高校時代よく聴いていた歌手のひとりに渡辺美里さんがいます。
彼女の曲の一つに10yearsというのがあってその歌詞に”あれから10年も、この先10年も”というフレーズがあります。
私は10年前も医療事務をしていたのでまさしく”あれから10年も”となるわけですが”この先10年も”には思うところがあります。
今回は10年後に向けてどう考えるか?って話です。
ごまお
目次
10年後も医療事務してますか?
結論
準備期間が大事です。
この先
もうすでにカオスの時代に入ってきています。
終身雇用制度は崩壊し、医療機関も統合、再編でなくなるところも出てくると予想されます。
日本の人口はこの先減少の一途をたどります。
また医療費削減策は引き続き行われていきます。
どう見ても医療事業がこの先成長していかないことはあきらかです。
これから先は完全にパイの奪い合いとなっていきます。
昔のような病床をかかえて病院を開いていれば患者が来て病院収入も増えるといったような図式は通用しません。
まさに経営の視点、マーケット戦略が必要な時代となっていきます。
これまでより、より一層の分析視点、俯瞰視点、常識にとらわれない柔軟な視点、発想が求められます。
そして私たち医療事務員が一番気になる点がAIの進化です。
AIとはどう共存していくことになるのか?
その点については以前に書きました。

その記事の結論を簡単に言うと医療事務で残る部分は計算化できない部分であるということ。
たとえばデータからどう実際の経営に落とし込んでいくかという戦略の立案だったり、はたまた接遇だったり、コミュニケーションだったりです。
逆に言えば計算化できる部分はすべてAIが行います。
AIは人工知能という意味ですが現在の技術では私たちがイメージしているような人工知能には届いていません。
そもそも機械学習、ディープラーニングの域で収まっている段階を知能と呼んでいいのかどうかも微妙です。
ですが四則演算の部分に関しては人間では全く歯が立ちません。
つまり医療事務の中心業務であるレセプト業務関連においては人が入る余地はなくなってしまいます。
以前の記事ではおよそ15年後と書いたのですがこれはそこから一気に代替されていくということではなくて、それまでも段階的に進んでいきます。

まずはICT化が進みます。
今でもすでに目視点検をなくしコンピュータチェックのみで請求を行っているところも出てきています。
この流れは加速していきます。
そうするとどうなるかというとレセプト点検者が不要になるということです。
極端な話、査定データを分析しコンピュータチェックの設定に完全に落とし込める人が1人いればレセプト請求はできてしまうということになります。
この点に関しては「コメント部分は人が対応しないとムリ」とか「高額レセプトは人の目を入れないとまずいのでは」というような意見もあります。
もし仮にそのようになったとしても確実に言えることは今いる人数はいらないということです。
何が言いたいのかというと今までの10年とこの先の10年とでは変化するスピードが違いすぎるということです。
私はこの業界に20年いますが振り返るとテクノロジーの進化はなかなかなの遅さだったなと思います。
ほかの業界のことは知りませんが医療業界の進み具合が一番遅れているんじゃないかなとも思います。
そもそも病院の中でITスキルが高い人ってほんの一部です。
そして職員のITリテラシーの低さもなかなかのものです。
それでもテクノロジーの進化の遅さ、電子化の進み具合の遅さがあるからこそ逆にここまで不都合なくやってこれたともいえます。
医療事務においてもレセコンに入力できさえすれば仕事はやってこれました。
別にデータ収集、編集、ファイル操作など一切できなくても何の不都合もありませんでした。
そしてそんなスキルよりもはるかに重要とされてきたスキルがレセを見るスキルです。
極端に言えば一切キーボードを打てない人でもレセプトを見るスキルさえあればそれで立派な職として成り立っていたのです。
ですので昔は歩く点数表と呼ばれたり、診療報酬についてならあの人に聞けば間違いないと言われていた人が重宝されたのです。
ですが今後そのような人の価値はそれほど高くありません。
点数だろうが解釈だろうが何でもググれば分かる時代です。
そして審査側もまもなく9割をコンピュータチェックに移行するといっている昨今です。
どういう見方をしてもこのまま進めばいずれ医事課には余剰人員が出てくることになります。
「そうは言ってもそんなのまだまだ先のことでしょ」と思う人が大半かもしれません。
たしかにまだまだ先のことかもしれません。
ですがまだまだ先っていつを想定しています?
5年後?10年後?20年後?
ここで伝えたいことは10年後だからまだかなりあるね、20年後だから全然大丈夫じゃね、というような時間の話ではないのです。
遅かれ早かれそれは確実に来るということです。
私見ですが20年もかからないと思います。
でここで考えないといけないことがあります。
仮に医療事務における計算化業務のすべてがAIに代替されるのが20年後だとしましょう。
私でいくと定年を超えています。
ですがだからといって仕事を辞めるでしょうか。
その前にそもそもその時代の定年は60歳からさらに伸びている可能性が高いです。
65歳かもしれないし、70歳かもしれない。
だったらまだ医療事務で働きたいと思っているかもしれない。
でも特に新しいスキルもなく昔ながらの医療事務を知っているだけでは働きたくても働くセクションがないということになるのです。
たとえば今30歳の人であと20年で貯金を1億貯めて50歳からは遊んで暮らすから関係ねえ、という人であればここで読むのをやめてもらって構いません。
ですが多くの人はそんなことはないと思います。
そして今の例では20年としたのではるか先のように感じますがそれが5年後、10年後だとしたらどうでしょうか?
そんな月日はすぐに過ぎます。
ここまで長く述べてきましたが言いたいことはシンプルです。
この先の自分の将来像を明確に描いた上でそれでもなお医療事務で飯を食っていくという人はもうすでになんらかの準備を進めていかないとする仕事がなくなりますということです。
市場価値
結局自分の市場価値を高めましょうという話になります。
この点については以前の記事をご覧下さい。

ただ1点つけ加えておきます。
さきほどの話と重なるのですが誰にでもできる仕事は最低価格まで買い叩かれる運命にあります。
これは医療事務に限ったことではないですが。
そして医療事務においてはそこが計算化できる業務であればすべてがAIに置き換わるということです。
ですので大事なことは希少性と貴重性です。
他の人や機械では代替できない大切な役割を持つ仕事、もしそんなものがあれば将来も継続して医療事務で働けるはずです。
前にも書いたのですが将来的には医療事務求人というのは二極化していくと思います。
①誰でもできる仕事で低賃金
②医療事務の知識やスキルをベースに高い付加価値を生む仕事に相応の対価
どちらを選んでもそれはその人の自由です。
ですがせっかく医療事務の経験があるのならば②を目指した方がより有益だと思います。
だったら②はどんな仕事なのかというと一つの例としてはスキルの掛け合わせです。
これも以前に書きました。

つまり医療事務の知識、スキルを持っていてさらにITも得意な人とか、レセプトに精通していて経理にも精通している人ならば希少性も貴重性もあるということです。
具体的にいえばレセプト担当者で診療情報管理士で医療情報技師だったり、レセプト担当者で簿記資格があってP/L B/Sが読めるなどであればその価値は高まります。
常に自分の市場価値を俯瞰で見て高めていこうとする意識が大事です。
のぞむ人生
やりたいこと、好きなことを我慢してやるのが仕事。
楽しくなくてもやるのが仕事。
それが多数の人が持っている想いだと思います。
それはそうかもしれませんがそれが行きすぎて思考停止になっていないでしょうか。
もう大人になってそんな夢とかのぞみをかなえようなんてほとんどの人が思いません。
医療事務でたとえ高くない給料でも特に問題なく人生が過ごせればそれでいいと多くの人は思っています。
そもそもいまさら本当にやりたいことなんてないという人も多いんじゃないかと思います。
それならそれでいいと思います。
今の生活がそんなにいいとも思わないけど悪いとも思わない、それでいいのならそれは本人の自由です。
ですがだからといって今と同じ仕事、生活を5年後、10年後も続けていたいですか。
5歳年をとっても、10歳年をとってもまだ当直に入っている自分、まだ残業を続けている自分、今とたいして知識もスキルも変わらない自分。
それがのぞむ人生ならそれでいいですが私はイヤです。
確実に20代、30代より体力は落ちています。
仕事の能力で体力は結構重要度が高いと思います。
しかしそのピークは早くあとは落ちていく一方です。
だとすれば5年後、10年後が今と一緒ではどう考えてもまずいだろうってことです。
そして一生に一度の人生を悔いなく過ごしたいと本気で思うのならば自分ののぞむ人生を手に入れるために今頑張ることが大事なのです。
そしてもっと大事なことは自分の将来をしっかり考えることです。
今在籍している病院が未来永劫存続すると思うことは自由ですがそれは妄想であり幻想です。
1つの病院で最後まで勤め上げるなんてことはもう過去の事実に過ぎません。
自分は一生医療事務を職とするのか?
1つの病院でやっていこうとするのか?
今と同じ生活を続けていくことに納得しているのか?
今医療事務とAIとの共存問題が出てくるこのタイミングでもう1度自分自身と向き合うことも大切なんじゃないのでしょうか。
自分で決める
人生は問題だらけです。
一生懸命頑張っているのに上手くいかないこと、想定していない出来事、
なんで今?なんで私に?なんてことだらけです。
でも今があるのは前に進むことで乗り越えられる、自分を信じてやるしかないと数々の選択を自己決定してきたからです。
後悔していない人は必ず最後は自分で決めてきたはずです。
後悔が残っている人は完全には自分では決めてこなかった人のはずです。
それは家族や周りの反対で自分の意志を貫けなかったとか、親に悲しい思いをさせたくないからその意向にそってやってきたとかいろいろ理由はあると思います。
でも皆さんそれなりな時間を生きてきて分かっていると思います。
最後は自分の意志で決めないといけないことを。
まとめ
今回なぜこのような内容を書こうと思ったのかというとひとことで言えば危機感の欠如への不安です。
私のまわりで医療事務がなくなる危機感、自分の居場所が狭まってくる危機感を抱いている医療事務員は皆無です。
このブログで述べていることを言ってもピンときていません。
だから思ったんです。
このブログを読んで下さっている皆さんの多くにもほとんど刺さっていないんじゃないかと。
みんなまだまだ先のことと考えどこか他人事でいるんじゃないかと。
私は医療事務という職業はとてもやりがいがあり自己成長できる素晴らしい仕事だと思っています。
だから少しでも多くの人にこの仕事のやりがい、意義を知ってもらい好きになってもらいたい。
そう思いながら日々記事を書いています。
現在実際に医療事務で働いている人にはできるだけ長く続けてほしい、そう思っています。
ですがこのままで進んでいけば長く続けてはもらえなくなる。
医事課の人工(ニンク)が削られ残す人を選択する段階になれば希少性、貴重性がある人から残すことになってしまうのです。
必要なのは高い市場価値です。
自院でしか通用しない人に成り下がってはいけないのです。
そしてなぜこんなまだまだ先かもしれないことを今から言っているかというと準備がすべてだからです。
希少性、貴重性なんて一朝一夕に身につくものではありません。
何かスキルを身につけるにはそれ相応の時間が必要です。
それこそプログラミングも英語も簿記も統計学もエクセルも今日思い立って1年後マスターしていることなんてあり得ません。
だとするならば早すぎることなんてないのです。
むしろ遅すぎるかもしれない。
別にこのようなスキルじゃなくてもいいんです。
たとえば最高の接遇力を身につけることを目指すとか。
でもそれだって1年程度で話し方のクセを直したりアンガーマネジメントを習得するには期間が短すぎます。
すべては準備期間が必要であり重要なのです。
医療事務を10年後も続けていたいか?
もしYESならその準備は必要です。
準備期間を考慮するとそんなに時間はないのです。
ごまお