医療事務は人の出入りが激しい職場、離職率が高い職場だとよく言われます。
実際他の職種と比べてどうなのかというはっきりしたデータは見たことがありませんが、私の経験則からいってもやはり離職率は高いんだろうなとは思います。
そしてそうなると常に人が足らないという状態におちいります。
今回はこの人が足らないという点にフォーカスします。
ごまお
目次
知ってた?「人手不足」と「人材不足」の違い【医事課の人員問題】
結論
人手は足らなくても何とでもなる。でも、人材は足らないと何ともならない。
人手不足と人材不足
「人手不足」と「人材不足」この両者は一見すると同じ意味のようにも思えます。
要は人が足らないのだと。
そして私も通常人が足りていないという場合は人手不足という認識です。
しかし経営の観点からするとこの2つの意味あいは違うのだそうです。
人手不足→単純に業務を回す人が不足していること
人材不足→上司が思い描く戦略をやってくれる人が不足していること
こう聞くとまったく違う意味あいだということがわかります。
つまり人手と人材はイコールではなく、人材はより高いレベルの仕事をまかせられる人ということになります。
ですので人手不足は解消されても、人材不足のままということはあり得るということです。
人手不足
そもそも人手不足とはどのレベルをいうのでしょうか。
ここの定義が各職場でバラバラです。
そしてここが一番核心部分なのですが、その業務に対して何人必要という決定ははたして正しいのでしょうか。
しっかり検証されてきているのでしょうか。
まずここの検証がきちんとできていないところが多いと思います。
そしてここがしっかり詰められていないと、何をもって人手不足かという議論さえできません。
たとえば入院係10人で回していたけど急に一人が辞めてしまい人手不足ですとなったとしても、それでも入院係は回ります。
「それは回すしかないから回っているだけであって、本来は一人足りないんだ。」
入院係の人はそう言うでしょう。
でもそのまま欠員が補充されない状態がしばらく続けば、いつしか9人体制が普通という感覚になります。
そして現にそれで普通に回ります。
何が言いたいのかというと、誰しもが必ず安全マージンをとっているということです。
そしてその安全マージンはベテランになればなるほど狡猾に多めにとろうとします。
簡単にいえば手を抜き始めるということです。
そして一度それを覚えてしまうともう元には戻りません。
これは仕事ができる人ほど顕著です。
なぜならできる人は本気を出さなくてもそれなりにできてしまうから。
本気を出すまでもないのです。
もしそんなことをして仕事を効率化してしまえば、余計に仕事を振られかねません。
だから自分はそれなりに仕事はありますよ、忙しいですよという雰囲気をただよわせるのです。
私はこれを忙しい、忙しい詐欺と呼んでいます。
この忙しい、忙しい詐欺の人たちが増えてしまうと、そもそもこの係の仕事の人工(ニンク)は何人なんだというのがまったくわからなくなります。
人手不足を考える前にまずすべきは、適正な人数を割り出すことです。
そしてそれが最も難しいのです。
ジレンマ
上記のような10人が9人になったとしても回ってしまう例というのは結構あります。
これには2つの要因があります。
ひとつは前述したようにみんなが大きく安全マージンをとっているということ。
つまり、もともと9人で回るところを10人でやっていただけというパターン。
これは結構あると思います。
そしていまだにそのことに気づかず現在進行形なところもあるはずです。
そしてこの場合間違いなく均等な業務の割り振りは行われていないはずです。
入院係の場合そもそも何をもって均等かということさえあいまいですが。
ほとんどが病棟単位で担当を持っているはずなので、その診療科の患者数や診療密度を考慮した上で均等に業務を割り振るというのは事実上不可能です。
心臓血管外科や脳神経外科などはベテランに、耳鼻科や眼科は経験が浅い者にという考えのところもあるでしょう。
しかしこれもあまり意味がありません。
なぜならベテランはベテランなりに、経験が浅い者は浅い者なりにしっかりと安全マージンは確保するからです。
私の結論はすべて一緒です。
誰もが安全マージンを確保している。
これは非難しているわけではありません。
これは本能です。
意識的にしている人もいますが、無意識に行っている人も多いと思います。
この問題は個人の問題というよりかは、上司の問題です。
担当者自身がそのことに気づくことはほぼないです。
俯瞰できないとまずムリですので。
担当者自身は自分は一生懸命頑張っているという想いは強いです。
ですがその頑張りは正しい方向を向いているのか、効率化できる余地を残していないか、そこの検証は上司はしないといけません。
話がそれましたが本文に戻ります。
10人が9人になったとしても回ってしまうという要因のもうひとつは、個人に依存せずに全体のシステムで回っているからということです。
これはそもそもがそうなのだと思います。
自分がいなければ回らないと思っているのはえてしてその人だけであり、医事課の仕事は全体のシステムで機能しています。
逆に1人が抜けただけで回らないというところは、医事課として機能していないといえます。
もっといえば上司の力不足ということです。
ですがここでひとつ問題があります。
安全マージンを削ったとしても、もしくは全体のシステムとして機能させたとしても、それは結果的に人手が多すぎたということの証明にしかならないということです。
つまり欠員は補充されないということです。
だから本当に欠員を補充してもらおうとすれば、簡単に回ってはいけないのです。
「だって回ってるじゃん。今までが多すぎたってこと?」
そう思われかねないということです。
だから逆にパンクして回らないという方が早急に人員補充がのぞめます。
ですがそれはそれでどうよってなるわけです。
知恵も工夫もないのか、意地もプライドもないのかってことです。
ここは大きなジレンマなのです。
人材不足
人手不足と人材不足、あなたの部署ではどうですか?
「いや両方」そういう答えも多いかもしれません。
ですが人手不足は応募してくる人がいないことにはどうにもなりませんが、人材不足はどうにかできるのではないかと。
「いや~うちの部署は人材不足で」という上司がもしいるのであれば、そこの育成システムは機能していないのでしょう。
上司自身が自分には人を育てる力、教育する力がないと言っているのと同義です。
そういう意味では人手も補えて人材も補えるかもしれない新人育成はとても重要なのです。
組織での仕事というのは、実務と人材育成の両方がなしえてこそ成り立つものです。
そして人を育てるための人を育てることにも尽力しないといけません。
今の医事課に足りないのはこの点です。
まして人手不足の医事課においてはそのミドルクラスの人材を育てるという視点すらありません。
そんな余裕はないからです。
ですが本来新人育成を行う前に育てるべきはそのミドルクラスなのです。
人材を育てる人材がいないからこそ全然人が育たないのです。
そこがあまりにもないがしろにされているのです。
その結果誰も教え方を知らないまま、自分独自のOJTを行ってしまうわけです。


そして結局育たないのはその本人のせいと責任転嫁しているのです。
そこには教えた側の振り返りや反省は存在しない。
でもそれで人材不足を嘆くのであれば全然本質が見えていないのです。
人材不足になっているのではありません。
みずから人材不足にしているのです。
そこに気づかない限り人材不足は解消しません。
まとめ
人が足らないという場合、まずすべきは適正な人数の把握です。
そこができていないと何の議論もできません。
そしてその適正な人数の割り出しは非常に困難です。
しかしその割り出しは絶対しないといけません。
それは上司の役目です。
そのポイントはどれだけ安全マージンを削れるかでしょう。
忙しい忙しい詐欺をどれだけ減らせるかです。
そこに切り込むにはかなりの反発を食らいます。
誰だって自分はひまだなんて思っていませんから。
「これ以上の仕事をもってくんな」ってめちゃ思っていますから。
でもそれはあくまで主観のみであり、本当はそうではないんだってことを伝えていく必要があります。
そして受け手側はその言葉を真摯に受け止めなければいけません。
そして上司の指示には100%従ってください。
それが組織なのです。

人手不足で人材不足の医事課って全国に山ほどあると思います。
でもこれってどうにもできない残念なできごとではないのです。
どうにかできる余地は十分あります。
しようとするかしないか、その違いだけです。
確かに周りがどんどん辞めていき自分への負荷ばかり増してきててやってられないっていう人も中にはいるかもしれません。
ですが一度見つめ直してほしいのです。
自分は目一杯までやったのかと。
安全マージンを抱えていないかと。
もうすべて振り絞ったという人は辞めてもいいかと思います。
ですがまだマージンがある人は最後まで振り絞った方がいいです。
でないとこの先全力を出すことはもうできないからです。
自分の限界をだいぶ手前で線引きしている人が、自分の限界値まで頑張るなんてどだいムリな話です。
自分の限界値を引き上げ続けることができる人でないといつまでたっても人材にはなれません。
人手が足らなくても人材が足りていれば医事課は十分機能します。
ぜひ人手を補えるほどの人材になりましょう。
その素質は誰にだってあるのです。
ごまお