病院機能評価というものがあります。
当院も認定病院です。
病院機能評価とは簡単に説明すると「病院がもっと良くなるように、外部の専門家に審査してもらうこと」です。
「そういえばうちも認定病院だったなあ」とか「うちはそんなのとっていないぞ」など、ここは各病院ごとでさまざまです。
そしてここでの最大の疑問点が「認定されることにそれほどのメリットってあるの?」ってところです。
逆に「デメリットってないの?」というのも疑問点でしょう。
この記事では
病院機能評価って本当に必要なの?
という点について解説していきます。
最後まで読めば「病院機能評価」って何なのか?ってことが、きっとわかるはずです。
目次
病院機能評価って必要?【メリット・デメリット】
結論
すべてはとらえ方次第です。
メリットにもデメリットにもなり得ます。
病院機能評価の概要
病院機能評価とは
病院の質改善を図るため、公益財団法人・日本医療機能評価機構が第3者の立場で、全国の病院の運営管理や提供される医療について学術的、中立的、専門的な見地から評価を行うものです。
各病院はその評価結果に基づき更なる改善活動を推進し、病院体制の一層の充実や医療の質の向上に努めていくことになります。
病院機能評価の認定有効期間は5年です。
受審状況
2021年6月現在、全病院数→8273・認定病院→2087 であり全体における認定病院の割合は25.2%となっています。
受審の流れ
申し込み→手続き→院内の準備→書面審査→訪問審査→認定へ
という流れになります。
受審費用
病院の規模、機能によって違ってきますが120万~250万になります。
サーベイヤー
病院機能評価の訪問審査を担当する調査者を「評価調査者」または「サーベイヤー」といいます。
サーベイヤーには「診療管理」「看護管理」「事務管理」の3つの専門領域があります。
病院機能評価受審のメリット・デメリット
メリット
・認定証をもらえて広告することができる
・診療報酬上有利になるものがある(総合入院体制加算・緩和ケア病棟入院料・緩和ケア診療加算)
・業務改善ができる
まず、当院は「日本医療機能評価機構認定病院」ですという外向きに広告ができる点が挙げられます。
これにより自院のブランド性向上がのぞめ、ひいては地域の患者さんに選んでもらえるという点に繋がります。
次に、新たな診療報酬の点数が取れる場合がある、ということが挙げられます。
これはその病院の体制にもよるので、一概にはいえませんが。
最後に、病院機能評価を受けることで病院内の問題点が明らかになる、つまり業務改善ができるということが挙げられます。
外部から評価を受けることで病院の優れている点や劣る点、改善すべき点を客観的に理解することができます。
そして実際に不備の改善につながったり、職員の意識改革につながることもあります。
また病院機能評価のために整備したマニュアルや資料によって、適時調査などの急を要する時でも大慌てで事前準備をするということもなく、余裕を持って準備ができるといった副次的効果ものぞめます。
デメリット
・高額な出費が必要
・診療報酬が増えるなどの収入面でのメリットがない
・審査準備に時間と労力がかかりすぎる
・審査基準が実情に合っていない
・一般的な認知度が低い
・認定病院の広告は集患に役立たない
簡単にまとめると
お金と時間と労力をかけただけの見返りがない
ということです。
「社会的な認知度がほとんどなく、機能評価取得による経営面でのメリットがほとんど感じられない」「受審病院の努力が報われるように診療報酬上の評価を実現させてほしい」という意見は多いです。
当初は評価機構の認定が診療報酬で評価されるという話があり受審病院が急増しました。
ですがそれは期待外れに終わっています。
つまり、メリットで述べた「診療報酬上有利になるものがある」というところが、そうでもないという話です。
たとえば、緩和ケア病棟入院料の施設基準には「がん診療連携の拠点となる病院若しくは財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けている病院又はこれらに準ずる病院であること。」となっています。
しかしこれも機能評価を受けていることが必須ではなく「準ずる」という文言が入っています。
そもそも緩和ケア病棟を持っている医療機関が限られている上で、必須ではない要件ならばもはや推せる要素が見当たりません。
現在の認定病院は全体の3割にも満たないのですが、認定に向けた病院の努力がどこかに報われるという実感を持てなければ、今後新規で受審する病院は増えていかないでしょうし、更新しない病院が増えてくるでしょう。
病院機能評価の本質
この機構は厚生労働省の外廓団体です。
要するに厚生官僚の天下り先です。
先にありましたように、高額な審査料でなおかつ5年ごとの更新となれば巨大な利権になります。
そして病院機能評価の名の通り病院の機能を評価するということですが、これは本来かなり難しいことです。
そこで考え出された手法が、企業評価方法の当てはめです。
つまり書類、マニュアル、委員会・会議などが適切に存在し実施されているかで判定するということ。
そうなると普段使ってもいないマニュアルを見直し、整理することにかなりの時間をとられます。
また現場特有に対応していることでも、マニュアルに沿っていないとして指摘される場合もあります。
指摘してくるところはかなり細かく、まさに重箱の隅をつつくようなという表現がぴったりです。
そして苦労し準備して審査を受けて認定されたところで、何が報われるのかというとそこの判断は難しいのです。
機構側は受審すべき理由の1つに「地域住民の信頼を得るため」ということを言います。
医療の質を上げ病院の機能を向上させるために外部の評価が入っていることは、信頼を得るのための1つの条件であると。
これは機構の言い分で病院からすると「日本医療機能評価機構認定病院」なんて誰も知らねえよって話です。
これはもっと国民への周知、広報が必要であり積極的に宣伝していくべきなんでしょうがそれはされません。
なぜなら機構は目立ちたくないからです。
民主党政権時代に事業仕分けがあり一時鬼の首を取ったように天下り機関を叩いていましたが、そんなことはまっぴらごめんなのでしょう。
世間的に周知されることなく粛々と業務を遂行し、甘い蜜を吸い続けたいのが本心です。
ですので積極的な広報活動なんてするはずもありません。
今後も医療業界の一部の関係者だけが知っている機関であり続けるのでしょう。
これはもう国のシステムの問題なので、我々がとやかく言うとこではありません。
考えるべきは、本質は何か?ということです。
僕個人の意見としては認定取得したいところはとればいいし、意味がないと思うならば取らなけらばいい、ただそれだけのことだと思います。
一概に病院機能評価が良い、悪いという議論はまったくナンセンスです。
各医療機関の方針、思惑があり、それに向かう時にこの認定が必要なら取得を目指せばいいだけのこと。
そしてもし取得を目指すのであればその意向、思いが上層部だけのものではあってはならず、組織全体で共有し一丸となって進んでいかなくてはいけません。
まとめ
病院機能評価の認定病院は全体の3割以下です。
つまり残りの7割は必要なしとの判断や受審するほどの体制が整っていない、手が回らないとの判断で受審はしていないということです。
本文でも述べましたがこれは各病院ごとで判断基準が違ってくるので良い、悪いという議論はできません。
ですが受審していない病院からすると、支出だけあって収入が増えないんじゃメリットなんてないも同然と考えるのもうなずけます。
受審している病院でさえも、そう思っているところは少なくありません。
ですがこれはとらえ方ひとつです。
第三者評価の取組みがいずれ回りまわって質向上と社会評価の獲得に繋がり、診療報酬にもいい影響を及ぼすと見れば受審する意義は十分見出せます。
病院にとって健全な経営体質の構築は必要不可欠ですが、経営を収支の確保と限定的にとらえると第三者評価の効果は十分に活かしきれないかもしれません。
しかし地域において良質な医療を永続して提供するために、第三者評価を活用するのであればその推進力としては十分期待でき活用できるはずです。
また受審準備を契機にチーム医療の促進や他職種間の理解力が深まり連携強化できたり、業務改善のきっかけが生まれる場合だってあります。
どうせその場さえしのげればという心構えでは所詮その程度の成果しか得られませんが、指摘されたことはすべて宝の山、業務改善のための大量のヒントととらえれば、まったく違った成果が得られるはずです。
病院機能評価は善にも悪にもなる。
その鍵は僕たち現場の人間が握っているのです。