僕は医療事務歴23年ですが同じ部署でももっと長い職歴の方もいますし、それこそ日本全国を見渡せば医療事務歴30年、40年の方もいることでしょう。
その人たちの話を聞いたりネットなどを見てみると「昔の医療事務員の方が優秀だった」という意見がわりとあります。
これは本当にそうなのでしょうか?
これを検証していきます。
今回の記事を知ることによって、医療事務の過去と現在の実情を知っておきましょう。
そしてそれを踏まえた上で、あなたのこれからの医療事務員像を作っていきましょう。
目次
昔の医療事務員の方が優秀だったって本当?
結論
昔と今を比較することがナンセンス。
時代の変化に飛び込んでいける人こそが優秀。
医療事務員の昔と今
通称レセコンと呼ばれるレセプトコンピューターが誕生したのは1970年代です。
そこから進化し1980年代より普及し始めます。
また電子カルテが日本で初めて認められたのは1999年のことです。
電子カルテもやっとそこから普及が進み始めていき現在に至っています。
2006年には厚生労働省からレセプトのオンライン請求が原則義務化されるなど普及が進んできました。
このレセプトのオンライン請求化によって一気に業務の効率化が進みました。
それまでは紙レセプトが主体なので多くの作業時間が必要でした。
いわゆるレセプト期間は残業して当たり前というのはこの頃のイメージが強いからです。
普通に22時、23時まで残っていましたから今思うと異常です。
ですが当時はみんなそれが普通だと思っていました。
そして実際業務をこなそうとすると、それぐらいの時間は必要でした。
このブログではたびたびレセプト残業なんて必要ない、レセプト期間でも定時に帰れるはずだという主旨の記事を書いています。
ですがさすがにその当時に戻ったとして、同じように言えるかと聞かれればムリだと答えます。
しかし絶対ムリだとは思いません。
なぜなら当時業務の方法を変えてみる、試してみるということを誰もしていなかったからです。
みんなレセプトは時間がかかるもの、時間をかけるものという認識のもとで仕事をしていました。
そして確かに当時は査定、返戻もほぼ人の目なので何が指摘されてくるかわかりませんでした。
ですのでレセプトについてはまんべんなく知っておく必要がありました。
その結果、歩く点数表などと呼ばれる人たちが非常に重宝された時代でした。
そして経験が浅い者からするとレセプトとはここまで熟知すべきものなのか、これは極めるなんて途方もないな、と感じさせられたものでした。
この認識は今も同じでレセプトを極めるなんて不可能だと思っています。
これは諦めているということではありません。
そうではなくて、2年ごとの診療報酬改定があり、また査定基準の統一化がなされていない中でおいそれと極めるなんて言葉は使えないという意味です。
ここで1つ言っておきたいことがあります。
それは医療事務は進化し続けているということです。
先ほども言ったように、レセプト残業というのはどうしてもその当時のイメージを引きずっています。
しかし、その当時と現在とでは業務内容とそのやり方が変わっています。
どこの医療機関でもオンライン化によって間違いなく業務の効率化はされているはずです。
昔より残業時間は減っているはずです。
それでも今なお残業がかなりあるというところは、明らかに仕事のやり方が間違っています。
そもそもレセプト残業という言葉がいまだに使われていることが間違いです。
医療事務員はレセプト残業という言葉に違和感がありません。
それが日常にある言葉のように使います。
ですがそれは過去の言葉です。
過去の言葉にしないといけないのです。
現在の医療事務員に必要なこと
今の医療事務員に必要なことは「できること」と「できないこと」の区分けです。
違う言い方をすれば「やらなくていいことは捨てる」ということです。
逆に言うとやることには目一杯リソースをつぎこむということです。
昔の医療事務員はレセプトの手書きができて、電卓で総括もしていた、だから昔の方が優秀。
これは考え方が間違っています。
なぜならそれを使う場面が今後一生ないからです。
使わないスキルを持っていても意味はありません。
それを習得するのに使った時間をほかのスキル習得に使った方がよっぽど有意義です。
「いやいやレセプトの手書きができるということは診療報酬を理解していて点数のとり方を知っているということだから、大いに意味があること、レセプトの手書きもできないようじゃダメ」という意見もあります。
ですがこれも考え方が間違っています。
確かに知っている方がいいとは思いますが、知っているのと知らないのとでの差はほとんどありません。
これも先ほどと同じ理由で、知っていてもそれを活かす場面が来ないからです。
コンピューターを100%信じていればいいんだという気はありませんが、診療報酬の点数のとり方、組み立て方を知っていて役立つときっていつなんでしょうか。
そんなことはすべてレセコンがやってくれます。
だったらそこはコンピューターにまかせ、人間でしかできない部分に注力するのが正しい努力なのではないでしょうか。
そして診療報酬の点数や算定条件を覚えているといういわゆる歩く点数表という人の価値も昔ほど高くはありません。
なぜなら、それはすべてググればわかるからです。
調べてわかることを覚えていることのアドバンテージはもうありません。
これも先ほど同様覚えることに使う時間をほかのことにまわすべきです。
まとめ
昔の医療事務員でも優秀な人、そうでない人がいたように、現在も優秀な人、そうでない人はいます。
ここで昔の方が優秀だったという議論そのものがナンセンスです。
時代背景、環境が違うのですから比較のしようがありません、
大事なのは過去を肯定することでも否定することでもなく、現在をしっかり見極め未来を見すえることです。
医療事務員の何をもって優秀と定義するのかは、その判断基準しだいなので一概には言えません。
ですが、少なくとも変化を受け入れ対応しようとする人にはその素養はあります。
大事なのは前に進むことです。
失敗しても挫折してもそれでも進むことです。
今まで現状維持のマインドでこの人できるなって思った人には会ったことはありません。
できるなって思わせる人ってやっぱりどんどん挑戦する人です。
医療事務はこれから先受け身の人はどんどんつらくなっていきます。
なぜなら外側から変化せざるをえない圧力がかかってくるからです。
社会保障、医療制度が変わる→医療機関が変わる→医事課が変わる→医療事務員が変わるという流れは止めることはできません。
ですので変わるというか変わらざるをえなくなります。
これは遅かれ早かれやって来ます。
だったらそこまで待って強制的に変えられるのか、自ら変わっていくのかのどちらかです。
そして人が1番仕事でストレスを感じるのが自分で仕事をコントロールできない場合、つまりやらされるときです。
だったらやらされるときまで待つより、自分でどんどんやっていった方がいいに決まってます。
時代の変化に飛び込んでいく気持ちを持っていた方が絶対得なのです。
ぜひ、ひるむことなく飛び込める医療事務員を目指してください。