医療事務と残業は終わりのないテーマなのか?【働き方改革は意識改革】

医療事務と残業は昔から語られてきているにもかかわらず未だ根本解決出来ない根深いテーマです。

医療事務はブラック、長時間労働、レセプト残業は当たり前などは昔から言われてきました。

確かに昔はその傾向がかなり強かったように思えます。

しかし時代は流れコンピューター化が進んできた昨今において残業問題はどうにも出来ない問題からどうにか出来る問題へと変わってきました。

そして国としても働き方改革を掲げ労働時間を短縮させようとしています。

結局のところ国や企業・法人が改革を行うことも大事ですが1人1人の意識改革がとても重要です。

どこか1つが頑張ったところで出来ることには限界がありやはり国、企業・法人、各個人が三位一体となって協力し合って進めていくことが必要です。

その中でおのおのがいろんなモデルケースを検討し現状より良好な環境を手に入れるべく模索することが大切です。

そのモデルケースの1つとしてドイツで取り組まれている労働時間貯蓄制度を見ていきその上で日本に合う制度とはどんなものか、もっといえば医療事務の働き方に合う方法ってどういうものなのかというところを考えてみたいと思います。

医療事務と残業は終わりのないテーマなのか?【働き方改革は意識改革】

 

結論

終わりのないテーマです。

なぜならそれはマインドセットを変える必要があるからです。

そしてそれはとても高いハードルだからです。

残業時間の考え方

労働時間貯蓄制度

労働時間貯蓄制度とは労働時間を口座貯金のようにとらえて管理する方法になります。

つまり基本となる労働時間を定めた上でそれ以外の時間に働いたらその時間を貯めておくことが出来る制度です。

貯めた時間を有給休暇としたりその分で1日の労働時間を短くすることが可能になります。

たとえば4時間残業したら後日早上がりや半休にして貯蓄していた4時間を使います。

逆に私用で早く帰ることがあればどこかでその分残業することにより相殺します。

つまり自分が働けるときに働く休みたいときに休むことが出来るので自分の生活やライフスタイルに合わせて時間を使うことが出来ます。

貯蓄できる時間の上限や残高の清算が可能な期間の規定は個々の企業・法人や契約の内容によって異なっています。

休暇や日常のプライベートに割く時間とすることはもちろん育児や介護、資格取得の為の勉強にあてるケースもあります。

非常にフレキシブルに使えて個人にとってメリットがある制度です。

またメリットは個人だけでなく企業・法人側にもあります。

残業に必要な手続きや追加の手当の支払いが不要になります。

また残業代を稼ぐために長時間働く労働者を減らすことができ残業代を抑えることが可能となります。

そして長期的に考えた場合のメリットは労働需要が変動した際に労働力の調整を従業員数ではなく労働時間の調整をすることで対応が出来るということです。

結果的にリストラを回避し人材を確保しておくことも可能となります。

ドイツと日本

上記の労働時間貯蓄制度の内容を聞くと私達日本人が思うことは一緒だと思います。

「そんなのは無理、できっこない」と。これは現時点では確実にそうだと思います。

そしてそもそもドイツと日本ではその土壌が全く違います。

まずドイツは先進諸国の中でも最短水準の労働時間と高い生産性を誇っています。

経済協力開発機構(OECD)の調べによると2014年の1人当たり平均年間総実労働時間は日本が1729時間であったのに対しドイツは1371時間です。

にもかかわらずドイツの職場における労働時間1時間当たりの生産性は60.2ドル。

日本は41.3ドルなので日本のほぼ1.5倍の生産性があることが分かります。

さらに日本の有給休暇は年平均18.4日ですがドイツは30日です。

ちなみにフランスも同様に30日でイギリスやイタリアなどでも25日です。

有給休暇の取得率は日本が47.6%だったのに対し、有給休暇の消化を義務づけるヨーロッパ諸国では100%近い水準です。

ヨーロッパ諸国と比べると日本の生産性の低さ、有給消化率の低さ、有給消化の短さがよく分かります。

なぜそこまで差があるのか。

もちろん労働時間貯蓄制度の効果もあるのでしょうが最大の理由は労働者の自分で働く時間と休む時間をコントロールしやすい職場環境と意識づけの高さにあります。

ドイツでは仕事は人ではなく企業・法人についているという考え方をします。

たとえば合わせをしたときに担当者が長期休暇を取っていて不在であっても、他の人が問い合わせにきちんと答えてくれさえすれば良いという考え方です。

その為休みを好きなタイミングで取っても罪悪感を感じずに済み、むしろ当たり前の権利として自由に使えるものだという認識が根底にあります。

日本はその逆でこの業務は自分でなければ務まらない、という意識が非常に強いです。

たとえばある入院係が1週間バカンスに行きたいとなってもその期間の退院業務を考えればとてもじゃないがそんな長期間席を空けるわけにはいかない、となってしまうのです。

ですのでこれは完全に国民性、風土、文化的な要素が非常に大きい訳です。

労働時間貯蓄制度はマッチしない

現状では労働時間貯蓄制度がたとえ導入出来たとしても全く機能しないと推測出来ます。

有給取得率が5割に達していないこの現実で口座に貯蓄した労働時間を使う人がそんなに出てくるとは思えません。

そうすると口座に労働時間が貯まる一方で何の役にも立ちません。

となると必要なのは有効期限の来る貯蓄時間を換金する仕組みとなります。

それがないと膨大なサービス残業が発生しかねないからです。

そして大部分の人は休暇として使わずに換金を望むことになります。

換金であれば職場の同僚に迷惑をかけなくて済むからです。

そうなると結局は今と同じで残業代を給料日にもらうか年度末にまとめてもらうかの違いになるだけです。

つまり、現状の日本にこの制度を持ち込んでも日本人に全くマッチしないということです。

フレックスタイム

昨日の記事の主旨ともかぶるのですがそもそも働き方改革の本質が何なのかってところがすっとばされている気がします。

まず目がいくのが長時間労働の削減や有給休暇の取得ですがそこにばかりに意識が向きすぎてはいないでしょうか。

もっと目を向けなければならないのは仕事の質であるはずです。

労働時間を短縮して生産性を上げるというのであればまずすべきことは質の向上にあるはずです。

その為に医事課としてどんな取り組み、工夫をしていくかはそれぞれの医療機関の知恵次第ではあると思います。

そしてその本質部分のとらえ方は共通した認識は持てないかもしれませんがシステムとしての働き方を考える点でいえば同じ医事課同士いろいろ共感しあえる部分、提案できそうな意見というものもきっとあるはずです。

その観点からいえばフレックスタイムというのは医事課には取り入れられないのでしょうか。

フレックスタイム制とは労使協定に基づき労働者が各自の始業時刻と終業時刻を原則として自由に決められる制度です。

ただし多くの場合はコアタイムがありこの時間からこの時間までは勤務していること、と定められています。

フレックスタイムとは耳にはよくするので一般企業では浸透しているものだと思っていましたが厚生労働省の調査(平成29年就労条件総合調査)によるとフレックスタイムを導入している企業は全体の7.9%とのことでした。

この割合だと医療機関で採用しているところなどほぼないのでしょう。

そもそも医事課にフレックスタイムなんているのっていう意見もあるでしょう。

また、診療時間が決まっている中でどういう使い方が出来るのっていう意見もあると思います。

しかし使い方はあると思います。確かに外来担当者は決まった時間にいてもらわないと困りますがそれもコアタイムさえ守られていればスライドさせることは可能です。

ここで私がフレックスタイムにこだわるのには2点理由があります。

まず1点目ですが午前のフル活用です。

これは特にレセプト業務に関してです。

昨日の記事でも書きましたがレセプト点検などの集中力を要する業務を行うのは断然午前中がいいです。

夜には集中力、意志力はほぼ残っていません。

どちらの時間帯が頭を使う業務に向いているかは明らかでしょう。

それならば同じ8時間労働だとしても9時から始めれば午前は3時間しかありませんが7時から始めれば5時間も使える訳です。

そして夕方前には帰宅して夜は十分リラックスし睡眠も十分とれれば翌朝もMAXの集中力を発揮出来ます。

次に2点目ですが通勤ラッシュが避けられストレスが軽減される、またワーク・ライフ・バランスを実現しやすい環境となるので満足度が高まり職員エンゲージメントを高めることに寄与出来るのではないかと思うのです。

⇒⇒⇒エンゲージメントって何?【病院と職員エンゲージメントと満足度】

ただでさえ医療事務は離職率が高い職種とされています。

その原因には様々なストレスが影響しているものと推察されます。

その部分を緩和することに少なからず作用するのではないかと思う訳です。

しかし逆にフレックスタイム制にすることで管理職の目が届きにくくなりモチベーションへの働きかけやコミュニケーションが薄くなり逆効果だという意見もあります。

このあたりはケースバイケースですが管理職のマネジメント能力に大きく左右される部分だとは思います。

ただこれらのことは机上の空論なので実際はどうなのか、それはやってみないと分からないことなので試す価値はあると思います。

働き方改革は意識改革

働き方改革の本質って何かというと生産性を高めることです。

残業を減らしましょう、労働時間を短くしましょうといっているのも全ては生産性を高めることにつながっています。

さてここで医事課の生産性を高めるとはどういうことかを考えます。

前にも述べましたが医事課の最大の役割は診療行為をお金に換えること、そしてその利益を最大化させることにあります。

そしてレセプト点検の本来の目的は何かというと診療行為を最大限に収益化することです。

もう極端に言えばその1点にだけ注力すればいいのです。

そしてそれを実行する為に必要なのは時間の長さではないのです。

むしろ時間を短縮して精度を上げていくことが生産性を高めるということなのです。

昨日の記事でも書きましたがこの部分を大して気にせず業務に向かっている人って結構いると思います。

いわゆるレセ期間信仰です。

レセ期間なんだから残業して当たり前と思っている人達です。

レセ期間信仰は過去の遺物だということに早く気づくべきです。

診療報酬改定は2年ごとにありますが改定内容が2年ごとにガラッと変わるなんてことはありません。

ですので1度医療事務を覚えたら知識のアップデートは要所要所で必要ですが永続的に使える知識なのは間違いありません。

そしてレセプト点検においてはレセプトのコンピューターチェック化が進みレセプトを全件目視点検する必要はありません。

だとするとレセプト点検においては明らかに効率化され時間短縮されていなければおかしいのです。

しかし依然としてレセプト残業は残り続けています。

そうなるとその原因はもう1つしかありません。

それは点検者のマインドセットです。

もっと分かりやすくいうと甘えです。

レセプト点検なんだから、医療事務でとても大事な業務だから時間をかけて行う必要があるという思い込みです。

だったら時間はどれぐらいあればいいのか説明してもらおうとしても明確な答えはありません。

なぜならそれは自分のさじ加減だからです。

いわゆるパーキンソンの法則です。⇒⇒⇒医事課の生産性とは? 【パーキンソンの法則】

全ては自分への甘え、そして客観性のないものの見方から生まれています。

結局どんなに残業を減らしましょう、効率化しましょうと周りが言ったところで本人のマインドセットがそれではなんにも響かない訳です。

方法論とかあるべき論とかの前に個人の考えを1ミリでも動かしていかないとどうにもならない話なのです。

まとめ

働き方改革という方針と生産性の向上という目的、そして残業時間の削減という手段は今までの業務のやり方を見直すいい機会です。

ですが実際現場ではそのように思ってのぞんでいる人はほぼいないと思います。

とにかく残業を減らせばいいんだという認識が強いように思います。

ですがそれだと精度を維持することさえもままならなくなり本末転倒な訳です。

また一方では働き方改革って言われたって業務量が同じなんだから残業が減る訳ないでしょって思っている人もいると思います。

最初に結論で述べた通りこれはマインドセットを変えない限りはどうにも出来ない話なのです。

理想論、建前論はいくらでも言えます。

ですが実際現場の人達がやり方は変えられる、残業は減らせると本気で思わなければ上司がいくら言ったところで何も変わりません。

ですのでこの先も医療事務と残業というテーマは語られ続けるでしょう。

今回の働き方改革が少しでもマインドセットを変えるきっかけになってくれることを願っています。

 

 

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