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エビデンスってなんぞや?~最善の答えを探せ~

医療に携わっていると必ずエビデンスという言葉を耳にします。

EBMという言葉がありますがこれは evidence based medicine の略ですなわち根拠に基づく医療という意味です。

またEBNは Evidence Based Nursing の略で根拠に基づく看護という意味でエビデンスに基づく看護実践と訳すようです。

このようにエビデンスはもともと医学、保健医療の分野から入ってきた業界用語でその治療法が科学的にみて効果がある、適切であると言えるだけの臨床結果があることをエビデンスがあると言います。

まだまだ一般的には聞き慣れないエビデンスという言葉ですがあらためてどういう概念なのか、どういう見方をすればいいのかという点にフォーカスしていきます。

エビデンスとは

医学や保健医療においてエビデンスとは信頼性の高い臨床研究による実証結果があることを指します。

ウィキペディアによるとエビデンスとは「証拠、根拠、証言、形跡などを意味する英単語 “evidence” に由来する、外来の日本語。一般用語として使われることは少ない。

医学および保健医療の分野では、ある治療法がある病気・怪我・症状に対して効果があることを示す証拠や検証結果、臨床結果を指す。

エビデンスは医療行為において治療法を選択する際、確率的な情報として少しでも多くの患者にとって安全で効果のある治療方法を選ぶ際に指針として利用される。」とあります。

バイアスとエビデンス

そもそも人間は自分に都合のいい情報を優先しやすいバイアスがある為偏った情報に左右されることが少なくありません。

そこで出てきた考え方がエビデンスレベルというものです。

統計学的にみてよりバイアスが含まれにくい情報をエビデンスレベルが高いとし、よりバイアスが含まれやすい情報をエビデンスレベルが低いと評価することでその情報の信頼性の度合いを分かりやすくする考え方が広まりました。

日本語の証拠、根拠という言葉にはバイアスを除いたというような意味はありませんが近年の医学界では本当に効果のある治療法を知るにはバイアスを取り除いた信頼できる臨床結果こそが重要であるという考えから証拠、根拠という日本語ではなくエビデンスという言葉を使用しています。

エビデンスレベル

次にエビデンスレベルというのを見ていきます。

エビデンスレベルは数字が小さいほど信頼性が高いことを意味します。

またエビデンスレベルは確率の信頼度と言い換えることも出来ます。

エビデンスがあるということはすなわち信頼性が高いことを意味し、エビデンスがないことは信頼性が低いことを意味します。

以下はエビデンスレベル順に並んでいます。ですので1番上が最も信頼性が高いということになります。

エビデンスレベル

1 RCTのメタ分析

2 ランダム化比較試験

3 非ランダム化比較試験

4-a コホート研究

4-b 症例対照研究

5 記述研究

6 患者データに基づかない専門委員会や個人の意見

RCTのメタ分析(メタアナリシス)

メタアナリシスとは複数の研究の結果を統合しより高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことです。

メタ分析、メタ解析とも言います。ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは根拠に基づく医療において最も質の高い根拠とされています。

ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)

評価のバイアスを避け客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法です。

従って根拠に基づく医療においてこのランダム化比較試験を複数集め解析したメタアナリシスに次ぐ根拠の質の高い研究手法となります。

非ランダム化比較試験(NRCT)

臨床研究では治療群(治療を行う群)と対照群(治療をせず観察のみの群)の2つに分けて比較しますが、2つの群に分ける際に無作為ではなく分けている研究を指します。

たとえば主治医、病棟、病院など恣意的に治療群と対照群を割り付けられることで両者の性質に偏りが生じやすくなり結果に影響が生じる恐れがあるためランダム化比較試験よりもエビデンスレベルが低いとされています。

コホート研究

分析疫学における手法の1つであり特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し研究対象となる疾病の発生率を比較することで要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究です。要因対照研究とも呼ばれます。

症例対照研究

分析疫学における手法の1つです。疾病に罹患した集団を対象に曝露要因を観察調査します。

次にその対照として罹患していない集団についても同様に特定の要因への曝露状況を調査します。以上の2集団を比較することで要因と疾病の関連を評価する研究手法です。

ケースコントロール研究、患者対照研究、結果対照研究とも言います。

記述研究

単に現状のデータの記述のみに止まる研究のことで非実験的研究や非比較研究とも呼ばれます。

比較対照群は置かないので対象の割り付け(群分け比較)を行っておらず症例報告や症例集積研究(ケースシリーズ研究)などがこれに相当します。

 

患者データに基づかない専門委員会や個人の意見

いわゆる専門家の意見ってやつです。

このようにエビデンスといってもレベルには大きく差があります。

質の高いエビデンスとは出来る限りバイアスを排除した研究のことを言います。

その点でメタ分析はバイアスの影響を極力排除して評価基準を統一した上で多くの研究結果を数量的、総括的に評価してあるからこそエビデンスレベルが最も高いと言えるのです。

冒頭に述べたように現代医療は必ずエビデンスに基づいた治療をしなければなりませんし、欧米では教育や政策決定においてもエビデンスが重視されるべきであるという法律やガイドラインも増えています。

最善の答え

メタ分析を頂点としてエビデンスのヒエラルキーは出来ており、専門家の意見よりもや基礎実験よりも観察研究の方が、そして更にランダム化比較試験の方が信頼すべきエビデンスであり、複数のランダム化比較試験や観察研究をメタ分析として得られた結果は今のところ最善の答えであると言うことが出来ます。

まとめ

最近ではメタ分析の結果は人類全体で共有すべき最善の答えであるということから様々な分野でその結果を集めて共有しようという取り組みもなされています。

またネットの進歩により世界中の論文データベースを見ることも可能になってきていますし昔よりはより身近にメタ分析を知ることも可能となっています。

たとえ英語の論文であっても今やGoogle Translateにぶち込めば日本語で読むことも可能な便利な世の中なのです。

そういう文献をどんどん見ていくことは間違いなく自身にプラスとなっていく筈です。

世間では評論家や専門家と呼ばれる人がごまんといます。

はたしてそのような人達がどれぐらい信頼度の高いエビデンスに基づいて発言をしているのか、また私達はどれほど彼らの意見を鵜呑みにしているのか。

医療に限らず今後の社会においてはそういった統計リテラシーがなければ様々な問題についての経験と勘だけの不毛な議論が尽きることはないでしょう。

最善の答えとはエビデンスベースドであること。これは間違いありません。

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