医療事務というと給料が安くて長時間労働のブラック職種と一部で言われます。その点については以前に書きました。

これについては人によっていろいろなとらえ方があるので今回は置いておきます。
そして今回は「医療事務の給料ってどうやったら上がるの?」という一点にしぼって進めていきます。
ごまお
目次
【ファイナルアンサー】医療事務員が給料を上げる方法とは?
結論
役職に就く、転職する、のどちらかです。
医療事務という職種
まず最初に断っておきますが今回の話はいわゆる世間がイメージする医療事務、たとえば受付、外来計算、入院計算、会計、クラークなどを想定しています。
総合職と呼ばれているものはまた少し違ってくるので今回はよけておきます。
つまり、受講して資格をとって就職するという一番多いパターンをメインターゲットとしています。
そしてこの場合資格いる、いらない問題が必ず出てくるのですがそれへの回答も以前の記事でしています。




ここまでが前提です。
そして結論は役職or転職となるのですがどちらにせよ必須なのが「自分の市場価値を高める」ということに帰結します。
自分の市場価値なんて関係ねえよと思う人はこちらをどうぞ。


ここでそもそも論を述べますが医療事務はそんなに給料が上がる職種ではありません。
それはなぜか?
病院が儲かっていないからです。
給料が上がるか上がらないかは医療事務員の頑張りは一切関係しません。
その病院が儲かっていれば上がるでしょうし、儲からなければ上がりません。
どれだけ必死にレセを仕上げ残業までしたとしてもそれによって病院収入が増えなければ給料に還元はできないわけです。
まして残業によって人件費コストが経営を圧迫し利益は余計に出にくいのです。
ですので病院収益を上げたいと考えるならばまずすべきことは集患です。
そして精度の高い請求となります。
いくらレセプトの精度が高くてもそもそも算定する患者が少なければ収益の最大化なんてできません。
そしてまた人件費比率を下げようものなら現場は回らない、施設基準を満たせないというような悪循環になりかねません。
いくらベットコントロールマネジメントを行うといっても入棟する患者が少なければそんなものは何の意味もないのです。
何が言いたいのかといえば、医療事務員は利益のもととなる何かを生み出しているわけではないということです。
利益のもととは診療行為でありそれは対象となる患者がいないと成立しません。
そしてそこに医療事務員が積極的に関わることはありません。
基本的に医療事務員は受け身な立場なのです。
医療事務員であってもホームページやいろいろな広報にも関わっているという人であればまた話は違ってくるのでしょうが、大部分の人はそうではないはずです。
診療行為が発生してはじめて処理案件が生まれ事務の出番となるわけです。
ですので診療行為ありきなのです。
そしてその診療行為を直接生み出す医師を筆頭に看護師やその他スタッフという序列ができあがり院内ヒエラルキーとなっています。

そしてその最底辺に医事課が位置していると言われています。
また実際そう思っている人も多いと思います。
ですがそこはどう思っていようがその人しだいなのでどうでもいい話ではあります。
ですがヒエラルキーと医療事務の給料には何も関係ないのかと言われればそうとも言い切れない部分があります。
それは外部から見た場合医療事務は誰でもできる職種と思っている部分が少なからずあるからです。
「だって入れ替わり立ち替わりしてるけど回ってるやん」
「院内で唯一国家資格ないよね」
「全くの素人が入っていってもやれるんだ」
要はそう思われている場合があるということです。
つまり「替えのきく誰でもできる仕事」と多少なりとも思われているということです。
実際現場サイドからすれば「誰でもできる仕事ではない」「全くの素人が入ってきてもできることは何もない」「医事課は請求のかなめ」と思っています。
医事課の立場からすると診療報酬請求という病院収入の核となる部分を担っており職種としての重要度は他部署にもひけをとらないとの自負があります。
ですがそんなことは関係ないのです。
結局、診療>請求という見方をされているところでは医事課の立場は弱く、診療=請求という見方をされていれば対等と見なされるということです。
そして対等な見方をされているところであればそれなりの評価もされるでしょうが、医事課をそこまで重視していなければそこまでの評価はされません。
逆に請求漏れは医事課が悪い、レセプト査定は医事課が悪いとすべての責任を問われます。
もしそのように評価されにくい医事課の医療事務員であるならば高評価はなかなかされにくい状況となります。
反対に真っ先に人員削減の対象ともなり得ます。
施設基準には医療事務員を何人とは書いていません。
だったら20人いるところを数人削っても回るのであれば削ってしまいたいと考えるのが経営陣です。
そして仮に3人削ったとしてその3人分の給料が残りの人に分配されるのかというとそうではないのです。
給料は人事考課できちんと評価を行って検討されるものですが、そこでたとえA評価でも自分が思っているほどには上がってはいきません。
つまりは私たちはそういう市場の中にいるということです。
IT産業のように今後も伸びていく業界とは違い、市場規模は拡大しないのです。
むしろ人口が減り病院が減っていく時代に突入していきます。
そして現在でもその半分は赤字経営の医療業界においてその中でもヒエラルキー最下層にいると見られている医療事務の給料が今後上がっていくという構図は残念ながらありません。
ですので個人が頑張る、頑張らないというレベルの話をはるかに超えたどうにもならない話なのです。
そもそも論として給与水準が高い業界、市場が拡大している業界じゃないと給料を上げていくというのは難しいです。
極端な言い方をすれば、今よりうんと給料を上げたければ今後も伸び続ける業界に移って下さいというほかないです。
ごまお
給料が増えるパターン
給料が増えるパターンというのは次の3つしかありません。
・昇給
・手当
・転職
前述したとおり医療事務の業界は給与水準が低い業界です。
その中で給料を上げていく方法はこの3つになるのですが、昇給のみで上げていくには無理があります。
そもそも基本給が低く設定されているため昇給額も大したことがないからです。
現実的に給料を上げようとするのならば手当をもらうか転職かのどちらしかありません。
そしてそのどちらの場合においても重要視すべきなのが「市場価値」です。
「自分は今いるこの病院で居続ける」という人であればそこの病院での価値というものを高めていくだけでいいかもしれませんが、それでも市場価値という考えは持っておくべきです。
でないと生産性を上げる努力を怠りまわりと合わせた仕事しかできない人材へと成り下がっていきます。
そんな他病院に行けばまったく通用しない能力で仕事を続けていくのは自分にとってはマイナスですし病院にとっては大マイナスです。
お互い不幸になるだけなのでその道は避けましょう。
そして手当をつけるということに関しては
・資格手当
・役職手当
が主なものです。
ほかに当直手当などもありますがここでは省きます。
資格手当については病院ごとでさまざまです。
手当がつくというのであればとっておいて損はありません。
その場合は資格取得が給料アップにつながるので分かりやすいです。
難しいのは役職手当をつけるという場合です。
これはすなわち役職に就くということなので自分の努力でどうにかなるものではありません。
これは上司に評価してもらわなければなりません。
ここで大事なことが2つあります。
1.上司に好かれる
2.結果を出す
「上司に好かれる」というのは絶対ではないです。
ですが好かれるに越したことはないよ、ということです。
決しておべんちゃらを言えと言っているのではありません。
こびる必要は一切ありませんが、上司に好かれる、気に入られるというのは立派なスキルです。
「結果を出す」はマストです。
医事課のため、法人のためにその能力を寄与できているという誰から見ても明らかな結果を残し続けることです。
しかしたとえそれができていても役職につけるかどうかは分かりません。
そういう意味では「上司に好かれる」ということはかなり大きな意味を持つのです。
ここで2つに分かれると思います。
上司に好かれる、気に入られる努力をできる人とそんなこと死んでもムリという人です。
できる人はそのまま続けて下さい。
できない人もそのままでいいと思います。
ですが評価されるための結果を出すことは最低条件です。
自分のできることは精一杯やってみることです。
それでも評価されないのであればそこで考えるしかありません。
ごまお
転職
一般的には転職が最も給料を上げるには効果的と言われますが医療事務については過度の期待はしない方がいいです。
これは先ほども述べましたが市場が拡大しないからです。
今後医療事務の求人は2極化していくと思います。
・一般的な医療事務人材を低い給料で募集
・医療事務をベースにさまざまな付加価値を創造したり、病院経営の向上に寄与できるスキルのある人材を相応の給料で募集
そして一般的な医療事務の分野はゆくゆくはAIが進出してきて最終的にはホスピタリティとコミュニケーションの部分だけが残ることになります。

そのときその2つのスキルだけで相応の給料をもらおうとすればそれに見合う市場価値が自分にないといけないのです。
どう進もうが高めるべきは自分の市場価値です。
ここを最重要視しないことには最終的に給料は上がっていきません。
まとめ
仕事は他者貢献、自己成長のため。仕事はお金を稼ぐため。どちらも正解です。
大切なのはバランスです。
どちらかに偏ってはダメです。
たとえば30代男性、妻子ありの人で「仕事は他者貢献、自己成長のためなんだ。だからお金は問題じゃない」としてずっと平のままで昇給もしなかったら生活しかねます。
逆に基本給が低いので当直にバンバン入って稼ぐという人だとそこにはもう自己成長なんてありません。
医療事務という仕事は1年目と5年目ではその知識、スキルには大きな差がありますが5年目と10年目にはその差はありません。
むしろ努力家の5年目が10年目を追い越していることだってめずらしくありません。
20年前も現在もやっている内容はほぼ変わりません。
ただそこにテクノロジーの進化が加わってきてICT化してきているだけです。
そう見るとただそこにある業務をこなしているだけではスキルは頭打ちになるのです。
みずからスキルを上げようという意識がないと自分の市場価値は高まっていかないのです。
給料を上げたいと思っている医療事務員の人が今考えることは次のことです。
1.今後一生医療事務で食っていくのか否か?
2.医療事務でやっていくのならば市場価値を高めるために自分のどの分野を伸ばすべきか?
最後に1つだけ言っておくと、あまり給料にばかりにとらわれすぎるな、ということです。
まずは目の前のタスクに集中すること。
そしてそのアウトプットの積み重ねが結果となるのですから山の頂きを見る前にまずはしっかり足元を見ることです。
大事なのはやっぱりメタ認知力(俯瞰力)だと思います。
ごまお