人間は誰だってミスをします。
ミスは言いかえるとヒューマンエラーといい、人為的過誤や失敗を意味します。
一般的には意図しない結果を生じる人間の行為を意味します。
人間の注意力には限界がありどんなに慎重で注意深く作業を行っていても疲労や勘違いでヒューマンエラーを起こす場合があります。
それは仕方のないことです。
人間である以上間違いは起こる、その前提で誰もが仕事にのぞんでいるものです。
それでも私たちはできるかぎりミスをなくし精度を上げていきたいと日々試行錯誤するわけです。
その中でも今回はダブルチェック、トリプルチェックにフォーカスします。
ごまお
【リンゲルマン効果】ダブルチェック、トリプルチェックに意味はあるのか?【同調圧力】
結論
ダブルチェックはまだしもトリプルチェックには意味がありません。
ダブルチェック
ミスを減らす
ダブルチェックとはAさんが一人で業務を行った場合にBさんがチェックをすることでミスが起こる確率を下げる方法です。
たとえばミスをする可能性が1/100のAさんとBさんがいます。
Aさんの仕事をBさんがチェックすることによって理論上は1/10000(1/100×1/100)までミスの確立を下げることが可能です。
ですがこれは完全に机上の空論で現実はそんなわけはないのです。
ですがヒューマンエラーをなくす手段は何がある?と言われればすぐに思いつくのはダブルチェックです。
それほど誰の頭にも「ミスを減らす=ダブルチェック」という式が刻み込まれています。
医療事務においてもダブルチェックは多用される手段です。
医療事務は正確性、精度がすべてといっても過言ではありません。
医事課の最大のミッションが病院収入の最大化であるのならばその土台にはすべてにおいて高い精度が求められます。
保険証の確認にはじまり、入力の確認、記載の確認などありとあらゆるものの正確性が問われます。
そのとき必ずといっていいほど使われるのがダブルチェックなのです。
ダブルチェックの光と影
ダブルチェックには光と影の部分が存在します。
光
・ミスを減らせる
・精度が上がる
影
・仕事が増える
・中身がともなっていない(うわべだけのチェック)
・同じ業務をしている者同士では見方が似てきたり、同じ思い込みをしやすい
・「あの人だから大丈夫ね」バイアスが働いてしまう
・改善策に「ダブルチェックの徹底」というなんの解決にもならない文章を書いてしまう
最大の敵
上記の影の部分とも重なるのですがダブルチェックの最大の敵がひとつあります。
その名をリンゲルマン効果といいます。
リンゲルマン効果
社会的手抜きは集団で共同作業を行う時に一人当たりの課題遂行量が人数の増加に伴って低下する現象。
リンゲルマン効果、フリーライダー(ただ乗り)現象、社会的怠惰とも呼ばれる。
簡単に言えば「集団で作業をすると一人あたりの作業量が単独での作業の時よりも低下する」という効果です。
リンゲルマン効果の実験として有名なのが「綱引き実験」です。
1人で綱引きをした時の力を100として、
2人で綱引きをした時の力が、1人あたり90まで下がりました。
3人で綱引きをした時の力が、1人あたり80まで下がりました。
8人で綱引きをした時の力は、1人あたり50まで下がってしまいました。
集団で作業をすると無意識のうちに他にも人がいるからと考え手を抜いてしまうということです。
これはどうしようもない人間の特性です。
人は無意識に他人に依存してしまうものなのです。
ですのでダブルチェックよりももっと危ないのがトリプルチェックということになります。
人数が多いほどリンゲルマン効果が発動されるので逆効果というわけです。
トリプルチェック
トリプルチェックでいえば以前に次のツイートがバズっていました。
トリプルチェックの弊害 #現場猫 pic.twitter.com/jVkujwrphV
— からあげの るつぼ (@karaage_rutsubo) August 2, 2019
バズるのも納得の内容です。
もうこれ以上の説明は不要でしょう。
同調圧力・同調効果
リンゲルマン効果のほかにもやっかいな敵がいます。
それが同調圧力・同調効果です。
同調圧力でいえば入院係を例にします。
Aさん、Bさん、Cさんの3人は1つのグループとなっておりお互いの入力のチェックをしあいます。
たとえばAさんが入力した手術の入力をチェックすることになったとします。
Aさんは10年のベテラン、Bさんは5年目、Cさんはまだ入って半年足らずです。
まずAさんが自己チェックを終えてそれをBさんに回します。
そしてBさんもチェックを終えてそれをCさんに回しました。
そして最後にCさんがチェックするのですがこれは皆さんが想像するとおり全く意味がありません。
チェックにならないわけです。
そこには「私たちふたりがOKしたものにまさかチェックなんか入らないよね」という圧しかないのです。
この例は極端だとしてもトリプルチェックまでいくと同調圧力は少なからずかかってくるものです。
また集団では同調効果も働きます。
これはリンゲルマン効果によってひとりが無意識な手抜きをしてしまうとその周りの人も同調して手を抜いてしまうという効果です。
これらのことからいえることは、結局多人数でのチェックはプラス要素以上にマイナス要素が多いということです。
ごまお
まとめ
私はダブルチェックは否定しません。
ですがトリプルチェックは反対です。
トリプルチェックを行うことの説明で「なるほどな」と思ったことは一度もありません。
形式だけならしない方がよっぽど効率性も生産性も高いです。
そして同じ意味で形式だけならダブルチェックも必要ありません。
「チェック体制を強化します」という文言はよく聞きますが、それ自体が各個人の主体性をそいでいるということに私たちは気づかなければいけません。
結局誰かがチェックしてくれる、という思いがある限り自分の仕事は甘くなるのです。
これは必然です。
だったら一人で完結させればいいのか?ここは難しいところです。
その業務の内容、難易度によっても変わってくるのでケースバイケースだと思います。
ダブルチェックという手段はあっていいのです。
問題はそれを使う私たちにあります。
結局チェックする人の意識しだいというのであれば使う意味はありません。
それこそもっとほかの仕組みやシステムで対応できるように考えるべきです。
できることなら人間の意識しだい、想いしだいで使えたり使えなかったりする方法はとらない方がいいです。
ですが逆な言い方をすれば高い意識が一定のレベルで保てるのであれば一番効率的で一番コスパがいいのはダブルチェックです。
大事なことは「使い分け」です。
ごまお