医療機関を受診する際保険証の提示が必須ですが、中には会社を退職した後も保険証を返還せずに持っていて使用していたり、保険証が変わったのにそのことを窓口で言わずに引き続き受診していたりする患者さんもいます。
このような背景を受け厚生労働省は保険証のオンラインによる資格確認の導入を進めています。具体的にはどのようになるのか詳細を見ていきます。
目次
どういうしくみになるの?
まず資格確認は保険証を使用せずマイナンバーカードのみで行います。
その為に前段階として現在は世帯単位で付番されている被保険者番号を個人単位化します。
そうして個人を識別出来るようにした上で資格情報(氏名、生年月日、保険者名、負担割合等)とマイナンバーとを紐付けてオンライン資格確認センターという所に登録し一元管理されます。
医療機関の窓口ではどうなる?
窓口では患者さんからマイナンバーカードを受け取りカードリーダーにかざします。
ICチップに組み込まれた電子証明書を読み取りマイナンバー情報をオンライン資格確認センターに送信します。資格確認センターはそのマイナンバーに対応した資格情報を医療機関に返信します。
メリットは?
最大のメリットは資格喪失後受診による事務作業、事務コストが解消出来るということです。
例えば現状では会社を退職したAさんがそれまで使っていた社会保険の保険証をそのまま持っていて窓口で提示すればそのまま診察が受けられて、料金計算もされてしまいます。
資格が切れていたと分かるのはかなり後で、レセプト請求を行いそれが保険者まで届き、返戻という形で再び医療機関に戻されてきた時となります。ここまで数ヶ月経っています。
そして改めて正しい保険情報を入れ直して再請求を行い保険者に届き決定処理がなされて初めて請求額が医療機関に振り込まれます。
ここの部分がなくなります。資格が切れていればマイナンバーカードを窓口に提示した時点で分かります。これがオンライン化の最大のメリットとなります。
デメリットは?
まずマイナンバーカードが必要になります。
すなわちマイナンバーカードを持っていない場合は新たに発行してもらう必要があります。
現在発行されている保険証の総枚数は約8700万枚で、マイナンバーカードは約1500万枚です。つまり、7200万人の国民が新たに発行してもらう必要があります。
また、マイナンバーカードを常に携帯しておく必要があるので重要個人情報と直結するカードを紛失するリスクが増えます。
医療機関側からすると、システム、設備の整備が必要になります。
オンライン化が必須となりますのでオンライン請求をしたくなくてもオンライン化をせざるを得なくなります。
回線、カードリーダー、レセコン等の改修が必要になってきます。当然コストの問題が一番ネックとなります。
導入のコスト、維持コストがどれほどになるのか、医療機関側の負担がどうなるのかなどまだ不透明な部分は多いです。
あとはセキュリティの問題です。オンラインで24時間外部に開放される形となるのでウィルス等のリスクが増さないような安全性の担保が必要です。
今後のスケジュール
現在提示されているのは以下の通りです。
2021年3月頃~:マイナンバーカードによるオンライン資格確認開始
→4月頃~:保険証に個人識別用の番号を追加
→5月頃~:保険証によるオンライン資格確認を開始
→9月診療分(10月請求)~:個人を識別する「2桁番号」を付したレセプト請求を開始
まとめ
コスト、セキュリティの問題は残っていますが運用が開始される頃にはクリアしているとして工程通り進めていくのでしょう。
したい、したくない、出来る、出来ないの問題ではなく否応なしに始まるのでそれに向けた準備を進めていくしかないです。
間違いなく言えるのは医療事務員の人数は今ほどいらなくなります。保険証の登録、確認の手順が大幅に簡素化されるので当然といえば当然ですが。
おそらくこの頃を境に事務作業のIT化、効率化が一気に加速していくと思います。5年後、10年後医事課にはほぼ人がいないみたいな状況になっていてもおかしくありません。
その時医療事務員としてどんなスキルが必要とされているのか?
今後も医事課で働きたいという人はもうそこを見据えておかないといけないと思います。今から新たなスキルを学び始めても5年あれば十分間に合います。