一時的創外固定骨折治療術の算定方法とは?【単回使用医療機器の取り扱い】

昨年4月の平成30年度診療報酬改定の手術項目にてK046-3 一時的創外固定骨折治療術という術式が新しく設けられました。

これはなぜ新設されたのか、今後算定していくのにどのようなことが考えられるのか?

今回はこの点を見ていきます。

一時的創外固定骨折治療術の算定方法とは?【単回使用医療機器の取り扱い】

 

創外固定とは?

まず創外固定って何?という所を説明しておきます。

創外固定は骨が砕けて手術ではつなげられない状態(粉砕骨折)や骨が皮膚の外へ飛び出して骨折部が感染しやすい状態(開放骨折)などすぐに手術出来ない場合に選択されます。

開放骨折では感染を防ぐ為に創部の処置が優先されます。

創外固定とは骨折部を挟んだ両側の骨にピンやワイヤーを打ち込み骨のずれを出来るだけ整復して皮膚の外で固定する方法です。

感染の危険性が高い骨折部に手を付けずに正確な整復と強固な固定を行うことが出来ます。

ですので開放骨折ではまずは感染を防ぐ為に創部の処置を優先し、創部の状態が落ち着いた所でプレート、スクリューによる内固定術を行うという方法が治療方法の1つにあります。

一時的創外固定骨折治療術の算定方法とは?

例えば、下腿両骨開放性骨折の場合スタンダードな治療の流れとしては

受傷日当日は創外固定術で骨折を仮固定し開放創を処置する。

後日開放創が治ったら創外固定を外して内固定術(K046の2 骨折観血的手術 15,980点×2)を施行するとなります。

上記を実際に請求する場合は

これまで(平成30年度より前の点数表)だと創外固定器加算 10,000点という加算項目での設定しかありませんでした。

つまり、骨折観血的手術+創外固定術をしないと創外固定単独の点数がとれない点数体系でした。

よって医療機関では、 骨折観血的手術をしたことにして創外固定加算を算定するしかありません。

しかし、そうすると開放創が治った後に骨折観血的手術をすると、骨折観血的手術を2回算定することになってしまいます。そのため、2回目の手術が査定されるというような事態となっていました。

つまり

1回目

 

骨折観血的手術 15,980点×2ヶ所(実際はしてないのに算定しないと創外固定器加算がとれないので算定している)

 

創外固定器加算 10,000点 計 41,960点

2回目

 

骨折観血的手術15,980点×2ヶ所(実際しているのに査定される)

結局 医療機関は41,960点の算定しかとれなくなります。

実際2回手術しているのに、1回分点数が取れないという矛盾が起こります。

そこで、対策として1回目を骨折観血的手術×1ヶ所+創外固定器加算、2回目を骨折観血的手術×1ヶ所、などのように算定の仕方を工夫したりしていたのですがそれも結構四苦八苦な訳です。

そこでその矛盾を正す為にK046-3 一時的創外固定骨折治療術 34,000点が平成30年度診療報酬改定にて新設されました。

これにより創外固定単独の術式が認められたことになりました。

つまり

受傷日当日 → 一時的創外固定術 34,000点を算定

 

後日 → 骨折観血的手術 15,980点×2を算定

合計 65,960点が算定可能となります。

これはこれまでの創外固定器加算ではあくまで手技料本体につく加算であった為適正な算定が出来なかったことに鑑み、実際の治療に沿った点数算定が出来るような評価を取り入れたということで算定する側からすれば喜ばしいことではあります。

ですが34,000点という点数がどういう経緯ではじき出されているかという所を見てみると、算定するに当たりある注意すべき点が浮かんできます。

単回使用医療機器とは?

ここで単回使用医療機器というものが出てきます。

単回使用医療機器<single use device(SUD)>はいわゆる使い捨て機器と呼ばれるものです。

これは感染防止、医療安全の観点から再使用を厚生労働省が認めていない医療機器です。

そして創外固定の器械はちょうどここに該当していて、使い回しは認められていません。

創外固定器を使用した場合は手術手技の他に創外固定と併用されるピンは保険請求できるのですが、この部分を除いた創外固定器の価格はおおよそ20~30万円に設定されています(メーカー及び種類によってもっと安い場合も高い場合もありますがあくまで平均的にという意味あいです)。

そして一時的創外固定骨折治療術34,000点の点数は、この価格込みで設定されています。

すなわち、創外固定器が24万円だとすると差し引き10万円が残る計算となります。

そしてこの10万円がこれまでの創外固定器加算の10,000点(=10万円)に相当する訳です。

単回使用の縛り

ここで注意すべきは単回使用とはその名の通り複数回使ってはダメだということです。

しかし、過去の事例において単回使用とされている手術時に骨に穴を空ける為のドリルの先につける金属製のバーなどが再消毒、再滅菌によって再使用されていて問題になった等、同様の事例がいくつもありました。

とすると今回のこの新設手術手技については当然単回使用されているか、1回ごとにきちんと購入されているのかという点が今後見られてくるだろうということは想像に難くない訳です。

まとめ

過去の単回使用医療機器の複数回不正使用ということが起こった裏側では、医療機関側のコスト増による経営圧迫という切実な問題があります。

医療費削減を大前提に国は保険点数をギリギリまで押さえてきます。

その影響により医療機関は人権費、材料費を出来るだけ減らしていかないと利益は出ない状況です。

今回取り上げた一時的創外固定骨折治療術の34,000点にしても購入コストがよりかかってくれば、手術をすればするほど赤字になるということになりかねません。

逆に言えば1つのものを複数回使えば34,000点から利益分が出てくるのですが、それではその医療機関が終わってしまう訳です。

適正な請求だと赤字で崩壊、不正請求だともちろん崩壊となりかねないのです。

ここは各医療機関の経営判断、経営手腕が問われる所ではありますが当然コンプライアンスへの強い意識と高いモラルをもって運営していかねばなりません。

ですがそもそもなぜ単回使用とされているのかの根拠がはっきりせず、不透明な部分があるのも事実です。

また、現在では2017年に「再製造単回使用医療機器」制度が創設されました。

これは医療機器製造販売業者が自身の責任で使用済みの単回使用医療機器を適切に収集、分解、洗浄、部品交換、再組み立て、滅菌等を行って新たな単回使用医療機器として販売することを認めるというものです。

これは医療機関側から見ると、メーカーが再製造出来るのであれば洗浄、滅菌しやすい構造とすれば医療機関での再利用も認められるのではないのか?という疑問も出てきます。

昨年の10月には日本病院会が厚生労働省に対して、単回使用医療機器を再使用禁止とするのではなく、素材の改良や洗浄しやすい構造を考案してセミディスポーザブルやリポーザブル(一部分が単回使用で複数回使用部分と組み合わせた製品)、リユーザブル(単回使用医療機器と同等の機能を持つ複数回使用可能な製品)の促進を要望しています。

少しでも早くそのようなものが開発され使用が認められる状態になってほしいと切に願う次第です。

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