医療事務は女性の職場。
当然男性もいますが女性がマジョリティ。
男女比率は1対9や2対8ぐらいが一般的。
もはや女性の組織といってもいいくらいです。
その中で働いている男性医療事務員の一番の悩みは、なんといっても人間関係。
特にリーダーともなれば女性組織をまとめるのに四苦八苦の毎日です。
「どうやったら言うこと聞いてくれるの?」
「どうやったら動いてくれるの?」
こんな悩みを持つ男性医療事務員は全国にごまんといるでしょう。
もしかしたら、あなたもそうではないですか?
この記事ではそんなあなたがどういう思考を持てばいいのか、どんなスキルを伸ばせば上手くいくのか、ということにフォーカスします。
読み進めることで女性組織を上手くマネジメントするヒントがきっと見つかるでしょう。
目次
マネジメント力アップ!医事課に必要なのはセッター型リーダー【セッター思考】
結論
医事課には、セッター型リーダーが向いています。
セッター思考
まず今回の記事を書くきっかけとなった本を紹介します。
セッター思考 人と人をつなぐ技術を磨く 竹下佳江 著
著者はオリンピックに3大会連続で出場し、2012年のロンドン五輪では銅メダルを獲得した元・全日本女子バレーボール代表キャプテンの竹下佳江氏です。
世界最小最強セッターと呼ばれたバレーボール界のレジェンドです。
この本はチームの司令塔であるセッターというポジションだからわかる周りの見え方、思考を人生の成功法則に落とし込んだものです。
そしてこの本が興味深いのは、そのまま医事課のマネジメント論として読めるところにあります。
女子バレーのキャプテンとは監督と選手をつなぐいわば中間管理職のような立場。
女性組織をまとめるリーダーというわけです。
この構図は医療事務の世界と本当によく似ています。
だからバレーの世界のできごとが書いてあるのに、まるで我々の世界のことのように思えるのです。
はたしてセッター思考とは何なのか?
ではさっそく見ていきましょう。
「セッター思考」ってどんな本?
本書を簡単に説明すると「調整型リーダー論」「女性グループのまとめ方」が書いてある本です。
女性の心理について書かれており、女性組織をマネジメントする人にとって非常に参考になる内容です。
セッター思考とは何か?
ではセッター思考とは一体何なのか?そこを見ていきましょう。
リーダーには2種類ある
まずリーダーのタイプは次の2つにわけられます。
・アタッカー型リーダー
・セッター型リーダー
アタッカー型リーダー
・グイグイみんなを引っ張る
・カリスマタイプ
・精神論・根性論重視
・部下をリーダーの色に染める
セッター型リーダー
・黒子になってみんなの力を引き出す
・縁の下の力持ちタイプ
・コミュニケーション重視
・一人ひとりの色を際立たせる
セッター思考とは
「オレのやり方に黙って従え」では、いまの女性はなかなかついていきません。
「あなたはどう思う?」と質問を投げかけて、自分で答えを導くようにすると、女性は「このリーダーは信頼できる」と、ついてきてくれるのではないかと思います。
そのためには、コミュニケーションは必須。
人の話を誠心誠意とことん聞き、相手を知り尽くそうとする「セッター思考」でないと、女性は心を開かないのです。
上からガンガン指導するといった方法は男性には使えても、女性には決して使えません。
とことんまで話を聞き、相手を知り尽くそうとする姿勢、それが「セッター思考」なのです。
女性の心理、思考
セッター思考でいくとしても、その先に一番の障壁があります。
それは女性の心理、思考。
つまり女性の物の考え方です。
男性にとってはここが最もわからないところ。
そしてコミュニケーションが上手くとれない一番の原因もここです。
本書ではいろんなシチュエーションとそのときの心理が描かれています。
男子の場合は、監督が「何やってるんだ!」と怒鳴りつけても、選手は「ハイ、すみません!」と素直に受け止めるでしょう。
怒りっぱなしでも大丈夫。
結果を出したときに、「よし、よくやった!」と肩をポンと叩けば、お互いに満足しそうなイメージがあります。
ところが女子の場合は、怒鳴りつけたら内心ムッとするでしょうし、なかには委縮してしまう選手もいます。
かといって、叱るべき場面で叱らなければ、好き勝手し放題でしょう。
女性はリーダーシップを発揮しすぎても依存してしまうし、自主性に任せたら立ち止まってしまう。
でもその半面、素直だし、我慢強さもあります。
男性にとってはどうでもいいことでも、女性にとっては大切なことがたくさんあるんです。
そこは理解してあげたほうがいいんじゃないかな、と思います。
この点を必ず押さえておかないと、女性はついてきません。
男性は面倒なことは考えないところがありますが、女性はあれこれ細かいことも考えます。
単刀直入にいいますが、女性は群れをつくりたがります。
(中略)
女性は共通の敵をつくりやすいんですね。
“悪い群れ”は何かターゲットがあったら、一気にネガティブな方向に進んでしまう。
(中略)
“いい群れ”をつくるために私がしていた方法は、女性の群れを把握するということ。
女性は、大きな集団のなかに小さな群れをつくりたがります。
その小さな群れの中心になっているのは誰かを見極め、サブリーダー的なポジションを任せるのです。
好きな人とそうではない人に同じことを指示されたら、女性は男性以上に、間違いなく好きな人のほうに従います。
だから、仲のいいグループのなかで、みんなから信頼されている人を選び、中心になってもらうことが大切なんです。
女性は群れになるから難しい。
でも”いい群れ”にできれば、きっと最強のチームをつくれます。
女性に対して強引に自分の意見を押しつけようとしても、反発を生むだけ。
そんなときは、相手に考えてもらい、相手が変わることを信じて待つしかないのです。
うわべではしぶしぶ了承していても納得はしていない。
だから強引な説得には意味がありません。
数字は一つの判断材料であって、絶対ではないのです。
ときには、気合や根性も必要になります。
でも、とにかく気合と根性だけで勝つという、昔ながらの考え方は通用しなくなっていることは事実です。
どう頑張ればいいのかを具体的に示すのが、これからのリーダーの大切な役割なんじゃないかな、と思います。
どう頑張ればいいのかの道筋を具体的に示すこと、それが大事。
男性にはよくも悪くも、言葉足らずな部分があります。
監督が選手に指導をしているとき、「もうひと言あったらいいのにな」と思うときもあります。
たとえ言っていることが正論であっても、女性は心で納得しないとダメ。
頭だけではなかなか受け入れられません。
(中略)
女性が相手の場合、自分のやり方に合わせさせようとするのではなく、ある程度は相手に合わせるしかないんじゃないかと思います。
正直なところ、どこが言葉足らずなのかが男性にはわかりません。
「これ極めて正論を言っているだけなんだけれど」と思っています。
でもそれが良くない。
女性は心を開くのは遅くても、コミュニケーションを重ねるうちに、心を開くようになります。
そして、一度心を開いたら、とことん相手を信じる忠実なところもある。
女性に対しては、様子見をしているときから積極的に話しかけて、早めに警戒心を解いていくことが大事。
セッター型リーダーになるには
「リーダーは信念やぶれないものを持っているのも大事。だけど、情も大事だな」と感じています。
誰でも「この人のために頑張ろう」とか、モチベーションの中には少なからず情があると思います。
練習のときはいつも厳しく叱っている監督でも、練習を離れたところでその人の素顔を垣間見ると、選手も「自分のため」以外のやる気スイッチが入ったりするものです。
ときには素顔の自分を見せるというか、オンとオフを切り替えて、普段は見せない一面を見せることも、セッター型リーダーには必要なのだと思います。
普段は見せない一面を見せるといっても、微妙なサジ加減は必要です。
女性はよくも悪くも、さまざまな原因で変化する生き物です。
昨日までやる気に燃えていても、今日はやる気なし、という場合もあります。
練習で手を抜いて、周りに叱られてもなかなか”やる気スイッチ”が入らない選手もいました。
そんな場面で、今はどういう心の状態なのかを把握するのが、セッター思考です。
顔色をうかがって相手のご機嫌を取る必要はありませんが、なんとなく元気がない相手に、「今日は暑いね」と話しかけるだけでも、気分が変わるときもあります。
今はどういう心の状態なのかを把握することが大事。
育てるためには、やはり「任せきる」ことが一番の方法です。
(中略)
女性は受け身になりがちなので、自分から進んでやる人は少数派です。
ためらっている相手に、思い切ってトスを上げてみてください。
一度でダメなら、何度でも。
そうするうちに、女性も「私がやります」と意識が変わっていくものなのです。
(中略)
ただ、「君だから任せるんだ」「あなたを信頼しているよ」と言われても、丸投げされてしまうのは困ります。
リーダーとして人に任せるときは、もし任せた人が失敗したら、「自分が責任を負う」という覚悟が必要です。
リスクを承知であえてトスを上げ続けること。
そして「何かあっても面倒見るから」ぐらいの気持ちで支えるからこそ、任された側は頑張れる。
女性は変化する生き物。
変化には必ず理由があるので、それに気づくためには、日ごろからしっかりアンテナを立てておかなくてはなりません。
(中略)
誰かに声をかけてあげるとき、いつも考えるのは手を差し伸べるタイミングです。
相手が悩んでいるからといって、いつでも声をかければいいというものではありません。
誰だって、「いまは一人で考えたいから、そっとしといて」というときもあるし、一杯いっぱいで人の話を聞ける状況ではないときもあります。
相手の出している空気感からタイミングを感じ取ることが大事。
そのためには、周りの様子をつねに観察しようという意識が必要。
「相手を知ろう」という気持ちが大切です。
セッター思考になるためのマインドセット
現場を離れ、エースから黒子に回ったときに大事なのは、それまでの自分のやり方や考え方を押しつけるのではなく、周りを活かす方法を考えることです。
自分が輝こうとするのではなく、いかにしてチーム全体や若手を輝かせることができるか。
あまり優しいトスを上げてばかりいても人は育たないし、難しいトスばかりを上げていてもダメ。
タイミングやその人に合う最善が何なのか、つねに考えるのがセッター思考です。
自分が本当に試されるのはエースから黒子に変わるときです。
セッター型リーダーは、上からものをいわないのが基本です。
(中略)
若手との接し方に悩む上司の方は、もしかしたら「上に立つ立場なんだから、いつでもそれにふさわしい態度で接しないといけない」と思いすぎているところがあるのではないでしょうか。
(中略)
立場や経験が上でも、人間的に上だということではないでしょう。
対等に話すというのは、タメ口で話すという意味ではありません。
相手を尊敬しながら話すという意味です。
上から目線で話す人は、女性の中で即、嫌悪感を抱く相手になってしまいます。
相手の悪いところに気づいているのに、そこで何も言わないのは、思いやりではありません。
「相手から嫌われたくない」と、自分を守っているだけだと思います。
(中略)
ただ、女性と接するときは公平性が大事です。
女性は一人だけをほめると、周りは「あの子ばっかりひいきしている」と反発しますし、一人だけを叱ると、「なんで私ばっかり」となります。
「あなたが必要なんだよ。だから注意しているんだ」という相手を思いやる気持ちが大事。
「私が困るんだ」ではなく「チームのみんなが困るんだ」と伝えよう。
セッター思考を磨くために
・迷ったら楽な道よりも厳しい道を選ぶ
・できない理由ではなくできる方法を考える
・仲間を信じると決めた自分を信じる
・結果に踊らされず目の前のことに真摯に向き合う
リーダーとは
キャプテンなんて、なるもんじゃないー。
数えきれないぐらい、何度もそう思いました。
きっと、リーダーの立場の多くの人が、そんな思いを抱えているのではないでしょうか。
それでも、人の上の立場に立ってみないとわからないことはたくさんあります。
自分の視野が広くなるのは確かです。
私もキャプテンの座を離れてしばらく経ってから、「ああ、自分は成長させてもらったんだな」と何度も実感しました。
(中略)
いままでとは違うポジションに置かれることで、それまで考えなかったことを自然に考えるようになりますし、そうやって自分の世界は広がっていくものなのかもしれません。
(中略)
きっと、生まれつきリーダーに向いている人は、そんなに多くないでしょう。
立場が人を成長させてくれるんだと思います。
人はリーダーになってから、少しずつリーダーになっていくのです。
まとめ
セッターはチームの人と人をつないで、周りを輝かせるという役割を担うポジションです。
そしてセッターに求められる一番のスキルはコミュニケーション力。
本書を読み進めると、あらゆる場面で細やかなコミュニケーションがとられていることがわかります。
そして観察力の高さと、そのあとの押し引きの絶妙さに感心させられます。
これは女性の心理をわかっていないととれない行動だな、と思うところがたくさんありました。
「男性にとってはどうでもいいことでも、女性にとっては大切なことがたくさんある」
この一文に大事なことがつまっている気がします。
「そんなこと知らんがな」と思うか「何が大切なのかな」と思えるか。
要は本当に相手を知ろうとしているか、わかろうとしているか、ということ。
時代の流れとして医事課にはもうアタッカー型リーダーは向いていないんだろうなと思います。
セッター型リーダー(調整型リーダー)でなければ、女性中心のチームをまとめるのはむずかしい。
僕のような古い人間はリーダーといえば上から指示を出し、みんなを引っ張っていくイメージをどうしても持っています。
ですがそれでは、今の女性はなかなかついて来ないでしょう。
必要なのは高いコミュニケーション力と傾聴力。
そして、自分の意見を殺してでもチームを良くするためには、自分がやりたくないことでもやらないといけない、という覚悟。
もはや一般のリーダー像とは真逆とも思えるスキルとマインドですが、これこそが今後の医事課のリーダーのあるべき姿なのでしょう。
いかにセッター思考を鍛えていくか?
それこそが医事課リーダーの今後の課題です。