メディアバイアスに騙されるな!~公立福生病院問題~

今回の出来事のあらましについては皆さんご存じと思いますので省略します。

まだ知らないという方は新聞等の報道で確認下さい。

さて、今回はこの件に対しての私見となりますが結論からいいますと現時点で誰が悪い、何が正しいといったことは時期尚早であると思います。

今日(3/9)の段階で既にいろいろなことが報道されていますが、それは患者の家族や医師の発言に基づいている訳であって客観的な事実確認がまだなされていない状況です。

それなのに医師が悪いと思わせる患者家族よりの記事報道がほとんどです。それもどこの報道も追随しているだけで同じ内容のものばかりです。

もう少し詳細な調査を待たないと正確な判断は出来ません。

ですが既に病院が悪とのありき論で進んでいるようにしか思えません。そこの所も含めて述べていきたいと思います。

各紙の論調

各紙ガイドラインに反しているのではとの論調でこの医師を批判しています。

このガイドラインというのは日本透析学会が作成している事実上のガイドラインに位置づけられる提言のことです。

ですがまずこの学会自体が中止判断をめぐる議論は我が国では未成熟と認めています。その点を棚上げしておいての結論は早急過ぎます。

またもうひとつガイドラインとして人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインというものもあります。

これについてもきちんとしたプロセスが踏まれていたのかの検証はまだこれからです。

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイ
ドラインとは

要するに助からない状態になった時に延命治療を受けるかどうかを自分で決めておきましょう、ということについての取り決めです。

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインが決められるようになったのは富山の射水市民病院事件(人口呼吸器取り外し問題)が発端です。

医療において犯罪か否か判断は非常に困難です。警察も検察も裁判所も難しい判断を迫られます。

このガイドラインは人生の最終段階の医療を患者自身が決めることでこれらの問題の解決を図ろうとしています。

ただしガイドラインは積極的な安楽死を認めているのものではありません。

自分の意思に反して延命をすれば本人がつらくなります。そこで医療やケアを続けるか否かを前もって家族や友人と話し合いいざとなったらその伝えられている本人の意思で決めましょうという指針がこのガイドラインとなります。

尚、本人の意思が確認できない場合は家族や医療者が全体で話し合い本人の意思を推定します。

論点

今回の論点は

①本人がしっかり判断できる状態にあるのか

②家族の心情に配慮しているのか

③患者が「人生の最終段階」にあるかどうかをどう判断するのか

を家族を含めた医療ケアチームで話し合っていたのかどうか、またその医療ケアチームがきちんと機能していたのかどうか、

という点です。

本人希望で中止した場合

今回の件はあくまでも本人が希望しての透析中止です。

外科医は首周辺に管を挿入する治療法と併せ、「死に直結する」という説明とともに透析をやめる選択肢を提示。女性は「透析は、もういや」と中止を選んだ。外科医は夫(51)を呼んで看護師同席で念押しし、女性が意思確認書に署名。治療は中止された。

上記の内容だと患者が希望して、家族も同意しているのならば当然尊重すべきことです。

ですがその後の本人、家族が透析再開を希望したのに対応してくれなかった、というのは現時点では患者側のみの視点なので報道としては本来言及出来ません。

確証バイアス

そもそも病院が悪い、病院バッシング論の確証バイアスでの報道ばかりです。

ですので病院のマイナスになることばかりが出てくる訳です。

腹膜透析という別の治療法は提示していなかったであるとか、過去に終末期でない患者に対し最初から透析治療をしない非導入の選択肢を提示し20人がこれを選んだや倫理委員会が開かれていなかったという報道が出ています。

事実を報道すべき報道とは本来バイアスを避けてゼロから記事を作り上げていくものです。

最初からバイアスまみれなので変な方向に流れていくのです。

まとめ

そもそもなんですが今回の件って昨年の8月の出来事です。なぜ今このタイミングで事件として報道されたのしょうか。

そこに何か毎日新聞の意図があるとしか思えません。

また、現在の何の検証もされていない、客観的な判断がされていない状況でガイドライン違反との報道はいかがなものなんでしょうか。

言論の自由、報道の自由を盾に適当な情報(事実確認がされていないとか、情報提供者からの一方的なニュースソースとか)を流し続けるこの国のジャーナリズムはもう既に崩壊しています。

今後もこのような一方的な叩き方をする報道ばかりなら、積極的な治療を差し控えることに対する意思決定が病院側ではきちんと出来ていると思っていても怖くて遂行出来ません。

いつ報道の自由と正義を盾にしたマスメディアからの報道を起因とする社会的制裁にあうかもしれません。

これは終末期医療の萎縮となる危険性をも含んでいます。

何か起これば総叩き。日本はいつからこんなことになってしまったのでしょう。

裏取りしていないソースをあたかも事実であるかのように報道し罪悪感なんてまるでない。むしろ正義の味方気取り。日本はもう病み過ぎています。

もうここまできたらこの流れを変えることは並大抵のことではありません。

だとすれば私達ひとりひとりが情報の取捨選択をしていくほかありません。

私は今回の件に関してはかなり懐疑的です。

それは自分が医療機関に勤めているから病院に肩入れしているとかではなく、あまりにも医療の視点から見た時にそれって本当?って思うことが多いからです。

冒頭で言いましたように今日時点の情報で判断出来ることはありません。情報が一方的だし少な過ぎます。

今後の事実関係とその内容をしっかり見極めたいと思います。

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