昨日の記事の最後に
”PXの改善が病院評価を上げる
「PXと職員エンゲージメントが改善されると病院の評価と利益は上昇する」
(When Patient Experience and Employee Engagement Both Improve, Hospitals’ Ratings and Profits Climb
Nell W. BuhlmanThomas H. Lee, MD MAY 08, 2019
https://hbr.org/2019/05/when-patient-experience-and-employee-engagement-both-improve-hospitals-ratings-and-profits-climb)
という調査結果も出ておりPXの重要性というのは高まり続けています。”
と書きました。
ここでそもそも職員エンゲージメントって何よって思われた方もいると思います。
今回はこのエンゲージメントについて解説します。
目次
エンゲージメントって何?【病院と職員エンゲージメントと満足度】
結論
病院職員のエンゲージメントを高める方法を考え実行していくことが大切です。
それがひいては病院評価の向上につながります。
エンゲージメント
職員エンゲージメントとは?
職員エンゲージメントはアメリカで1990年代に生まれた新しい概念である為日本でもいろいろな表現をされていますが一般的には「職員が組織に対して愛着、信頼感を抱いている状態」と定義されています。
もっと分かりやすくいえば
「病院の掲げるビジョンや目標を適切に理解し自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」
のことを指します。
職員満足度との違い
次に職員満足度について説明します。
職員満足度とは職員が病院や現在の仕事、職場の人間関係などにどの程度満足しているかを示す指標です。
あくまで満足度であり自発的に貢献したいという態度・意欲・姿勢とは異なります。
職員満足度
職員が組織や仕事内容、職場の物理的環境や人間関係などにどのくらい満足しているかを示す指標
職員エンゲージメント
職員が病院や職場の同僚などとの関係に価値を感じ積極的に貢献したいと考えている度合い
いうなれば職員満足度は職員の満足度を示しているにすぎません。
それはその人の仕事への意欲とは関係していないのです。
たとえば出来るだけ楽をしてより多くの給料を得ていれば満足度は高いといえますがエンゲージメントが高いとは全くいえないのです。
もちろん職員満足度が高くなることでモチベーションが上がり生産性に影響する可能性はあります。
しかし、先行研究によれば満足度と職務成果との関係は必ずしも明確ではないことが指摘されています。
職員エンゲージメントの必要性
現在の社会は労働人口の減少に伴う採用難、人材獲得競争、働き方改革といったいろんな側面がありそのような状況下での急速な時代の変化に対応していくには生産性の向上というのが必要不可欠です。
そして組織の生産性を高めていく為には職員との信頼関係の構築がとても大切でありすなわち職員エンゲージメントの向上が必要なのです。
職員のエンゲージメントを構成する3要素
エンゲージメントを構成しているものには次の3つがあります。
1.組織の方向性に対する理解
2.帰属意識(組織に対しての帰属意識や誇り、信頼の気持ち)
3.行動意欲(組織の成功の為、求められる以上のことを自発的に行う意欲)
職員のエンゲージメントを促進する10の要因
エンゲージメントを促進する為の要因としては次の10要因があります。
1.仕事内容
2.キャリア開発
3.認識
4.上層部のリーダーシップ能力
5.仕事を効果的に実行するためのリソースの可用性
6.戦略と使命
7.組織文化と共有/コアバリュー
8.効果的なコミュニケーション
9.管理職と従業員との関係
10.同僚との協力関係
PXと職員エンゲージメント
「PXと職員エンゲージメントが改善されると病院の評価と利益は上昇する」
(When Patient Experience and Employee Engagement Both Improve, Hospitals’ Ratings and Profits Climb
Nell W. BuhlmanThomas H. Lee, MD)
データによれば組織が患者経験と職員エンゲージメントの両方の対策を同時に向上させると複合的な影響が生じる可能性があるとしています。
この分析では、縦軸に患者の経験のある特定の尺度、つまり患者が看護師とのコミュニケーションをどのように評価したかに焦点を当てます。
横軸は組織に対する態度、監督者の有効性に対する認識、職務実績、および組織を推薦する可能性を評価する質問に対する従業員の回答の要約を反映した、職員エンゲージメント指標の変化を示しています。
各セル内の数字は患者の全体的な経験評価の平均的な変化を反映しています。
たとえば看護師とのコミュニケーションと従業員の関与の両方で 1%以上のパフォーマンス向上を見た病院では総合病院評価で平均6ポイントのパフォーマンス向上が見られました。
逆に改善が一方または他方だけで見られた場合、全体的な格付けの関連する向上は中程度または負のいずれかであるか、または変化はありませんでした。
つまり職員の関与などある分野で改善が見られたとしても他の分野での低下がそれを相殺する可能性があり結果として全体的な評価が低下することになります。
結論としては病院の評価と利益を上昇させる為にはPXと職員エンゲージメントの両方の改善が不可欠だということです。
まとめ
病院での職員エンゲージメントという概念はまだ認識が低く浸透していません。
ですが今後生産性の向上を目指す上ではこのエンゲージメントというのはとても重要な要素です。
医事課においても職員エンゲージメントを高めていくには何をすべきなのか、その具体的なアクションを考えなければいけない段階に来ていると思います。
エンゲージメントを高める条件の1つに権限委譲があります。
担当者に権限委譲することによってモチベーションがアップし成長マインドが伸び生産性がアップします。
これは図式としては理解出来ますがたやすくは出来ません。
自分でやった方が早い、正確、正しい成果が出るとして責任ある業務を任せられていない人って多いと思います。
しかしそれではその人の成長意欲を掘り起こす努力を怠っているにすぎずマイナスの結果しか生んでいないのです。
医事課の生産性ってどういうことなのかっていうことを個人個人にしっかり理解してもらった上でエンゲージメントを高めていく為の方法を見つけていく必要があります。