あるとき、自分もしくは家族が入院することになった。
そんな場合、病院から書類を出してくださいね、と言われます。
このように通常入院する際に医療機関は、入院保証書(又は入院申込書・入院誓約書)の提出を求めます。
そしてその中で身元引受人(身元保証人)と連帯保証人の記載を求めてきます。
このとき多くの人はこう思います。
「身元引受人って何?」
「連帯保証人って何?」
「どう違うの?」
「一体誰を書けばいいの?」
あなたもきっとそんな疑問を解決するために、ここにたどり着いたのでしょう。
ならばこのあとの記事を読んで、そんな疑問を晴らしましょう。
最後まで読んで頂ければ、身元引受人とは何か、連帯保証人とは何かがわかるはずです。
また本文では「そもそもこれは何にもとづいて求めているものなのか」や「今後起こりうることにどんなことが考えらえれて、どう対応していくべきなのか」ということにも深堀りします。
この記事が少しでも理解の手助けになれば幸いです。
目次
入院時の身元引受人、連帯保証人って誰のこと?【身元引受人と連帯保証人について知っておきたい3つのこと】
結論
1.身元引受人には法的根拠がない
2.連帯保証人の責任は重い
3.医療機関としては連帯保証人以外の選択肢も用意しておく必要がある
まずは「身元引受人」「連帯保証人」の定義を見ていきましょう。
身元引受人
身元引受人とは
身元保証人ともいいます。
医療機関が身元保証に求める役割としては以下のことが考えられます。
1.緊急の連絡先に関すること
2.入院計画に関すること
3.入院中に必要な物品の準備に関すること
4.入院費に関すること
5.退院支援に関すること
6.死亡時の遺体・遺品の引き取り、葬儀等に関すること
この中で入院費用については、昔は支払いに係る金銭保証と死亡患者の引き取り等に係る身元保証とを区別せず、広く保証人として提示を求める医療機関もありました。
ですが最近ではほとんどの医療機関が両者を区別し、身元引受人と連帯保証人の提示をそれぞれ求めています。
身元引受人には法的根拠がない
「連帯保証人」は民法にて規定がありますが「身元引受人」については民法上明文の規定がある訳ではなく、身元引受人の責任は個別の契約ごとに異なってきます。
「身元保証ニ関スル法律」という法律がありますがこれは労働契約や雇用契約に関する契約に適用されるものであり、入院患者の身元引受人に適用されるものではありません。
であるならばなぜ求めているのかといえば、昔からの慣習だからということになります。
身元引受人の該当者
一般的に「連帯保証人」については患者と独立した生計を営み、支払能力を有する成年者であることを条件とすることが多いです。
ですが「身元引受人」については特に資力等の条件を求めず、成年者であればよいとして同居の親族等がなる場合が多いです。
身元保証人等がいないことのみでの入院拒否はダメ
過去に厚生労働省は「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」という通知を発出しています。
これは入院に際し身元保証人等がいないことのみを理由に医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定する(いわゆる応召義務)ことに抵触するという考えを明確にしたものです。
ですので、身元保証人がいないから入院できないという状況はないとされています。
身元引受人が立てられない身寄りがない人の増加
昔と比べて明らかに増えてきているのが身寄りがない人、身元引受人が立てられない人です。
これを受け最近は独り暮らしの高齢者などを対象に、いわゆる身元保証・身元引受などのサービスを行う民間会社も増加しています。
ですが中には悪徳な会社もあるようで、また行政監督も行き届いていない状況で混沌としています。
そのような中「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定 が困難な人への支援に関するガイドライン」が数年前に作られました。
同ガイドラインは身寄りがない人や家族や親類へ連絡がつかず支援が得られない人において、身元保証人・身元引受人を求めることなく実際に医療現場が直面し得る場面ごとの対応法を提示しています。
このガイドラインでは困ったら最終的には自治体に相談というような流れになっています。
はたして各市町村がどこまで対応してくれるのかは未知数ですし、実際そのガイドラインどおりでスムーズにいくかというとまだまだ整備する箇所は多くあります。
連帯保証人
連帯保証人とは
簡単に言ってしまうと「患者本人が医療費を支払えない場合に代わりに支払う人」となります。
医療機関側からすると入院費用を担保するために必ず立ててもらう必要があります。
保証人と連帯保証人
民法では次の通りに定められています。
保証人
債務者が債務を履行しない時にその履行の責任を負う。
ただし、保証人はまず債務者に請求するよう求めることができる(催告の抗弁)。
また、債務者に弁済するだけの資力があり、執行が容易であると証明した時は債務者の財産から弁済をする(検索の抗弁)。
連帯保証人
保証人と同様に債務者が債務を履行しない時にその履行の責任を負う。
ただし、保証人とは異なり催告の抗弁と検索の抗弁はないため、保証人よりも責任が重い。
これでわかることはつまり
連帯保証人は患者本人が支払えず医療機関がその支払いを求めてきた場合は、有無を言わず支払う義務がある
ということです。
ただの保証人と違い連帯保証人の責任は重いのです。
連帯保証人の実情
一般的に連帯保証人については「患者と独立した生計を営み支払能力を有する成年者であること」を条件としている医療機関が多いです。
しかし実際はそこまでの確認はしていません。
書類上記載されているだけに過ぎず、その人物が支払い能力があるのかどうかなどはわかりません。
そもそも本人確認すらしていません。
ですので当然その弊害が出てきます。
支払い能力のない人が連帯保証人になっていたり、連帯保証人の意味を理解していなかったり、記載が虚偽だったりということです。
その結果未収金が回収できないという事態にも発展しかねません。
連帯保証人以外の選択肢
上記の実情をふまえると、連帯保証人という欄に果たして意味があるのかということにもなってきます。
本来連帯保証人を機能させるためには、連帯保証人の本人確認、支払能力(収入)確認、意思確認が必要になります。
しかしそもそも患者本人に支払能力があれば必要ないことですし、本人では支払いが無理で連帯保証人に連絡をするなんてことはそうそうあるものではありません。
ですので、そのためだけにそこに手間をかけることは現実的ではないのです。
結局書類に記載してもらうだけになってしまいます。
ですが先ほども述べましたが、このままでは未収金が回収できない場合が出てきます。
これに対してはいくつかの対策が考えられており、実際そのように運用している医療機関もあります。
1.入院預り金(入院保証金)の徴収
5~10万程度を入院時に預り退院精算時に相殺する。
入院預り金という選択肢を示すことにより患者の経済的事情や支払い可能性を入院当初に知り、未収金発生の予防策を講じることができリスク管理としての効果がある。
2.クレジットカード番号の登録
クレジットカード番号を入院時に医療機関に提示する。
患者側とすればカード払いなので高額な現金を用意する必要がない。
病院側とすれば未収金対策となる。
3.身元保証代行会社や身元保証代行を実施している社会福祉協議会の利用
4.成年後見人制度の利用
ただし当然ですがこれらはケースバイケースなので、各医療機関の状況と照らし合わせて考えていく必要があります。
まとめ
一般的に入院時には身元引受人、連帯保証人が必要とされています。
ですが身元引受人、連帯保証人の意味をしっかり理解して入院保証書に記載している人は果たしてどれくらいいるでしょうか。
また医療機関側も全員がその必要性、違いを明確に説明できるかといえばそうでもありません。
入院における身元引受人、連帯保証人って患者側からすると非常にわかりにくいはずです。
今回の記事で少しでも理解が進んでくれれば嬉しいです。
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