私は多少将棋ができるのですが、将棋というのはご存じのとおり手の読み合いを行います。
最終的に相手の読みを上回る方が勝ちます。
プロ棋士同士ならそれこそ何十手、何百手先まで読んで指しています。
さて仕事においては一体どれくらい先まで読むべきなのでしょうか。
今回は先読みについて述べていきます。
ごまお
目次
手っ取り早く仕事ができるようになるには、何手先まで読む?【仕事の先読み】
結論
3手先まで読みましょう!
先読みできる人、できない人
仕事を行っていく上で先のなりゆきをまったく読まないということはまずありません。
多かれ少なかれ人は先読みするものです。
ですがここで問題が1つあります。
それはその先読みの具合、内容は人それぞれだということです。
そして自分都合で勝手な予測をしている人は先読みをしているとはいいません。
それは勝手な自己解釈なだけであって、先読みとは違うのです。
これでわかるとおり先読みという行為を指す場合、それは自分視点と他者視点の2通りの意味が存在するのです。
そして当然ですが先読みできている人とは自分視点ではなく他者視点での判断なわけです。
となると非常に重要になってくるのがメタ認知力です。
つまり相手の考え方に立てるかどうかが、先読みできるかどうかと密接に関わっているということです。
しかしここが一番の難関です。
実際相手の考え方に立てる人というのは、そんなにたくさんいるものではありません。
そもそも小さいときって誰でも「他人も自分と同じ考えを持っているものだ」という傲慢かつ非現実的な前提のもと、「みんなも自分と同じように考える」という思いを強く持っています。
自分の見ている風景と相手が見ている風景はまったく一緒だと思って疑わないのです。
そこには、相手の立場から見ればものごとは違って見えるという真理が欠落しているのです。
しかし、大人になるにつれて私たちは「どうやら自分の見えている風景と相手が見えている風景は違うらしい」ということをいろんな経験を重ねて学ぶわけです。
つまり、目の前の相手は「自分とは違う人」なんだということを知るのです。
この認識がある人は先読みできる人です。
ですが、この認識がない人は先読みできない人になってしまいます。
要するにこの世界はさまざまな考え方をするさまざまな人がいて、自分の常識はあくまで自分の常識にすぎない、と捉えられる人でないと先読みできる人にはならないということです。
そういう捉え方ができない人は自分では先読みしているつもりでも実際は先読みにはなっていないのです。
なぜならそれはすべて自分の思考でしかないからです。
たとえば「自分がもしこういう行動をとれば、相手はこう反応する可能性が高い。だったら自分はきっとこう感じるだろうし、こう返すことにしておこう。」とあらかじめ相手が打つ手に対して対策を打っている状態が先読みしている状態です。
ですが相手の立場に立てない人は「自分がこう行動すれば相手はこうするはず。だからそれに対して自分はこうする。」という思考です。
これは先読みとは言いません。
勝手な自己解釈です。
この人たちがよく使う言葉が「こうするはず」とか「こうするのが普通」「こうしないのは常識的に考えておかしい」などです。
そこにあるのは完全なる自己完結の世界です。
思い込みの世界と言ってもいいかもしれません。
この人たちの世界観では「自分とは違う考え方、ものごとの見方」をする人はいないことになっています。
ですが現実世界は完全に逆で、自分とは違う考え方の人ばかりです。
ここの他者理解ができているかどうかが先読みできる人、できない人の差になってくるのです。
先読みスキル
先読み力はもはや仕事の重要なスキルの1つです。
仕事が早い人、正確な人というのはこの先読みスキルが間違いなく高いです。
これは当然といえば当然なのです。
同じ仕事をするとしても人によって完了までのスピードにははっきりと差が出ます。
これはなぜそうなるかといえば、先読みスキルの差なのです。
そして仕事が遅い人はどうして遅いのかといえば、それはやり直しの数が多いからです。
たとえば、AさんとBさんがまったく同じ内容のレセ点検をしたとします。
実際かかった時間を比較するとAさんはBさんの半分の時間で終わらせていました。
ここで両者のどこに差が生まれるのかというと、やり直しの時間の差なのです。
レセ点検にしてもマニュアル作成にしても書類作成にしても、それらには必ず作成後にチェックが入ります。
そしてここのチェックによる修正が少なければ少ないほど完成までの時間は短くて済みます。
となればどのセクションが一番重要かといえば一番最初の部分なのです。
レセプトなら一次点検、書類作成なら作成の初期段階です。
ここをなんともなしに通過してしまうとあとで膨大なやり直しが発生することになります。
ですのでレセプトの一次点検時にひっかかるところがあるのであれば、その時点でその問題はつぶしておくべきなのです。
わからないところは後でまとめて聞く、という方が一見効率的に見えますが、それは数によります。
たとえば10ヶ所もわからないところがあるのに、それをまとめて聞いて教わっても一度に理解できるはずがない。
わかったつもりで修正をしてみたら、まだ違っていてもう一度修正をしなくちゃいけなくなる。
それはかなりムダな時間の使い方なわけです。
またたとえば、上司から新しい業務フローの作成を指示されたとします。
そして概要はわかったつもりで作り始めます。
ここで仕事が遅い人はとりあえず最後まで作っちゃいます。
途中の確認はなしです。
そうするとどうなるかといえば、そもそもの主旨がちゃんと伝わってなくてすごくあさっての方向なフローができあがるのです。
そうなると完全にイチから作り直すことになります。
ですが仕事の早い人は2割共有というものを必ず行います。
それは完成度2割の時点で必ず上司からフィードバックをもらうというものです。
そうすることで、たとえ間違っていても最小限の被害で済み、いち早く完成に持って行くことができます。
この両者の差は先読みスキルの差なのです。
つねに主観を排除する、自分の理解は正しいという思い込みをしない。
そうした考えにもとづく先を読む力の差が仕事の能力の差となって現れるのです。
何手先まで読む?
先を読むことは大事、それは正しい。
でもだったら何十手も先まで読める方がいいのかという疑問が浮かびます。
結論を先に言っておくとそんな必要はありません。
というかそんな意味のないことはやめましょう。
意味のないというと言い過ぎかもしれませんが生産性が悪すぎます。
将棋は何十手、何百手も先まで読むといいました。
ですがこれは将棋だからです。
どういうことかというと、その世界は将棋オンリーの世界だからです。
つまりタスクは将棋のみ。
リソースは将棋に100%突っ込めばいい。
ですが仕事に同じ手は使えません。
先読みに割けるリソースは限られている。
そんな何十手先まで読んだところで、そうなる確立は限りなく低い。
いろんな結果を想定することを悪いとはいいません。
ですが、そんなことはしだすとキリがない。
こうしたらこうなる、だったらこの場合は、この場合は、の繰り返しでしかない。
だから先読みのやり過ぎは逆効果なのです。
結局やっているのは思考実験と大して変わらない。
まさしく机上の空論。
そこには何のアウトプットもない。
自分では一生懸命考えているつもりでもそれは生産性の向上にはまったく関係しない行為。
だから先読みのし過ぎはやめましょう。
だったらどの程度でとどめておくべきか。
それは3手で十分です。
将棋でも3手ひと組みの読みというものがあります。
初心者が一番最初に身につけるべき方法と言われます。
それは、自分がこう指せば相手がこう指す、だったらそこで自分はこう指す、という3手ひと組みの読み方のことをいいます。
仕事でもこれでいいのです。
自分がこういう言動をとれば、相手はこういう対応をとる可能性がある。
だったらそこで自分はこうしよう、こう言おう。
ここまで想定できれば、こうすればこうなるだろう、また違うように進めれば今度はこうなるだろう、という事前準備を自分で持っていることになります。
そしてまたそこからフィードバックをもらい、自分の言動を客観的に捉えることが可能になります。
つまり、3手目を読むことによって1手目の自分の行動が変わってくるということです。
自分の言動がどう自分に戻ってくるのかを事前に理解しておけば、短絡的な行動、刹那的な感情を抱くことを避けられます。
たった3手読むだけでお得なことが満載です。
大事なことは3手目を読むことによりそこからフィードバックをもらうことです。
以前に正論で論破してはいけないという記事を書きました。

これなんかはまさしくそれで、3手目を読んでいれば論破は得策じゃないってことがわかるのです。
相手を言い負かす、ぐうの音も言わせないことはその瞬間はいい気分かもしれません。
でもそれはブーメランなのです。
結局ブーメランは返ってくると理解していれば1手目にブーメランを投げることも思いとどまれるのです。
自分を客観視する、メタ認知を効かせるためには3手の読みは必須なのです。
まとめ
3手の読みで良しとしたのにはもう1つ理由があります。
先読みは必要最低限にすべきだと思うからです。
本文でも述べたように先読みにはキリがありません。
それはいたずらにムダにアタマを使っているだけの行為。
仕事で本来すべきことは行動です。
成果を上げるには行動しかない。
だったらある程度の見通しが立ったらあとはアウトプットしかないのです。
仕事は熟考すべし、行動すべし。
それはどちらも正しいですが必要なのはそのバランス感覚です。
先読みばかりして動かないのもダメだし、先読みせずに動くのもダメ。
そのバランスこそが生命線。
そしてそのためには客観的視点が不可欠なのです。