日本の医療業界で取り沙汰される様々な問題の中でも、最も緊要な問題の1つに慢性的な医師不足による医師の過重労働があります。
これは医療の質の低下に直結する問題である為医師が医療業務に専念する為、負担の大きい事務作業を補助する目的で2008年に診療報酬改定によって医師事務作業補助体制加算が新設されました。
そして現在において厚生労働省は医師の働き方改革をより加速推進させていく為にこの医事事務作業補助体制加算を高く評価しています。
今後この職種の将来性はどうなのか、どうしていくべきなのかを見ていきます。
目次
医師事務作業補助者の未来ってどうなの?
結論
存在価値はより高まっていく筈です。将来有望な職種に育つ可能性は十分にあります。
医師事務作業補助者について
医師事務作業補助者とは
まず医師事務作業補助者を説明します。
医師事務作業保持者は医師の業務負担を軽減する為に医師が行う幅広い業務内容のうち事務作業をサポートする人のことです。
病院によって様々な呼称があり医師事務作業補助者のほかにドクターズクラーク(DC)、メディカルアシスタント(MA)、メディカルセクレタリー(MS)、医療秘書などと呼ばれています。
業務内容
医師事務作業補助者の業務は医師の指示の下に、診断書などの文書作成補助、診療記録への代行入力、医療の質の向上に資する事務作業、並びに行政上の業務への対応に限定するとされています。
そして、医師以外の職種の指示の下に行う業務、診療報酬の請求業務、窓口・受付業務、医療機関の経営、運営の為のデータ収集業務、看護業務の補助並びに物品運搬業務等については業務としないとされています。
診療報酬改定
2018年改定により多職種からなる役割分担推進の為の委員会又は会議を設置し、病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画を作成すること等が施設基準要件とされるとともに点数の引き上げが行われました。
このことからも分かる通り厚生労働省は働き方改革のもと医師の負担軽減に躍起になっておりまただからこそ当加算を依然高く評価していることが分かります。
この流れは次期改定においても引き継がれるものと思われます。
診療報酬
政策上の必然性
現在の診療報酬において高い点数を算定しようと思えばどうしても病床回転率を高めざるを得ない報酬体系になっています。
そうなると必然的に全体の流れが早まり医師の仕事もより忙しくなっていきます。
そのような背景で医師事務作業補助者の役目は医師の業務効率化を行い病院の労働生産性向上を成し得る為にさらなる寄与を果たしていくことです。
国の政策誘導をたどっていくと医師事務作業補助者は更に必要性が増してくるというのは必然な訳です。
点数
医師事務作業補助体制加算の点数は改定ごとに上がってきており導入期から成長期、そして成熟期
へと右肩上がりに進んでいます。
機会損失コスト
機会損失という考え方があります。
これは発生した損失ではなく最善の意志決定をしないことによってより多くの利益を得る機会を逃すことで生じる損失のことを言います。
ですので本来時給の高い医師が代替性のある事務作業を行うことは多大な機会損失コストが発生しているのです。
例えば、3,000円の診断書を1時間で4枚作成すると12,000円となります。
同じ1時間でも上部内視鏡検査を1時間で2件行うと11,400円×2=22,800円となります。
この場合10,800円が機会損失コストをなります。
医師には本来どちらをやってもらう必要があるのかということです。
代替性のある事務作業なら医師自ら行うことよりもそこを医師事務作業補助者が行うことにより医師が診療に専念することで収益増が生まれるのです。
この機会損失コストというのはかなり多く存在している筈です。
更に医師と医師事務作業補助者の時給の違いを見れば診断書作成の利益率も大きく異なります。
トータルで見てどれが医師にして貰うべき業務なのか、どれを医師事務作業補助者にして貰うべき業務なのかを見極めることが大切です。
チーム医療
チーム医療では代替性という考え方が重要です。
現場の忙しい仕事の全部が国家資格保持者でないと出来ない業務なのかということを考えることが必要です。
そして労働生産性が上がる国家資格保持者でしか出来ない業務へ専念させ、それをまわりで支えるのがチーム医療です。
存在価値
地域にとって必要な病院はなくなりません。
存在価値があれば需要があり残り続けます。
同じように医師事務作業補助者も病院にとって存在価値を示せば残り続けます。
むしろより高い評価をされていく可能性もあります。
時代の流れ、医療政策の今後を思えばますますその存在価値は高くなっていくと思われます。
しかしその為には医師事務作業補助者自身の自己研鑽、レベルアップというものが必要不可欠です。実際現場では人材の資質の幅が大きくばらつきがある、定着しない、思ったような活用が出来ていないなどの課題があることも事実です。
これらの原因には専門的な教育システムの未整備や業務内容、業務範囲の不明確さなどがある場合も見受けられます。
実際医師事務作業補助の職に就いてみたものの現場のレベルについていけず辞めてします人も少なからずいます。
今後の将来性は有望なもののそれなりの能力、専門性が要求される職種なので生半可な気持ちで志すのだけはやめたほうがいいと思います。
出来れば診療情報管理士などの資格などを目指すぐらいのモチベーションがあればよりよいキャリアアップに繋げていけるのではないかと思います。
これはあくまで例であって資格はなくてもいいですが常に学ぶ姿勢だけは忘れないでほしいと思いますし、そうでないと今後求められる医師事務作業補助者像には近づけないと思います。
まとめ
医師の働き方改革は国の喫緊の課題でありその解決の為には医師事務作業補助者の活用はマストであるというのが現状の診療報酬制度の答えです。
この方針に更に加速し次回の改定においても医師事務作業補助体制加算については追い風となっている可能性が高いです。
そして機会損失コストを勘案した上でその需要がより高まっていくというのは無理な推論でもありません。
将来的には現行の任意の加算ではなくて看護職員配置と同様に施設基準で入院患者○人に医師事務作業補助者1人のように規定される可能性だってゼロではないです。
そうなった時に問われるのはやはり医療の質という1点です。
ただ多ければいいということではない、どれだけ病院にとってかけがえのない存在となるか、医師の業務の効率化に寄与出来るか、求められることは非常に高いレベルにあります。
それに応えられるだけの人材が数多く生まれることを心から願っております。
そして医事課と共に同じ事務職として医療を裏から支える屋台骨として機能出来るようにお互い切磋琢磨していけたなら素晴らしいと思います。