ひとことで医事課といってもその業務はさまざまです。
受付、計算、会計、レセプト、自賠、労災、健診、ドッグ、入院、DPC、データ集計、分析などホントにいろいろな業務があります。
そしてそれぞれがつながり合い医事課業務というのは成り立っています。
今回はそんなつながりについて述べていきます。
目次
これはNG!業務は分担しても役割は分担してはいけない【業務分担の考え方】
結論
役割分担とは何なのかをしっかり考えるべきです。
担当者
冒頭に述べたように医事課の業務はかなり細分化できます。
そうなると必然的に業務分担を行うことになります。
これはいたって当たり前のことです。
ですが業務分担を行うことでの弊害というものがあとから出てきます。
要はそれぞれに担当者としての役割を分け与えると、完全に自分の仕事だけをする担当者になるということです。
自分の仕事に専念してもらって結構じゃないか、そんな意見もあるかもしれません。
ですがこれは非常にまずいのです。
本来医事課の業務というのはすべてつながっています。
つながり合い、お互いを補完し合い成り立っているのです。
ですので一つひとつの業務を完全に分けきることは事実上不可能なのです。
お互いが半歩自分の担当領域から出ることによって、業務はスムーズに進むのです。
そのような互いが依存しあえるゾーンがないと必ず抜けもれが出ます。
これは野球の守備と似ています。
レフトとセンターの中間にフライが上がったとします。
このときレフトとセンターというように完全に担当者を分けていると
「このボールはレフトとセンターのどっちが追うのか?」
「これはセンター寄りだからレフトの俺のボールじゃない」
というような不毛な言い合いになってしまいます。
ですがレフトとセンターと便宜上は分かれてはいるが、ボールをとるという目的はどちらも変わらないんだという意識をお互いが持っていれば、ボールを落とすことはないのです。
そしてこの例でいうところの不毛な言い合いが実際起こります。
これは担当者を決めているからこそ起こってくることです。
本来チームとは1+1を3にも4にもできうるポテンシャルを持っています。
ですがお互いの補完ができていない状態だと1+1は2にも満たなくなってしまいます。
互いが自分のテリトリーだけを強く主張し歩みよろうとしない状態。
これはレフトとセンターが互いのあいだに来るフライを一切取らない状態と一緒です。
これではチームプレーが成り立ちません。
何のためのチームかわからなくなります。
あなたは医事課の一員です
何を当たり前のことを言っているのかと思われるかもしれません。
ですがそう言わざるを得ない状況にしばしば直面するのです。
つまり、担当者は任されている業務が自分の全タスクだと思っている。
そして、自分のタスクだけしっかりこなしていれば文句なかろうと思っているということです。
そうなると他の担当者の仕事や医事課全体のミッションも自分の視野からは消えてしまいます。
あるのは目の前のタスクのみなのです。
特に気をつけないといけないのは、一つの係を長く行っている担当者です。
その人に医事課の中の一人という認識はありません。
あるのは私の仕事はこの担当業務だ、という認識です。
これは特にレセプトに関わっている人には強く現れる傾向です。
たとえば、外来レセプト担当を外れてまったく違う担当へと言われた場合、あるいは、入院係を離れてもらいますと言われた場合、かなりの確立で強い拒否反応を表明します。
その人たちにしてみれば長年関わってきたレセプト業務から外されることは、今までのキャリアを否定されているような錯覚におちいっているのでしょう。
医療事務なんだからレセプトはしていないと、という思いが極端に強いのです。
いまだに医療事務においてレセプト信仰というのは強いです。
レセプトこそが医療事務のエース業務だという思い込みです。
それはもうひと昔前のことです。
レセプト業務は将来的には医療事務員ができるところはなくなってしまうのですから、レセプト信仰、レセプト依存は今のうちから減らしていった方がいいです。

医療事務員の仕事って何なのか、医事課のミッションって何なんだというところをもう一度問い直してみることが必要です。
評価を上げようとして評価を下げる
担当業務についてもう一点つけ加えておきます。
これもたまに見かけるのですが、自分の担当業務を囲い込む人がいます。
つまり、意図的に周りに教えることをせず、意図的に周囲への情報共有をストップしている人です。
こうすることによって、自分にしかできない仕事、自分にしかわからない仕事を作り出し、自分の価値を高めようとするのです。
このタイプの人はメタ認知力が足りません。
自分が周りからどう見られているのかをきちんと知るべきです。
はっきりいってその行為は評価を上げるどころかいちじるしく下げます。
というか周りからすれば迷惑以外のなにものでもないです。
それは業務妨害と同義です。
もし明日から自分が病欠になったらどうするのか。
休日に何か起こったらどうするのか?
そう考えれば少なくともあと1人、欲を言えばあと数人自分の分身は育てておかなくてはいけないのです。
逆にそういう行動が評価を上げることにもつながるということを知っておくべきです。
テリトリー
医事課の仕事は分業制にせざるを得ない。
だが一定期間経験すれば次の業務に行くべき。

医療事務ではジョブローテーションが必須というのがつねづね言っていることです。
そしてさまざまな業務を覚え、さらにそこに付加価値をつけた上でゼネラリストを目指すべきというのが私の主張です。

ですが現実にはその真逆の人が多くいます。
その業務しか知らないスペシャリストです。
そしてそれは決してレベルの高いスペシャリストではない。
自分の担当領域から一切出ないという人は自分の担当領域に閉じた形でしかスキルが身につかなくなってしまいます。
そしてさらに、自分のテリトリー外のことに一切GIVEしないのであれば、反対に外からも一切GIVEされることはありません。
要は自分のテリトリーとは何ぞやということです。
担当とはあくまでも基本領域です。
それが今の自分の仕事の軸であってもすべてではない。
そこをはき違えないことです。
まとめ
私たちは役割分担の意味をもう一度考えてみる必要があります。
原則として医事課の全体最適を常に考えるということです。
「そんなのムリ」「イヤ」という意見は無視します。
組織とはそういうものです。

そして医事課とはそういうところなのです。
つきつめていけばすべては病院収益の最大化のために行っていることです。
そこを忘れないことです。
質の高い患者サービスも病院経営が成り立ってこそ実現できるものです。
その病院経営の屋台骨を支えているのが私たち医療事務員です。
ですのでもっと全体を見るべきです。
自分の担当外だからといって一切協力しないのは、病院経営を妨害しているのと同じことなのです。