械の図式にシフトしていくとは思いますが、それがまだまだ先なのかもうすぐそこなのかははっきり分かりません。
そうした中でこの先5年後、10年後に自分がどうなっているか、どうなっていたいかというキャリア像を描いている人も多くいることと思います。
今回はその点も含めて医療事務という職種、
そして天職というものの考え方、
転職の考え方というところを見ていきたいと思います。
医療事務と天職と転職【コネクティング・ザ・ドッツ】
結論
今この瞬間に尽力することが大事です。
そして一生懸命に頑張っている限り自分にとってのムダな経験なんて存在しません。
天職論
計画的偶発性理論
計画された偶発性理論というものがあります。
これはスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提案したキャリア論に関する考え方です。
個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されており、その偶然を計画的に設計し自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方をいいます。
つまり天職と呼ばれているものは本来自己を内省的に振り返ることで見出すものではなく、人生のある時に思いもかけぬ形で他者から与えられるものではないか、という考えにもとづいている理論なのです。
これは実際に米国のビジネスマン数百人を対象に調査を行い、キャリア形成のきっかけは80%が偶然であるという結果から導き出された結論なのです。
この調査結果をもとにキャリアは偶発的に生成される以上、中長期的なゴールを設定して頑張るのはナンセンスであり努力はむしろいい偶然を招き寄せる為の行動とするべきだということです。
そしてその計画的偶発性とは以下の行動特性を持っている人に起こりやすいと考えられています。
•1.好奇心[Curiosity]
•2.持続性[Persistence]
•3.柔軟性[Flexibility]
•4.楽観性[Optimism]
•5.冒険心[Risk Taking]
これらから分かることはやはり失敗を恐れずに挑戦をし続けることが大事ということです。
コネクティング・ザ・ドッツ(点と点をつなげ)
これは知っている方も多いと思いますがアップルコンピューターの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の2005年の卒業式で行ったスピーチの中の格言です。
「先を見通して点をつなぐことはできない。
振り返ってつなぐことしかできない。
だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。
何かを信じ続けることだ。
直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。
この手法が私を裏切ったことは一度もなく、そして私の人生に大きな違いをもたらした。」
引用:2005年 スタンフォード大学卒業式スピーチ
つまりその時は偶然の選択であっても後から振り返ってみると全て線でつながっているということです。
将来のキャリア像を考えることも大切ですがまずは目の前の仕事に全力でのぞまないといけないのです。
その経験が必ずのちのち活かされることとなるのです。
結局一生懸命に頑張っている限り自分にとってのムダな経験なんてないということです。
転職論
転職を考える
人生100年時代と言われています。
年金受給年齢も平均寿命も定年年齢も上がっていく時代において今までの常識は未来の非常識となっていきます。
すでに終身雇用は詰む状態にまで来ました。
この先病院も淘汰の時代に入っていき潰れるところも普通に出てきます。
まして医療事務においては前述したとおりAI・ICTの波が来ると人工(ニンク)が減らされていきます。
それでなくても医療事務は入れ替わりの激しい職種です。
当然将来のキャリアを考えた時転職の選択肢がそこにあっても不思議ではありません。
私は転職は必要であればすべきというスタンスです。
ですがすべきでない転職もあると思っています。
それは逃げの転職です。
人間関係がつらくて転職、給料が安いので転職、モチベーションが低くて転職、どれもありがちです。
ですがそれらはどれもハッピーエンドにはなかなかたどり着かないような気がします。
なぜならそれは客観的な判断にもとづいていないからです。
簡単に言えば今の状況がいやだから辞めるという選択だからです。
人間関係も給料もモチベーションも全て自分の行動で改善出来る余地があるものです。
客観的に見て明らかにパワハラを受けていてとか労働条件がひどくてというように自分ではもうどうしようもない状況であるならば一刻も早く辞めるべきです。
ですがそれ以外の場合で自分の努力余地がまだあるのにそれを無視しているような姿勢ならば違う職場でも同じことです。
というか転職ってそんな低い志で行うようなものではありません。
転職はいっときの感情で行ってはいけないのです。
いやだから辞める。誰だっていやです。
仕事に対していやな部分は誰でも持っています。
ですがそれを上回る目標や志があるから頑張れるのです。
そこをクリアに出来ていない人はまずその部分を整理、解決すべきなのです。
転職うんぬんはその後です。
ですので逃げの転職は行ってはいけません。
給料アップの為にというのが転職の目的の1つであってはいいと思いますが、第1条件にしてはいけないのです。
第1条件は自分のキャリアアップ、自己成長でないといけないのです。
それでこそ転職する意味があります。
エモーショナルサイクルカーブ
エモーショナルサイクルカーブという言葉があります。
これは新しい環境に飛び込んだ人の精神がどう変化するかをモデル化したものです。
入職したての時期が一番やる気が出てその後一度大きく下がった後に安定することを示しています。
何か新しい環境に入ったり人と知り合うと人は一般的にこのような反応を示すので構造的要因と理解した上でいかに下がった後のモチベーションを維持出来るかが大事になります。
Wantedlyより抜粋
これは誰しも経験することですから実感として分かることだと思います。
就職時、転職時は間違いなくこのカーブになります。
大事なのは最初の高揚感が去った後、志を忘れずに粘れるか、頑張れるかということです。
転職で忘れられがちなことは転職によって得られるものはあるが同時に失うものもあるということです。
医療事務でいうと全く同じ部署、たとえばクラークであっても仕事内容が全く同じなんてことはありません。
転職先の病院の運用方法、規則、人間関係など全てゼロから覚えなおす必要があります。
それは診療情報管理士であっても医師事務作業補助者であっても同じです。
仕事内容の核の部分は同じでもそこに付随してくるものが全てゼロなのです。
この部分は想像以上に大きいのです。
特に人間関係が顕著です。
前の職場では当然と思っていたことが今の職場では当たり前ではない。
こんなことはよくある話です。
ですがこのストレスがバカには出来ないのです。
こんなことならまだ前の方がマシだった。
そう感じてしまう下降カーブの時期というのが必ず来ます。
ですがそれは必ずいつか上昇し出すのです。
でもそのいつかがどれぐらいなのかは人によってバラバラです。
そしてその上昇の時期まで耐えられず諦め辞めてしまう人も一定数いるのです。
そうなるとまた次の職場でも同じサイクルカーブが来るので無限ループとなってしまいます。
大切なことは下降から上昇までの間はじっと我慢するということに尽きます。
耐えれば道は開かれるのです。
このエモーショナルサイクルカーブの原理さえ知っていれば必ず最後はサイクルが完了すると理解出来ているはずなので耐えられます。
ぜひ覚えておいてほしいと思います。
まとめ
天職とは見出すものではなく与えられるもの。
転職とは何かを得る分、何かを失うということです。
つまり医療事務が天職となるかどうかは自分ではどうにも出来ないしする必要もないということです。
そして大事なことは目の前のタスクを1つ1つ全力でこなしていくことだけです。
今はそれがただの点だとしてもいつかそれらはつながるのです。
そのことを信じて今を突き進めということです。
当然将来像を描くことは大切なのでそのことも行いつつ、
今やらなければならないことを全力投球する、
シンプルにそれだけでいいのではないでしょうか。