医療情報システム管理者という職種があります。院内SEともいいます。
医療情報システム保守管理業務やそれに付随する様々な業務を行います。
今回はその中でも電子カルテ運用にフォーカスしてそのあり方を見ていきたいと思います。
目次
電子カルテと医療情報システムと医療事務
結論
電子カルテを最大限に活かす為には現場のニーズとシステム開発の両者を理解し、その間に立つ通訳の役割を担える人材が必要です。
医療情報システム管理者
一般的に医療情報システム管理者の仕事は以下のようなものがあります。
・電子カルテシステムの保守、管理
・サーバー管理
・院内からの問い合わせやトラブルに対するヘルプデスク業務
・パソコンや電子機器のメンテナンス
・セキュリティ管理
・日時、月次処理、バックアップなどのオペレーション
・障害対応 など
その業務範囲、定義は病院ごとで様々だと思いますがIT、パソコン関係ならなんでも全般請け負う病院内のシステム担当となっているところが多いと思います。
とはいえ電子カルテなどの巨大なシステムは外部ベンダーに委託して開発されますのでそのようなシステム開発的な業務はほとんどありません。
業務としては既存のシステムの利用方法を医師や看護師などに教えるヘルプデスク的業務や医師、看護師が利用するPCなどの電子機器や電子カルテを印刷するプリンターが壊れた、
など何かしらのトラブルが発生した際に呼び出されて対応に当たるカスタマーサポート的な業務がメインとなってきます。
そしてもう1つ重要な業務というのが外部ベンダーとの折衝、調整というものです。
電子カルテ
電子カルテが使いにくい、要望を出しているのに一向に改善されない。
これは現場からよく聞く意見です。
これはベンダー側が十分に対応出来ていないという部分も確かにあります。
しかし反面病院側がシステムを十分に理解出来ていないという面も多分にあります。
これはどちらかが一方的に悪いという話ではなくお互いが理解しあえていない結果なのです。
もっと突っ込んで言うのならば理解しあえていないというよりも理解出来ないし理解しようとしていないということなのだと思います。
ベンダーはITのプロ、病院は医療のプロです。
しかし結局のところ双方の話は自分のテリトリー内での意見であり提案なのです。
これは特に病院側が顕著です。
システム開発の仕組みを知らない病院側は「これぐらい出来るでしょ」「何の為に高いお金を払っていると思っているの」という想いが常にあります。
ベンターってぼったくっているよねと思っている人もいます。
これらは全てシステム開発がどう成り立っていて、要件定義がどのように行われていてというようなことを一切知らないことから出てきてしまう意見です。
これは現場の個人単位で考えれば当たり前といえば当たり前です。
そんな部分は知っておく必要はない、それはシステム担当者がやるべきことと認識しているからです。
そもそもその認識が間違っている訳で質の高いシステムにしていこうとするのならば病院側も一緒になってシステムを作っていくという意識がないといけません。
であるならば各個人、各部署の意見を集約する必要があります。
特に医師は日頃システムを使用していて気づいた点をその都度出してきますのでそれが一向に改善されなければますますベンダーへの不信感だけが積もるという結果になります。
ここで必要なのは病院側で現場をコントロールしベンダーともコミュニケーションが出来る担当者です。
そしてその役割が医療情報システム管理者とされている訳です。
通訳者
上記の話でいくと医療情報システム管理者に求められる能力はとんでもなく高いものとなります。
システム開発のことを理解し、現場のニーズを理解し、なおかつその意見を取りまとめる能力、
そしてそのことについてベンダーと折衝、調整する能力。
それらを兼ね備えた人材なんてそうそういません。
ここで1番のネックとなるのが現場のニーズの理解です。
医師の要望、看護師の要望、各部門の要望、それぞれが全く違う分野でありまたそれらはかなり幅広いです。
この部分はいくらでも深堀り出来てしまうような専門分野ですので実際その人が言っている意味をきちんと理解出来るのはその関係者だけになるだろうと思います。
ですがそれを理解しシステムに落とし込めるのかどうか、どのような運用にすべきか、ということを考えられ伝えられる人材が必要なのです。
そしてそこまでくると請求の知識、診療報酬制度の知識なども必要になる場合があります。
病院のシステムは全ての分野が複合的に機能して成り立っていますのでより高いレベルのシステムを目指そうとすればそれこそまんべんなく全ての分野を網羅し知識を身につけておくに越したことはありません。
しかし実際そんなスーパー院内SEの人はそうそういないはずです。
いうなれば医療情報技師(情報処理技術、医療情報システム、医学・医療)的知識、診療情報管理士的知識、医療事務的知識を持っていて、院内調整、ベンダー折衝が出来る人材です。
ですがこれらのどこかの部分には秀でている、特化している、得意であるという人は多いと思います。
であるならば残りの部分を学び知識として取り入れることでそれぞれの分野の橋渡しが出来る人材へとなれます。
いうなれば他職種、他業種間の想いを伝えられる通訳者という役割です。
まとめ
現在病院で必要とされている人材がこの通訳者だと思います。
それも有能な通訳者です。
多くの場合電子カルテ運用はベンダー主導もしくはベンダー任せで導入プロジェクトが進められている為、
構築後のシステムを活用した新しい運用が実際の現場運用に合っていないということが多々あります。
今後電子カルテデータを活かす為には診療、医事、経営、現場そしてシステムのことを理解、把握した上でそれぞれをコミュニケートさせられる有能な通訳者が必要です。
通訳者へのアプローチはいろいろあります。
現在院内SEの人が医学も診療情報も保険請求も学ぶのが1番近道だとは思いますが、医療事務員がシステムの知識を身につけていくのも1つの道です。
そうすればゆくゆくは院内SEに転身なんてことも可能だとは思います。
そしてそれは保険請求、診療報酬制度が分かっているシステム管理者となるので大きなアドバンテージになると思います。
興味がある人は目指してもいいのではないでしょうか。