改めて医師事務作業補助者の役割を考える【医師の働き方改革とタスクシフティング】

現在国では医師の働き方改革に向けて今後強力に労働時間を短縮していくにはどうしていくべきかという議論が行われています。

そこでは医師から他職種へのタスクシフティング(業務移管)が必要不可欠であり具体的にどのように進めていくかを検討する為の意見聴取、意見交換も進められています。

今後ますます議論が活発になると予想されるこのタスクシフティングにおいてその一翼を担っている医師事務作業補助者について今回改めてその役割と今後について考察していきたいと思います。

改めて医師事務作業補助者の役割を考える【医師の働き方改革とタスクシフティング】

結論

タスクシフティングを推進していく為にはまず医師事務作業補助者の業務技能評価と人材育成の標準化が必要です。

また医師事務作業補助体制加算の制度上の自在性や弾力化の検討も必要です。

タスクシフティング(業務移管)

タスクシフティングの本質

タスクシフティングとは医師から他職種にまた他職種からさらに別の職種に当該職種でなくとも実施可能な業務を移管し、当該職種がその資格保有者でなければ実施不可能な業務に集中できる環境を整えるものです。

もっともある業務を他職種に移管した場合でも安全性、有効性などの質が担保されなければなりません。

また業務移管を行ったとしてもたとえば指示等に膨大な時間がかかるが軽減される業務量はごくわずか、のような場合には当面は業務移管を見合わせるという判断も必要になります。

移管出来るものならどんどんしたらいいというような話ではないのでこの部分の見極め、判断は重要です。

タスクシフティングに関するヒアリング

現在厚労省では「医師の働き方改革を進めるためのタスクシフティングに関するヒアリング」を行っており第1回目が6月17日に開催されました。

そこでは特定非営利活動法人 日本医師事務作業補助研究会への意見聴取、意見交換が行われました。

タスク・シフティング 推進に関するヒアリング 2019/6/14作成 特定非営利活動法人 日本医師事務作業補助研究会

その中では現状の問題点として

(1)業務の水準(技能)を評価する枠組みがない

(2)養成(研修)が人材派遣会社や医療団体ごとに実施され、統一的な養成カリキュラムがない。

(3)上記要因から各病院、各医師事務作業補助者の業務水準に大きな格差があるということが出されています。

医師事務作業補助体制加算

それでは次に現況を見ていきます。

現在医師事務作業補助者を配置することで医師事務作業補助体制加算が算定出来ることとなっています。

加算の対象業務は医師の指示のもとに行い診断書などの文書作成の補助、診療録への代行入力、医療の質向上に資する事務作業、行政上の業務に限定されています。

医師以外の職種の指示のもとに行う業務をはじめ、診療報酬の請求事務、窓口・受付業務、医療機関の経営・運営の為のデータ収集業務、看護業務の補助、物品搬送業務などは対象とされていません。

勤務医の負担軽減を目的とした規定であれば妥当な基準であるといえます。

ただこのような基準の存在によって病院運営に支障が生じる可能性もあります。

医師の指示のもとという縛りによって医師事務作業補助者と他の職種との間にコミュニケーションギャップが生じるケースがあります。

ギャップが生じるのには個人の資質も多分に関係はしますが事務員でありながら一般の事務職員と隔たりがあることも少なくなく他の事務職員に比べて時間外業務が少ないことなどもギャップを助長しているのかもしれません。

医師事務作業補助者はいったん配属されるとその道のプロとしてキャリアパスを歩む傾向が強いです。

医師も慣れ親しんだ担当者であればあうんの呼吸で業務を進められるので好都合です。

外来業務などもはや医師事務作業補助者がいなければ進まないというケースもあることでしょう。

はたしてそれは病院運営という点でとらえた場合ベストなのかどうかはしっかりと検証する必要があります。

また医師の指示のもとという縛りで運営が難しい点もあります。

医師事務作業補助者は外来に配置する病院が多いですが加算1では勤務時間のうち8割以上を病棟または外来で業務することと定められています。

ただ病棟に配置となると看護師や他のスタッフもステーションにいる為他の職種の指示は聞きませんという訳にも実際はいきません。

そんなことをしていれば業務は止まるし他のスタッフとの摩擦だけが大きくなりデメリットばかりが増えていきます。

ですので病棟配置はかなり難易度が高いのです。

更に診療報酬の請求事務は禁止されていますが医師が行った診療行為を医師事務作業補助者が実態に応じて適切に算定する為代行入力をする場合があると思います。

請求事務と代行入力の境界線を明確に出来ない部分もありその線引きも難しいものがあります。

医師事務作業補助体制加算というものはこの制度により医師事務作業補助者の配置が進み、医師の業務軽減に貢献しているという点では大変評価出来るものなのですが、前述の通り現場の実態に即していない、本来目指しているものとずれている部分というのが少なからずあります。

これだけやって良い、あれはやってはいけないの状況では円滑に業務を遂行出来ず医師事務作業補助者が持っているスキルを十分に引き出せてはいないといえます。

そして医師事務作業補助者の全般的な評価はどのように活用することがベストなのか各病院でしっかり検討することが大切です。

結論を先に言うと定期的なローテーションを行いながら事務職員としてのキャリアパスが重要と考えます。

今後医師事務作業補助者と採用され何十年もその業務のみ行う人材というのが増えてくると予想されます。

それはそれで真の医師事務作業補助者プロフェッショナルとなるので、ありともいえますが別の考え方としてその職員が医事課や他の部署を経験すれば現場の第一線を熟知しているが故に部署異動によって得られる効果も絶大です。

何より同じ仕事を継続して行っているとどうしてもマンネリになってしまい仕事の質が低下してしまいます。

その為新しいことへ挑戦することで新鮮な気持ちで業務に取り組み新たなシナジーを生み出していく姿勢は大切です。

医師事務作業補助者の成長マインドをはぐくむ土壌とそれをバックアップする教育、人材育成の体制整備がまずは必要です。

まとめ

 

医師事務作業補助者の人材育成、教育体制については現在各病院に委ねられている状態です。

それによって医師事務作業補助者業務の範囲のばらつき、スキルのばらつきがあるのは確かです。

国はあと5年の間でどうにかして医師の勤務状況を改善したいと考えています。

その為にはタスクシフティングは必須であり、事務作業においては医師事務作業補助者へのタスクシフティングがとても重要との見解を示しています。

その為には医師事務作業補助者のスキルアップ、質の標準化というものがとても大事なのです。

ですので今後間違いなく人材育成、教育の部分に何らかの手を打ってくるものと思われます。

そういうバックアップが増え更にブランディング化されることによって目指す人が増える人気職種に育っていくことが理想ではないでしょうか。

それがひいては医師の働き方改革につながり日本の医療のプラスになることは間違いないでしょう。

 

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