フォーミュラリーをもっと知ろう【診療報酬とフォーミュラリー】

前回の記事ではフォーミュラリーとはどういうことなのかという概要を書きました。

フォーミュラリーとは何?【診療報酬とフォーミュラリー 】

今回は具体的なその内容と今後の展望、診療報酬との関係について見ていきます。

フォーミュラリーをもっと知ろう【診療報酬とフォーミュラリー】

結論

まずはフォーミュラリーという考え方を広めていくことが第一です。

そしてこれから徐々に浸透していき将来的には診療報酬とも絡んでくる可能性は大いにあります。

フォーミュラリー

フォーミュラリーとは?

おさらいですがフォーミュラリーとは

「疾患の診断、予防、治療や健康増進に対して医師をはじめとする薬剤師・他の医療従事者による臨床的な判断を表す為に必要な継続的にアップデートされる医薬品のリストと関連情報」

と定義されます。

質の高い薬物治療を最小コストで提供するための手段としてフォーミュラリーの必要性の声が近年高まってきています。

現状は普及しているとは言えないものの病棟薬剤業務や後発医薬品使用の進展などでその環境、土壌は整いつつあります。

本来、フォーミュラリーは医薬品の有効性、安全性を確保し適正使用を推進する為のツールであり経済性のみを優先するものではありません。

ですが客観的な指標をもとに作成されることで医療の発展には欠かせない薬剤費抑制を含んだ医薬品の適正使用、在庫管理、エビデンスの創出をうながすことが出来ると期待されています。

フォーミュラリーの取り組み事例

6月26日の中医協総会では院内フォーミュラリーとして浜松医科大学、聖マリアンナ医科大学の事例、地域フォーミュラリーとして地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネット(山形県酒田市)の事例が紹介されました。

今回はこの中から地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットの事例を見てみます。この事例ではPPI(プロトンポンプ阻害薬)について紹介しています。

PPIについては後発品のあるオメプラゾール(先発製品名:オメプラール)、ラベプラゾール(同・パリエット)、ランソプラゾール(同・タケプロン)と後発品の存在しないエソメプラゾール(製品名:ネキシウム)やボノプラザン(同・タケキャブ)などがあります。

日本海総合病院では、ランソプラゾール・パリエット・タケキャブ・ネキシウムの4種類のPPIが採用されていました。

2018年10月の処方錠数ベースではそれぞれ28.1%、17.1%、18.5%、36.3%といった割合でした。

これを金額ベースに大まかに換算すると、それぞれ13.2%、8.0%、38.9%、39.8%となりジェネリックの存在しないタケキャブとネキシウムの2剤でPPI総額の8割近くに達していました(含有量を区別せず、ランソプラゾール30円、パリエットはジェネリックとして30円、タケキャブ134円、ネキシウム70円で計算)。

このように数量ベースのシェアと金額ベースのシェアに大きな乖離があることが問題視されていました。

ここでフォーミュラリーとして2018年11月にPPI推奨薬剤を公表したところ、2019年2月のデータでは数量ベースでランソプラゾール45.3%、パリエット17.4%、タケキャブ15.8%、ネキシウム21.6%と大きく変化し、高額な2剤を合わせた数量ベースシェアは54.8%から37.4%に下がっています。

これにより金額ベースシェアも下がることになり結果的には薬剤費の削減へとつながっています。

 

 

 

 

 

フォーミュラリーとジェネリック

後発医薬品の数量シェアはここ数年で急速に上昇しました。

ただし金額ベースでみると高額薬剤の登場などで後発品の割合は全体の14%にとどまっています。

一方で長期収載品が金額ベースで30%と高水準を維持しており政府の思い通りにマーケットシフトが実現していないというのが現状です。

その状況を変えることが出来ると注目されているのがこのフォーミュラリーなのです。

フォーミュラリーが与える影響

後発品の使用割合だけでなくそのほかにもフォーミュラリーが与える影響があります。

たとえば現在、医療現場では高齢化が進み複数の診療科を受診しポリファーマシー(多剤併用)に陥る患者が増えるなど薬剤をめぐる課題は顕在化しつつあります。

そうしたポリファーマシーや重複投与の中には同種同効薬が複数処方されることも少なくありません。

フォーミュラリーはこうしたケースの改善にもその効果を発揮するとの見方もされています。

まとめ

6月の中医協総会ではフォーミュラリーの診療報酬での評価には慎重な姿勢を示しました。

地域フォーミュラリー、院内フォーミュラリーも診療報酬で誘導するのは違うとの意見もありました。

フォーミュラリーという概念自体がまだ広く普及してませんがこれが浸透することで患者も医療機関も大いなるメリットがあります。

患者側から見れば薬剤費用が下がることでの患者負担の減少、また薬剤が精選され漫然投与や薬剤の成分重複、併用禁忌・注意の回避などポリファーマシーが削減されることが期待出来ます。

医療機関側から見ればたとえば基幹病院が地域フォーミュラリーに参加することにより紹介・逆紹介を経て薬剤の使用品目が収束し患者の管理が行いやすくなります。

また薬剤費削減、在庫削減となり経営改善に寄与出来ます。

いずれにしろフォーミュラリー導入は国レベルにおいても医療費削減という課題に対して大きな影響を持つものであることは間違いないので今後ますます議論が活発になってくることが予測されます。

次期診療報酬改定では実現しなくても将来的に誘導策としてフォーミュラリー加算が新設されてもおかしくはありません。今後も議論の行方に注目していく必要があります。

 

 

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