医療機関は定められた基準に基づいて届出をすることで、その施設基準に合った診療報酬が請求できます。
ですので施設基準の管理というのは、まさに医療機関の根幹をなす非常に重要な部分です。
そしてその重要性はこの先ますます高まっていきます。
現にその専門職である「施設基準管理士」という資格が創設され2019年1月に第1回の認定試験が実施され371人の有資格者が誕生しています。

適時調査に向けてもまた新たな請求分野を開拓していく上でも、施設基準に精通していることは非常に大切です。
しかしそれこそ施設基準についての項目は膨大にあり、自院が届け出ている項目をチェックしていくだけでも相当な知識と時間が必要です。
ですのでまずは基本的な部分を、きちんとおさえていくことから始めましょう。
当ブログでも今後定期的に施設基準についてのポイントをピックアップしていきます。
第1回目の今回は「専従」「専任」「専ら」についてです。
わかっているようで、わかっていない人も意外に多いかもしれません。
あなたは大丈夫ですか?
この記事を読んだ上で、その違いをしっかり説明できる知識を身につけておきましょう!
目次
「専従」「専任」「専ら」の違いって何?【施設基準の学習】
結論
専従:その業務しかできない
専任:他の業務も兼務できる
専ら:専従と専任の中間、100%ではないがほぼ行っている
「専従」「専任」「専ら」の違い
定義と根拠
今回この記事を書くに当たり、改めてこれらの定義を調べ直してみました。
結論を先に言いますと「統一的な定義は示されていない」ということです。
施設基準の説明において、これら3つの指し示す意味はこれですと言える完全な資料というものは存在しません。
ですが専従が8割従事、専任が5割従事という認識を持っている人もいると思います。
これは厚労省の「がん診療連携拠点病院等の整備について」という資料の中に示されているのですが、
<専従>
当該診療の実施日において、当該診療に専ら従事していることをいう。
この場合において、「専ら従事している」とは、その就業時間の少なくとも8割以上、当該診療に従事していることをいう。
<専任>
当該診療の実施を専ら担当していることをいう。
この場合において、「専ら担当している」とは、担当者となっていればよいものとし、その他診療を兼任していても差し支えないものとする。
ただし、その就業時間の少なくとも5割以上、当該診療に従事している必要があるものとする。
とあります。
だったらそれでいいのではないかとも思えるのですが、この定義がはたしてすべての施設基準に対して当てはまるのかどうかということがこの資料からは判断できません。
この部分はかなりあいまいである印象はぬぐえません。
グレーゾーン
一方で厚生局に「施設基準で、専従とある者について他の業務も少しならさせても良いのか?」という質問をするとまず不可と回答されます。
「専従である以上勤務日においては他のことをさせてはいけない」と言われます。
ただし他のことをしても良い場合もあります。
たとえば回復期リハビリテーション病棟の体制強化加算においては、所定労働時間外の当直は可能とされています。
”事務連絡 疑義解釈その1(平成26年3月31日)
(問48)体制強化加算について、当該病棟に専従の常勤医師が所定労働時間外に当該保険医療機関において、 外来、当直を行うことは可能か。
(答) 外来は不可であるが、当直は可能である。”
このようにおのおの施設基準ごとで微妙にそのニュアンスが異なっており、きちんとした線引きがされていないのが実情です。
ですのではっきりいえばかなりの部分がグレーゾーンです。
専任を見てみても施設基準の種類によっては何割の制限はなく、2つ以上の部署を兼務しても専任者として担当することが可能とされているものもあります。
また専らに至っては専従と専任の間という、もはやよくわからない基準です。
おおよそ8割との解釈をしているところもありますが、その根拠は示されていません。
まとめ
以上見てきたように「専従」「専任」「専ら」については、あいまいな部分があることは確かです。
ではどうするのが1番いいのかといえば、その施設基準ごとに自院の地域の担当厚生局に確認を行うことです。
それ以外の方法はありません。
最もやってはいけないのは、根拠が明確でないのに自ら判断してしまうことです。
「こう解釈していました」「こう思っていました」では管理、運営はできません。
適時調査で突っ込まれても完全に説明できる根拠があるのならばいいですが、そうでなければ面倒でも逐一確認を取ることが無難です。
本来は統一の見解文書を示してほしい所ではありますが、それが望めないのならばそのようにやっていくしかありません。
どう進んでいくにしろ施設基準管理の重要性は今後ますます高まっていきますので、将来に向けてその人材育成を考えていく必要があります。
その意味では施設基準管理士を自ら目指す、もしくは院内で今後増やしていくということも視野に入れていくべきでしょう。