診療報酬の消費税問題って何?

今年(2019年)の10月に消費税が現在の8%から10%に引き上げられる予定であることはご存じのことだ思います。

さてこの消費税は医療機関にとって大きな問題です。何が問題なのか見ていくことにしましょう。

控除対象外消費税って何だ?

「控除対象外消費税」と呼ばれるものがあります。簡単に説明します。

消費税はあらゆるものの売買にかけられていて、消費者から徴収した消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いて納税する仕組みです。

しかし、診療報酬では消費税は徴収されていません。その一方で医薬品や医療機器の購入時には医療機関は消費税を支払います。その為、より多く納税してしまう形となります。

たとえば、診療報酬にもし消費税がかけられていると仮定すれば、1万円の診療費用に対し800円を患者さんから消費税として徴収します。そして、医薬品の費用が2000円かかっていたとするとその仕入れ時の消費税は160円となります。よって納税額は800円から160円を差し引いた640円となります。

ですが実際は患者さんからの消費税は徴収していない為納税額がそれよりも多くなり医療機関の負担は大きくなってしまいます。

国の対応は?

これに対し国は1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填する為に特別の診療報酬プラス改定を行う」とするいわゆる消費税対応改定という対応をとっています。

ですがここで1つ問題が出てくる場合があります。

診療報酬というのは2年ごとに点数が改定されるのですが、その狭間で消費税率が上がった場合そのままだと増税分が補填されていない状態となります。

よって、通常は2年ごとの改定ですが更に臨時改定という形をとって診療報酬の一部変更が行われます。それが2019年度消費税対応改定として今年の10月に施行される予定となっています。

消費増税の計算を間違っていた!

2014年4月に消費税が5%から8%へ増税されました。この時も厚生労働省は消費増税に伴う控除対象外消費税分は診療報酬に上乗せし、増税分はしっかりと補填されていると説明していました。

しかし実際は15%~17%ほど低く計算、見積もられていた(データ抽出の誤りによる計算ミス)ことが昨年発覚しました。

このことを受け2019年10月の消費税対応改定では、「5%→8%時の対応」をリセットし「5%→10%時の対応」で改定を行うとされています。

点数提示

厚生労働省は2月6日にその改定点数案を中医協(中央社会保険医療協議会)総会に提示しました。
主なものは次のとおり。

初診料 288点(現在から+6点)
再診料 73点(現在から+1点)
急性期一般入院料1 1650点(現在から+59点)

これによると初診料で60円(1点=10円)、再診料で10円、入院料で1日当たり590円のアップとなっています。

どのような計算ではじき出された点数かは分かりませんが、前例がありますのでこれで補填は完了ですと言われてもすんなり納得出来るものでもありません。

これで消費税増税分が本当にまかなえるのかは各医療機関が独自に検証するほかありません。

まとめ

社会政策的な配慮から医療は非課税とされています。

非課税=消費税がない、と思ってしまいますが実際には診療報酬は消費税込みの点数となっています。これは大きな矛盾です。そしてそこには様々な問題が残っています。

そもそも消費税込みで算出した点数の根拠が不透明であるということ。

次に負担の公平性の問題です。消費税対応改定では初診料、再診料、入院基本料などに上乗せ分を広く薄く点数を割り当てています。

そうすると医療機関が医療機器を購入した場合の消費税であっても直接その医療機器の恩恵を受けていない患者さんも含め負担してもらってることになります。

本来はその医療機器を使用した患者さんからの税負担でペイするのが本筋でしょう。

また、医療機関といっても種類、規模、設備投資の割合、運営状態は様々な訳で全ての消費税分の補填を一律の方程式で均一にカバー出来るのかという疑問も残ります。

かといって今更医療費を非課税から課税へ切り替えますとしても、現況と根拠の説明が複雑で国民のコンセンサスを得ることは難しいでしょう。

他にも方法論はいくつかあるようですが、当分は現制度が続いていくことでしょうからそれに従っていくほかありません。

ですが現行の消費税分を診療報酬に上乗せする方法はもはや限界なのではないかと感じます。

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