医事課で働いていますと1ヶ月はホントあっという間にすぎていきます。
こないだレセプト期間が終わったところと思っていたらもうすぐに月初がやってきます。
現在もレセプト期間まっただ中でありまして全国の医事課のレセプト担当者の人は連日忙しい日々を過ごしていることだろうと思います。
そしてレセプト期間がやってくるとつきものなのがレセプト残業です。
レセプトチェッカーなるものがある現在においては昔ほどの残業を強いられることは少なくなってはきているとは思いますが、それでも病院によってはレセプト残業が当然のものとして残っている場合もあります。
このブログでは過去にいろいろとレセプト残業不要論、反対論として記事を書いています。
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今回は残業という側面ではなくレセプト業務そのもののあり方を見ていきます。
ごまお
目次
レセプトにはどれだけ時間をかけるのがいい?【残業する、しない?】
結論
なるべく時間をかけないほうがいいです。
レセプトとは
レセプト業務の本質
医療事務=レセプトというイメージがあるほどレセプト業務は医療事務の中心業務として君臨しています。
確かにそのとおりです。
ですが現在においてあまりにもそのイメージが大きくなりすぎたのではないかと思います。
レセプト業務の本質は何かというと診療行為をお金に換えること。
その収益を最大化させるために私たち医療事務員がいます。
そして収益の最大化よりもさらに大切なことが利益を最大化させることです。
そのためには費用対効果を考えないといけません。
ですがなぜかレセプト業務にはその思考があまり働いていないように感じます。
たとえばレセプト期間以外であれば残業はしないでおこうと思っている人でもレセプト期間中での残業にはあまりに無頓着な場合があります。
そもそもレセプト=残業がデフォルト設定の人ってかなりいます。
もう朝出勤した時点でその日の残業が確定しているような人です。
このような人はレセプト業務の本質がわかっていないのです。
上記で述べたとおり本質は病院収益の最大化です。
そのための方法、プロセスは問われていないのです。
求められているのは結果のみです。
いいかえれば精度の高いレセプトを提出するという1点だけです。
シンプルにそこだけなのです。
精度の高いレセプト
「いやいや精度の高いレセプトを提出するために残業が必要なんだよ」という人がいるかもしれません。
ここでまずはっきりさせておかなければいけないことは精度の高いレセプトの定義です。
これは簡潔に言えば、低い査定率、返戻率、漏れのない適正な請求となります。
レセプト業務をしていて何が怖いかといえば請求点数減点すなわち査定されることです。
それこそ手術手技や材料が削られれば高額なお金が入ってこなくなりますからその影響は非常に大きいです。
そういう意味では病院経営の屋台骨を支えているといってもいい過ぎではないくらいにレセプト業務は重要です。
そういう背景があるからこそレセプト点検では多大な時間を投下して仕上げるべきという主張が多いのだと思います。
時間をかければ精度は上がるのか?
上がりません。
まさしくパーキンソンの法則にはまっている状態です。
【関連記事】医事課の生産性とは? 【パーキンソンの法則】
私たちはいつもどおりのペースとやり方で仕事を進めたほうが精神的に安全、安心を感じやすいのでそれが働き方の習慣となっています。
そしてその習慣にプラスしてパーキンソンの法則の第1の法則
仕事の量は与えられた時間を費やすまで膨張する
にはまってしまうのです。
簡単に言えば「時間があればあるほど仕事もやり続けてしまう」ということです。
そして注目すべき点はこの場合仕事の精度は上がらないということです。
わかりやすく言えばダラダラ仕事になっているだけということです。
こう書くと「ダラダラなんか見ていない、時間内の忙しい合間をぬって一生懸命見ても量が多ければそりゃ終わらないよ」という意見もあるでしょう。
これはそれが事実ならばその意見には同意します。
ですがそうなるとそれは業務量を適切に割り振れていない上司の責任なので今回の話からは除外します。
そうではなくて今ここであげているのは業務量は適正でありつつもかなりの時間を投入し残業も惜しまず点検業務をしている人のことです。
この人たちの大義名分はレセプト業務は最重要業務、その質を担保するためにはある程度の残業さえも必要だということなのでしょう。
しかしこの論理はおかしいのです。
何がかというと質の担保と時間は相関していないからです。
むしろ逆相関に近いと思います。
レセプト業務に唯一相関しているのは集中力と分析力です。
これらの密度が高ければ高いほど精度の高いレセプトになります。
そして高い集中力を発揮しようとすれば必然と時間は短くなります。
長時間高い集中力を持続できる人はそうそういません。
だとすれば残業とは真逆の思考が必要なのです。
制限時間を設けてプレッシャーをかけ業務のムダをそぎ落とし緊張感のあるレセプト点検にしないといけないのです。
そして分析力というのはなんなのかと言えば過去の査定のフィードバックです。
目視点検よりも重視すべきはこちらの方です。
診療報酬のルールにのっとっているといっても結局のところ査定の内容や再審査の対応には地域差があります。
さらにそこには時代差というのもあります。
つまりトレンドです。
前まではスルーしていたのに今回から重点的に見出した項目なんてものがある世界です。
そこには型どおりに対応しているだけでは不十分な点もいろいろ出てきます。
この過去の結果からのフィードバックに大部分のリソースを突っ込んでもいいんじゃないかとも思えます。
冒頭にレセプトチェッカーにより昔より目視点検の量が減って残業も減ったのでは、と書きましたがとことんまでレセプトチェッカーを使いきれればもはや目視点検は不要となるはずです。
ごまお
レセプト点検の正解
正解は1つではないです。
レセプト点検の方法はいくつもあります。
昔からの目視点検、レセプトチェッカーでの点検、それらのミックスなど。また目視といっても紙レセプトで行う、リストで行う、紙出力なしでPC画面で行う、タブレット端末で行うなどさまざまです。
これらは方法論ですが、これとは別に最重要なことが点検論そのものです。
つまり目視点検を入れるか入れないか、入れるとすればどの部分まで行うかということです。
レセプト業務はやろうと思えば延々続けられる業務です。
1度見たけど不安だから2回目、3回目と何度も点検するなんてこともできてしまいます。
そこには明確な答えはなくあるのは自己満足感のみです。
自分で2回目、3回目と見たところで新しい何かなんて出てきません。
もし仮にそれがいろいろ出てくるのならば最初の点検の精度が疑わしくなります。
そんなブレのある点検に高い精度なんて求められません。
ですので普通に考えれば自分で2回目の点検をすることにはほぼ意味がないのです。
ただの気休めです。
時間つぶしです。
ですが当の本人はめちゃめちゃ仕事している気になるわけです。
これは最初に述べたレセプト業務の本質を見失っている例です。
精度の高いレセプトが何かということを分かっていないのです。
これは極端な例だとしても実際レセプト点検には十分な時間が必要と思っている人は多いと思います。
多いというかほぼ全員でしょうか。
ですが何度も言いますが時間と精度は相関しません。
肝は集中力です。
つまりレセプト業務の濃度を上げないといけないのです。
そのために必要なことは時間をかけるという発想とは反対の時間をしぼるという発想です。
締切りが必要
濃度の高いレセプト点検をしようとすれば絶対必要なのが締切りです。
提出の締切りではなく自分の中での締切りです。
「今日は残業だな」と思ってするレセ業務と「何がなんでも定時に終わる」と思ってするレセ業務では確実に後者の方が質は高いです。
なぜなら濃度が上がるからです。
時間が限られているから見方を工夫する、ムダを省く、優先度を決める、どれもがクオリティを上げる要素になっています。
自分でデッドラインを決めてしまうことが最も大切なのです。
ごまお
まとめ
パーキンソンの法則を避け、レセプトの質を上げる方法とは点検時間に縛りを設けることです。
あるいはレセプトチェッカーに査定情報のフィードバックを与えカスタマイズに全てのリソースをつぎ込むことです。
どちらにも共通することは昔ながらの時間をかけての目視点検ではもう時代の流れにはついていけないということです。
レセプト業務が最重要ということは昔も今も変わりませんがその中身は進化しておりそれに応じて私たちも進化していかなければいけないのです。
とことんまでレセプトチェックをカスタマイズし目視点検をなくした結果査定が減ったという笑えない話もあります。
しかしそれが現実なのでしょう。
そしてその事実はしっかりと受け止めないといけません。
決して人がいらないというような話をしているのではありません。
要は使いどころです。
役割分担です。
コンピューターでまかなえるところは任せてしまい、人間でしか生み出せない方法論や知恵を駆使して病院収益の最大化に寄与していくべきなのです。
レセプトにはどれだけ時間をかけるのがいい?という質問への答えは「なるべく時間をかけないほうがいい。」とはしましたがこれはあくまでレセプト点検という意味においてです。
査定の分析、フィードバック、カスタマイズには十分な時間をかけるべきです。
そこが最重要部分です。
レセプト期間までに十分な時間をかけて作業を行っておき、レセプト期間は時間内で業務を終わらせる。
これが最もレセプトの精度を上げる方法です。
ごまお