新型コロナウイルス感染症が医療機関に及ぼしている影響は多大なものがあり、現在日本全国の医療機関がその経営に窮しております。
そして事務側からして最も懸念することの中の一つが施設基準関連です。
そのことについて8月19日に中医協にて議論がありましたので、今日はそのあたりの展望を探っていきます。
目次
【新型コロナ禍】看護必要度の経過措置延長はあるのか、ないのか?【9月30日期限】
結論
条件つきで経過措置延長はなされるのではないでしょうか。
診療報酬上の臨時的な対応の拡充と一部の経過措置の期限延長案
今回事務局案として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかる診療報酬上の臨時的な対応の拡充と、2020年度診療報酬改定における一部の経過措置の期限延長が出されました。
臨時的な対応の拡充
COVID-19にかかる診療報酬上の臨時的な取り扱いの拡充について、厚労省は以下の3つを提案しています。
COVID-19患者を受け入れた医療機関等について、年間の手術件数など一定期間の実績を求める要件を満たさなくなった場合でも当該施設基準を満たしているものとして取り扱うこと
職員がCOVID-19に感染または濃厚接触者となり出勤ができない医療機関を「COVID-19患者等を受け入れた医療機関」と同様の取り扱いにすること
緊急事態宣言の期間は、全ての医療機関を「COVID-19患者等を受け入れた医療機関」とみなすこと
一部の経過措置の期限延長
また「重症度、医療・看護必要度の施設基準」「回復期リハビリテーション病棟入院料1・3の施設基準」「地域包括ケア病棟入院料(特定一般入院料の注7も同様)の施設基準」の診療実績の経過措置を2021年3月31日まで延長する案も提出されました。
看護必要度について
本来2020年度の診療報酬改定は次期改定へのつなぎとなるとても大事なものです。
ですが現在のこの未曾有の状況下において、ちょっとないがしろにされている感も現場からすると否めません。
看護必要度を考慮する以前に病院経営が成り立つのかどうかという昨今です。
過去と同様に経過措置期間終了→新制度適用とするには、かなり厳しい状況であると考えます。
それこそ一人の感染者が院内から出るだけで、病棟機能が止まってしまう可能性大です。
そうなると看護必要度のクリア率うんぬん以前の問題です。
まだまだ先行き不明なこの状況下で、診療報酬改定だけを粛々と進められても現場は混乱し疲弊していくだけです。
看護必要度の経過措置に関しては一律2021年3月31日に期限を延長してもいいのではないかと思うのです。
今回の総会ではそこの結論は出ておらず、会長預かりとなっています。
今後検討の上、最終結論を導き、厚労省が近く事務連絡を発出することとなります。
おそらくですが、今回このような提案がなされたということは、経過措置延長案は盛り込まれると予想されます。
ただし、一律延長にはならないはずです。
そして、条件つきで発出されたとしても医療機関にとってはあまり使えない内容になるのではないかと予想します。
つまるところ、現場の負担、疲弊、苦労は大して軽減されないのではないかと。
厚労省はそれなりに考えていますよ、考慮していますよという「てい」を示すだけのものになるのではないか。
そう危惧しています。
これらすべてが杞憂に終わればいいのですが。
今後の動向に注目しましょう!
【おまけ】
経過措置という扱いを誤解されている方が結構いるようなので、念のために記しておきます。
ただし、医療現場における準備期間等を考慮して、「改定直前(2020年3月31日)に当該入院料等を届け出ていた場合には、今年(2020年)9月30日までは重症患者割合を満たすものとみなす」という経過措置が設けられています。
これは、「9月30日までは従前の基準値(急性期1で看護必要度IIの場合には25%)で良い」とするものではなく、「9月30日までは当該病棟について重症患者割合は不問とする」(極論すればゼロ%でも良い)とするものです。
(GemMed 新型コロナ禍で、「看護必要度の経過措置延長」「診療報酬の柔軟措置の拡大」を一律に行うべきか―中医協総会(1)2020.8.19.(水) より抜粋)
※ 経過措置とはその期日までは満たすものとみなす、ということなので、「実績値は不問とする」という意味です。
ごまお