おとついの記事では質問された相手に「どう思う?」と質問返しすることの是非について書きました。
そこでは部下の自主性、主体性をうながすためにそれを使う場面はたしかにあるが、つねに使うべきじゃないという話をしました。
そして部下の自主性、主体性をうながすということでは今回も同じような話です。
ですが結論は同じにはなりません。
では見ていきましょう。
目次
新人に「自分で考えろ」と言う上司は鬼すぎです
結論
新人には素直に教えてあげてください
ティーチングとコーチング
部下を教育、育成していく場合、部下に対するコミュニケーションの方法は2つにわかれます。
それはティーチングとコーチングです。
それらは簡単にいえば、上司が部下に教える行為がティーチング、考えさせる行為がコーチングです。
そしてここが大事な点ですが、基礎的な事項の理解、インプットに対しては100%ティーチングを行うべきです。
そしてそれが完了した段階から徐々にコーチングへ移行していくべきなのです。
であるならば新人育成に関していえば完全にティーチングを行うべきなのです。
もちろんこれに反論がある人もいるはずです。
「100%教えてしまうと本人のためにならないよ」とか「時には考えさせることも大事」と考える人。
ここは完全に上司、先輩の個人の価値観、経験則によるところなので、強くは主張しません。
ひとつの考え方として聞いてください。
僕は「100%教えないと本人のためにならない」と思っています。
なぜなら新人育成の期間ってティーチングの期間だからです。
まだコーチング期には入っていないのです。
そもそもなんですが、上司、先輩はずるいのです。
どうしてかっていえば、「自分で考えろ」って発言はある程度の経験を積んだ自分だからこそ吐けるセリフだってことを棚上げしているからです。
この状況、このタイミングで「自分で考えろ」ってセリフを新人当時の自分に吐けるのかってことです。
たぶん言えないでしょう。
そして仮にそう言われて当時の自分は自分で考えることができたのか?
きっとそんなことはないでしょう。
みんな新人当時の自分は棚に上げときながら、いけしゃあしゃあと目の前の新人に「自分で考えろ」って言っているのです。
これは完全なメタ認知力の欠如です。
それを言われて相手の新人がどう受け取るのかまでは想像していない。
これはいわば上司や先輩の指導者としての職務怠慢です。
「なんでもかんでも聞いてくるんじゃない。それでは思考停止。自分で考えなさい」と言っている上司の方が思考停止です。
ティーチングとコーチングを混ぜて考えているのですからそれは完全に思考停止なのです。
考える力
数学は数式を覚え、それを使って問題を解きます。
これを仕事に置き換えると、数式を教えるフェーズがティーチングでそれを使って応用問題まで解かせるフェーズがコーチングです。
そして応用問題を解くために考えようとするには、基礎となる数式を知っておく必要があります。
ですが多くの上司は数式を覚えるフェーズで数式を教えずに自分で考えろと言っているのです。
ここまで言うと言い過ぎかもしれませんが、大枠は同じことです。
要は教えるべきところで考えさせている場合が少なくないのではないかってことです。
結局考える行為というのは、考える土台がないとまったく進まないのです。
ルーチンワークをこなすことが精一杯の新人にそんな土台があるはずがないのです。
だから考えようにも考える余地すらほとんどない状態です。
その状況で考えさせることに何の意味があるのでしょうか?
これは完全に上司の傲慢、怠慢です。
教えるフェーズならさっさと答えや手順を教えてあげればいいのです。
結果が間違っていた場合もどこが悪かったのかをすぐに教えてあげればいいのです。
そうせず「自分で考えろ」と放置したところで何も生まれません。
考える力なんかつきません。
むしろ仕事に萎縮し、失敗を極度に避け、ちっとも成長していかないという悪循環に陥るだけです。
ですが「自分で考えろ」教の上司は随分多いのです。
それを全否定する気はまったくありません。
ただ新人にはそれをやっても時間のムダなのです。
まとめ
上司の中には「自分で考えろ」のスタイルで指導してちゃんと一人前に育ったよ、と言う人もいるかもしれません。
でもそれは例外です。
ホントに自分で考えて正しい答えを出せる人も中にはいますが、それはその人がもともと優秀なだけであって指導が優秀だったわけではありません。
そんな100人に1人みたいな例を引き合いに出して、いかなる場合も「自分で考えろ」スタイルを貫く上司なのであればその部下の新人がかわいそすぎます。
「自分で考えろ」と放置するのは教える側の怠慢です。
これは間違いない。
ただ新人の皆さんにも言っておきたいことがあります。
それは、経験不足であろうとも、いかなる場合も自分のアタマで考えるという習慣は持つようにしてください。
なぜならいつかはティーチングフェーズは終わるからです。
1から10まで教えてくれる期間はそんなに長くは続きませんので。