医事関連のテーマを中心に感じたこと、考えたことを綴っていきます

【医師事務作業補助者】タスクシフティング推進には何が必要か?【医師の働き方改革】

現在国は医師の働き方改革を行う為に大きく次のような方針を明確にしています。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)(いわゆるA水準)

▽ただし、「3次救急病院」や「年間に救急車1000台以上を受け入れる2次救急病院」など地域医療確保に欠かせない機能を持つ医療機関で、労働時間短縮等に限界がある場合には、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるB水準)

▽また研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合には、時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるC水準)

▽2024年4月までの5年間、全医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)、「労働時間の短縮」(タスクシフティングなど)を進める

医療機関は今後労働時間短縮に向けた取り組みを進める必要がありその中で重視されているのが「医師から他職種に、また他職種からさらに別の職種に、当該職種でなくとも実施可能な業務を移管し、当該職種がその資格を保有していなければ実施不可能な業務に集中する」環境を整えるタスクシフティングです。

そしてそのタスクシフティングにおいて注目されている職種の1つが医師事務作業補助者です。

過去の記事でも次期診療報酬改定に向けて医師事務作業補助者がキープレイヤーですということは述べてきました。

⇒⇒⇒鍵はやはり医師事務作業補助者【医師の働き方改革】

今回は先日行われた日本医師事務作業補助研究会へのタスクシフティング推進に関するヒアリングの内容も踏まえ、医師事務作業補助者へのタスクシフティングについて見ていきたいと思います。

【医師事務作業補助者】タスクシフティング推進には何が必要か?【医師の働き方改革】

結論

医師事務作業補助者への教育体制の構築、人材育成の標準化が急務です

タスクシフティング推進に関するヒアリング

先日のヒアリングにて行われた日本医師事務作業補助研究会によるプレゼンより主立ったところを以下にピックアップしていきます。

 

医師事務作業補助者の業務内容別従事者数割合

・上位は、保険会社の診断書82.8%、病院様式の診断書77.7%、介護保険主治医意見書が71.3%

・まだ従事者数が少ない業務は、NCDやJND、がん登録などのデータ登録業務、入院業務

医師事務作業補助者の配置効果

・医師の事務作業の負担軽減に関しては良くなったと答えている施設が約8割、精神的負担の軽減は約7割

医師の業務変化

・医師がより患者に集中できる時間(診療)が増えた。余裕ができた時間を研究や教育に活用することが可能となった

看護師・コメディカルの業務変化

・看護師及びコメディカルが行っていた医師の補助的な業務が軽減され、職種ごとに本来の仕事に集中できるようになった

患者サービスの変化

・医療情報等の返信の対応が速やかになったため、他の医療機関からの評判がよくなった、または待ち時間の短縮が図られた

医師が多職種に分担可能と考える業務の割合

・1番高いのが医療事務、診断書などの文書作成33%。2つ目が血圧などの基本的なバイタル測定27%

実際に医師が費やしている時間

・医療記録(電子カルテの記録)、患者への説明・合意形成に多くの時間を費やしている

医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み

・医師事務作業補助者が行うことができるのが「検査手順の説明や入院の説明」「診断書などの代行入力」であり積極的に進めていきたい

医師事務作業補助者に移管可能な業務

1.検査手順の説明業務

2.医療記録(電子カルテ記載)

3.症例登録等の各種統計資料の作成

業務移管を受けた際の質の確保について

・上記業務の開始に際し医師や看護師(または先輩職員)から直接の指導を受ける

・検査手順の説明業務においては患者接遇能力を向上させる、コミュニケーション能力を向上させる

・医療記録であれば代行入力や個人情報保護のルールを熟知する

・データ登録に関してはより高度な医学知識を習得する

・安心して業務につける為のマニュアルを整備する

タスクシフト推進に関する課題について

・検査手順の説明に関してはこれが実施可能な業務であると認識していない病院が結構存在する。

これを解決する為には先進的な業務事例や効果の普及を行うことが有効。

・医療記録(電子カルテ)の記載に関しては承認機能がない場合がある(代行入力者が入力した記録を医師が確定承認する機能がない)。スキル不足、マンパワー不足の改善が必要。

・症例登録等の統計資料の作成に関してはスキルアップはもちろんのこと施設基準の要件緩和(8割以上という縛り)も有効であると考える

雇用・配置に関する課題

常勤職員の比率は民間病院では70%ということで実務者が自分で働く環境を選べる状況であるが、公立病院はどうしても正規職員の定数があって増やせないということで長期雇用とかスキルアップ、モチベーションアップが図りにくいのが実情。

医師事務作業補助者へのタスクシフティング推進に向けて(当研究会の取り組み)

【現状】

(1)業務の水準(技能)を評価する枠組みがない

(2)養成(研修)が人材派遣会社や医療団体ごとに実施され、統一的な養成カリキュラムがない。

(3)上記の要因から、各病院、各医師事務作業補助者の業務水準に大きな格差がある。

【対策】

(1)資格化も含め、技能水準を評価する枠組みを創設する。

(2)統一的な養成カリキュラムを作成するなど人材育成・研修を標準化する。

(3)各種団体の支援も受けながら、当事者の職能団体を創設し、職能としての自主的な取り組みを行える環境を整備する。

以上が日本医師事務作業補助研究会によるプレゼンでした。

タスクシフティングが進まない理由

上記の内容と重複する部分がありますが現状タスクシフティングが進まない理由としては以下のことが考えられます。

1.医師事務作業補助者の配置によって得られる診療報酬よりも人件費の方が大きい為採算が合わないと判断し雇用に消極的になる病院が多い

2.医師事務作業補助者は基本的に医師の業務を代行するものであり看護師をはじめ他の職種の業務代行は行えない

3.医師事務作業補助者の多くは派遣であり質のばらつきが大きい

4.タスクシフティングを行った結果問題が生じた際の責任の所在が不明確

 

この中で診療報酬と人件費の比較で採算が合わないと判断するところは未だに多いのだと思います。

病院によっては単純に「診療報酬-人件費」がマイナスだからという理由で採用を断念する場合があります。

ですがこのようなケースでは機会損失コストまで考える必要があります。

⇒⇒⇒医師事務作業補助者の未来ってどうなの?【存在価値はもっと高まる】

⇒⇒⇒医師事務作業補助者フル活用への考え方【費用ではなく原価です】

ですが仮に機会損失コストまで勘案して医師事務作業補助者を導入したからといって業務が効率化した、患者数や手術数が増えた、という可視化されたデータを出すことはなかなか難しいことです。

患者数や手術数を指標にしたとしてもそれは病院の評判が良くなって患者が増えたかもしれないし、医師の技術が向上したという側面があるかもしれないからです。

ただ、その数値情報がなければ導入に踏み切れない病院もきっとあるでしょうし、そう考えると見える化出来る方法を見つけていくことも業界全体の重要な課題の1つだと思います。

まとめ

 

 

検査手順の説明業務、医療記録(電子カルテ記載)、症例登録等の各種統計資料の作成という業務が移管されればそれはかなりの負担軽減となります。

ですがそれを達成するには質の確保が必須です。

日本医師事務作業補助研究会によるプレゼンの本文にもありましたように接遇能力の向上、代行入力や個人情報保護のルールの熟知、高度な医学知識の習得といったような個人のスキルアップが欠かせません。

今後は人材育成、研修の標準化が必要となってきます。

これは医事課にも言えることですが結局仕事の質の核となる部分は個人に委ねられる訳でそういう意味では教育体制の整備を本来1番最初にするべきなのです。

個人のスキルの底上げ、そして人材育成の標準化、そこがしっかり出来ていないとタスクシフティングがどんどん進んでいくことはないのです。

 

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