レセプトの再審査請求って絶対必要?【ケースバイケース?】

現在支払基金では支払基金業務効率化・高度化計画工程表にのっとって審査支払機関改革を進めているとのことです。(詳しくは→支払基金改革は本物か?【外見だけ変えてもダメ】 )

そこには2022年度の時点で審査の見える化、コンピューターチェックによる審査の完結を9割程度目指すとされています。

これはこれで実現されればとても良いことではあるのですが、そもそも現時点で審査の見える化がなされていないというのが非常に問題です。

これを目標に掲げているということは支払基金自体が現在は見える化出来ていないと認識しているということです。

医療機関側の人間としては審査支払機関(支払基金・国保連合会)に言いたいことは山ほどあります。

あまりにも理不尽に思えることも多々あります。

今回はその中でもレセプト査定における再審査請求について述べたいと思います。

レセプトの再審査請求って絶対必要?

結論

 

必要です。高額査定でなくてもするべきです。

レセプト審査について

レセプト査定・返戻

査定とは医療機関の請求に対し審査側が不適当と判断した項目の内容を修正(減額・減点)し調整された額で支払いが行われることをいいます。

一方、返戻は医療行為の適否が判断し難い場合に審査側が一方的にレセプト自体を差し戻すことを指します。

このうち査定は収入が差し引かれることになるので実施した医療行為の対価が得られないという点で医療機関にとってはとても厳しい制度です。

また返戻も請求したレセプトが差し戻されるので査定と同様に当月に見込んだ収入が得られないという点では厳しいものです。

ですが返戻は差し戻されたレセプトを再請求すれば遅れはしますが収入は得られます。

対して減点という査定はもうその時点で収入がなくなることが確定してしまいます。

この違いは非常に大きいです。

ですがその減点分をもう一度取り戻せるかもしれないという方法が再審査請求なのです。

再審査請求

減点は点数表の算定要件や薬剤の適応などといった保険診療のルールに整合していない、またはその診療行為が不要であるか必要性が低いと判断されたものが対象になります。

医療機関に通知される増減点連絡書等には減点の理由が記されていて「A:適応外」「B:過剰・重複」「C:A・B以外の医学的な理由」「D:告示通知に非該当」と分けられています。

医療機関としてはこうした減点に納得がいかなければ再審査請求を行えるとされています。

ただし支払基金については協力要請という形で以下の通知文が出ています。

 

社会保険診療報酬支払基金に対する再審査の申出について

(中略)

1 支払基金に対する再審査の申出はできる限り早期に行い、支払基金が定めた申出期間(原則6ヵ月以内)を遵守するよう努められたいこと。

2 同一事項について同一の者からの再度の再審査申出は、特別の事情がない限り認めら
れないものであるので、留意されたいこと。

 

要するに再審査の申出期限を6ヵ月とし、再度の再審査請求は基本的には認めない、ということです。

統一基準がない

そもそも論になりますが審査の統一基準がないというのが一番の問題点です。

各都道府県で審査基準がバラバラという体制で今までずっと行われてきているのがまずおかしいのです。

査定率が最も高い大阪府と最も低い秋田県では2倍以上の開きがあります。

これは地域の診療体制、請求状況の違いでは説明がつかないほどの格差です。

かたや大阪府では査定されているものが秋田県では通っているということもある訳です。

これでは保険請求の公平性、透明性など担保される筈もありません。

医学的判断

これは審査機関の常套句ですが何かにつけて医学的判断で済ませてしまいます。

そこには何の根拠もありません。

医学的というからにはそれなりの根拠が必要なのですがそこまでの説明はありません。

要するに審査委員の医師の判断にすぎません。

ですので審査委員が変わると医学的判断までも変わります。

そんなことは普通あり得ないのですが。

きちんとその審査委員会の判断基準を設けておき委員が変わっても審査内容は一定の範囲の中で判断する、としていなければ請求側は何を基準とすべきかが全く分からなくなってしまいます。

今後の審査

上記のような現状の問題点を踏まえ国としては審査基準の統一、見える化、支払基金と国保連合会の審査格差の是正に向けて進めているようです。

はたしてどこまで改革が出来るのか疑問ではありますが現状よりもましな状況を作ってくれることを期待します。

再審査請求

再審査する?

さて未来のことは一旦置いておきまして現状どう対応していくべきかということについて述べていきます。

まず再審査請求している医療機関がどれぐらいあるのかということです。

毎回しているという所もあれば全然していないという所もあるのではないでしょうか。

おおよそですが毎回している、時々している、していない、という割合は3:4:3だそうです。

その中で毎回している、時々している医療機関で再審査請求が認められた、もしくは一部認められた(復活又は一部復活)割合というのが約6割。

認められない(原審どおり)のが約4割だということです。

これは各都道府県でかなり違ってくるので一概には言えません。

私個人のイメージですと6割も復活しているとは到底思えなのですが。

当院ですと2、3割程度だと思います。

ですがそれでも2、3割は再審査することによって請求は通っているのです。

またこの中には手術手技や材料が症状詳記によって復活したという例もあります。

そう考えると再審査請求をしないというのは非常にもったいないことなのです。

再審査しない理由

まずは減点点数が少ないので再審査するほどのものでもないという意見があります。

そして点数は大したことはないのに件数がある場合は非常に処理が面倒になってくるというのもあります。

またするだけ無駄、意味がないという意見や頻繁に再審査をかけたら審査機関から睨まれるのではないか、印象が悪くなるのではないかという意見もあります。

審査機関から睨まれる?

これはありません。

逆に再審査をしないということはその査定を受け入れたという意志表示と受けとられます。

ですので点数が少ない査定だからといってそのままにしておくことは将来においてはメリットにはなり得ません。

どんどんその箇所及び関連箇所を突いてこられかねませんので一度ビシッと再審査をして明確な意思表示をしておく必要があります。

行うべき再審査を放棄して同じような査定を繰り返し受けている方が、審査支払機関から不信感を持たれてしまいます。

査定を受けたらまずはその内容を吟味して対応の必要性を検討することが大切です。

処理が面倒とかいう理由で再審査をしないのは診療報酬請求を放棄しているのも同然ですので絶対やめましょう。

審査機関だって間違う

これは当たり前の話です。

人がすることですので当然あり得ます。

当院も先日ある検査項目が査定となっていたのですがどう考えても理由が分からないということで直接電話をして調べてもらったところ向こうの間違いだったということがありました。

こういうことはありますので査定を全てそのまま鵜呑みにするのは駄目です。

ポイントはきちんと精査することです。理由を突き詰めることです。

こちらの誤りか審査機関の誤りか、まずはその線引きが第一です。

保険ルールに照らして適切な診療を行ったのであれば積極的に再審査請求を行うべきなのです。

病名漏れは絶対なくそう

一部の支払基金支部では記載漏れの病名が診察時に診断されていた根拠を検査値などの客観的なデータや病態などの説明で示せば再審査請求を検討しますとしています。

当院の管轄支部ではそれは不可とのことでした。

また国保連合会は全国全て病名漏れレセプトの再審査請求を基本的に受け付けていません。

しかしこの点も都道府県ごとに取扱いはバラバラのようです。

どちらにせよ病名漏れでの再審査請求はかなり難しいと思われますのでこの点は絶対なくすようにしましょう。

審査の濃淡

支払基金自身が次のように言っています。

“審査委員や職員が増えない中、レセプト請求件数は増加しており審査に濃淡(高額レセや医療機関の請求傾向)をつけている。”

つまり全てを均一には見ていないということです。

集中して見る箇所が存在するということです。

そして違う言い方をすれば集中して見る医療機関も存在するということです。

これは効率化を考えれば当然そうなる訳で審査機関側からすれば見る前からバイアスがかかっている状態です。

A病院はおおよそ適正だ、今回もいくつか見てみたがいつもどおりのようだ。

対してB病院は要注意病院だ。毎回同じ査定をされているのに改善する気配もない。

今回も同じのようだ。常に請求はダメもとで攻めた請求をしてくる。

そうなるとこっちもきっちり厳しく見ないとな、となってしまうのです。

こう思われてしまうとその後が相当きつい訳です。

そうならない為にも明確な意思表示というのが必要なのです。

きちんと査定内容を受け止めて吟味、検討していますよ、改善に努めていますよという姿勢です。

こう考えると査定点数の高低は関係ないのです。

たとえ5点でも10点でも査定内容に真摯に向き合う、対応するということが大事です。

まとめ

昨今の審査強化の流れの中、行き過ぎた査定を防ぐには常に再審査請求をするという姿勢が大切です。

これは収入を増やすというより、自院の治療の正当性を主張する為の意志表示という意味合いの方が大きいのかもしれません。

再審査を多くすることで審査機関から目をつけられるということは決してなくむしろ適正な診療報酬請求に積極的に取り組んでいると見られる筈です。

今後ますますレセプト審査の状況は厳しさを増すと思われます。

請求に関して医療機関としては受け身では絶対ダメです。

少しでも納得がいかない査定については点数の高低にかかわらず問い合わせる、再審査請求を行うという姿勢が常に求められます。

自院を守る為にも再審査請求は積極的に行っていきましょう。

 

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