新人教育について考えるシリーズの3回目です。
前回(新人教育には何が必要?【新人教育のコツとは】その②)の主張としては”うまく教えるコツとは「いかに相手の特性に合わせられるか」ということ”でした。
今回はそこに関連したところを深掘りしていきます。
ごまお
目次
新人教育には何が必要?【新人教育のコツとは】その③
結論
教える側のポイントは俯瞰した上でどこまで憑依できるかどうかです。
教える
OJT
以前に新人教育の問題点を見ていこうとするのならば2つの側面から見ないといけないと書きました。
その2つの側面とは教える側と教わる側です。
新人は目の前のことで精一杯ですので教わる側目線だけなのは当然です。
しかし私たち教える側が同じように自分たち目線だけではまずいのです。
私たちは教える側の目線も教わる側の目線も両方兼ね備えておく必要があります。
しかし実際そこまで広い視野でのぞめるかと言われればなかなか厳しいものがあります。
OJTの難しさがそこにはあります。
はっきりいって医療事務は教科書によるいわゆる座学で身につけたことが実戦と直結していません。
勉強と実務が結びつきにくい職種はいろいろあるとは思いますが医療事務はその最たるものです。
この理由はいくつか考えられます。
教科書は体系的には学べますが頻出するところもほとんど出てこないところも同じボリュームで教わります。
そもそも学習している時はどこが実務でよく使うところかなんて分かりませんのですべてまんべんなく勉強します。
そしてその範囲は広いですのでどこに重点を置いていいのかなんて分かりません。
結局ひととおり勉強を済ませてしまうととりあえずやった気にはなります。
ですがどこも中途半端に流しているだけにすぎないのでほとんど覚えていないということになります。
ですが中には医療事務の資格をとるために猛勉強して学習したことをきちんと覚えている人もいます。
それはとても素晴らしいことです。
しかしそれもまた資格のための勉強で終わるのです。
それを実務で活かせれば1番いいのですがそううまくはいきません。
一生懸命点数のとり方を覚えてレセプトの手書きができるようになってもそのスキルを使う場面は訪れません。
それらはすべてレセコンが行う作業なのでレセプトが書けようが書けまいが関係ありません。
あるいはそもそもレセプトとは全く関係のないセクションに配属されればその知識、スキルが役に立つことはありません。
そうなれば配属先でゼロから覚えていくことになります。
ですのでほぼほぼOJT頼みとなってしまいます。
ですがこのOJTがくせ者なのです。
ごまお
OJTは是か非か?
OJTのメリットとしては
・業務に即した内容を指導できる
・教育のために時間をとる必要がない
・マンツーマンできめ細かく指導できる
などがあります。
確かにOJTはとてもいい手法だと思います。
ですがそこにはデメリットも存在します。
最も大きなデメリットは”教える人しだい”ということです。
つまり教えるのがうまい人につけばうまく育ちますが、へたな人につけば最悪の場合つぶれます。
前回もいいましたが私たちは教え方は習っていません。
いわば自己流なわけです。
自分の経験をもとに自分なりの教え方をしています。
中には部署の教育マニュアルがあってそれにそって行っているというところもあるかもしれませんが、それでも人によってその解釈、教え方はいろいろですので結局は自己流なのです。
ですので肝に銘じておかないといけないことは主観だけで教えていないか、伝えていないかということに常に注意しないといけない、ということです。
相手を知ろうとする
私たちが十分認識しておかないといけないことは相手は何も知らない新人だということです。
そんなことは分かっているよと言われそうですが大部分の人は分かっていないのです。
私たちは何年もの経験をへて今に至っています。
その間にいろんなことを知り、時には失敗しそしてそれを乗り越えて今までやってきました。
その土台のある人がなんの土台もない人に対して自分の言葉で伝えたところで伝わるはずがないのです。
その言葉の中には必ず自分では当たり前というニュアンスのものが含まれているはずです。
また一度教えたからできて当然と思い込んでいる自分もいるはずです。
「こんな簡単なことをなぜできないの?」「前も言ったはずなのに」これは教える側は必ず思うことです。
ですが「こんな簡単なこと」はあなたが思っていることです。
何年も働いてきたからこそ「こんな簡単なこと」なのです。
経験ゼロの人が「こんな簡単なこと」と思うのとはレベルが違いすぎるのです。
大切なことは相手を知ろうとすること、相手の現状を想像することです。
育てる
OJTとはオンザジョブトレーニングです。
つまり業務をしながら必要なことを学んでいくということです。
そしてこれはその名のとおりトレーニングです。
そこには訓練をし経験を積ませていくことで育てていくという信念がないといけないのです。
医療事務のOJTに1番足りないのがこの育てるという意識です。
OJTという呼び方はしているもののOJTになっていないことって結構あるのではないでしょうか。
そこに不足しているのはこの「育てる」です。
育てる意識がないから主観で話し主観で判断しているのです。
そもそもOJTといっておきながら放置なんてこともしばしば起こります。
これはその教育係からすると「こんな忙しい中教えながらなんてムリ」ということなのです。
ですがこんな忙しいからこそ今教えることが大事なのです。
そうすれば今はめっちゃ大変でも3ヶ月後はちょっと楽になっているかもしれない、半年後はだいぶ楽になっているかもしれないのです。
育てるとはそういうことです。
目先にメリットはありません、ですがその先には大きなメリットがあるのです。
それはあなたにも、医事課にも大きなメリットとなって返ってきます。
その点を理解しておく必要があります。
目先の忙しさ、大変さはもう無視するぐらいの気持ちがないと人ひとり育てることはできません。
育てるとはそれほど大変なことだし、それだけの価値があることなのです。
OJTの真髄
OJTには育てる意識が最重要とは上記で述べたとおりです。
だったら具体的にどんなOJTがいいのかというところが気になります。
OJTの方法論としてはいろいろあると思いますがどんな手法をとっても共通した大事なポイントがあります。
それは俯瞰で見るということです。
これはほかの記事でもよく書いているメタ認知というやつです。
そして更に踏み込んでいうと教える時に相手に憑依するということです。
実際に憑依するわけではないですが憑依するイメージということです。
どういうことかというと相手の立場として自分の話を聞き、相手からどう見えているか、どう伝わっているかを感じとりそのフィードバックを受けて教え方、話し方を変えていくということです。
ここまでできれば相手への伝わり方も少しは分かるようにもなると思いますし、何より教えるのがうまくなっていると思います。
おそらく普段こんなことを意識して教えている人はいないと思います。
だからこそ試してほしいのです。
「この新人全然分かってねえな」とあなたが思っているならば「この人の言ってることさっぱり分かんない」って新人側も思っている可能性が高いです。
そうなると本来はお互いを調整させていって合わせにいくべきなのですがこの場合教育係が自らを調整しにいくわけがありません。
調整させられるのは全面的に新人の方なのです。
それが積み重なると最終的にはつぶれて終わるのです。
教育係のメタ認知があればこれは避けられるのです。
ごまお
まとめ
俯瞰して憑依。
ポイントはそこにあります。
正直人材育成はとても大変です。
時間も労力もかけた上でそれでもものになるのかどうかは分からない。
どんなに丁寧に教えても辞める人は辞めますし、厳しく指導してもなにくそって頑張る人は頑張る。
だからといって続けるか辞めるかなんて本人しだいと言ってしまうのは早すぎると思います。
できることはすべてやってしまった上で下駄はあずけるべきです。
だからぜひ俯瞰して憑依というところまで試してほしいと思います。
それは教える側、教わる側の両方にきっとメリットがあるはずです。
ごまお