次期診療報酬改定の第2ラウンドの議論がいよいよ始まろうとしています。
それに関係するところではいろいろ動きが出てきています。
健康保険組合連合会(健保連)は先日、健保組合のレセプトデータを基にした「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究IV」を公表し2020年度診療報酬改定に向けた5つの政策提言を発表しました。
その中の1つにリフィル処方の導入というのがあります。
今回はこのリフィル処方にフォーカスしその中身を確認していくことにします。
目次
リフィル処方箋って何?【2020診療報酬改定】
結論
徐々にリフィル処方箋導入は現実味を帯びてきています。
リフィル処方箋
リフィル処方箋とは
ウィキペディア(Wikipedia)には「一定の定められた期間内に反復使用できる処方箋のことである。
リフィル(refill)は補給、詰め替え[差し替え]品、〔飲食物の〕おかわり、2杯目 の意味を持つ英語」とあります。
つまり患者が医師の再診を受けることなく処方箋1枚で繰り返し薬局で薬を受け取ることが出来る処方箋を指します。
たとえばある患者さんが「いつも飲んでいる同じ薬がほしいのですが」と調剤薬局を訪ねても薬局は「医師の診察を受けて処方箋をもらってきてもらわないと処方出来ません」となります。
そして薬希望というだけでも何時間か並んで待ち処方箋を出してもらってやっと処方してもらえるようになります。
これは法律で決まっていることなので従うしかないことなのですが実際歯がゆく感じている薬剤師の人も多いと思います。
これを解決する手段こそがリフィル処方箋という訳です。
リフィル処方箋はアメリカ、カナダ、イギリス、フランスなど多くの先進国では既に導入されています。
たとえばアメリカでは患者さんは薬局にリフィル処方箋を預け必要なときに薬局に調剤を依頼するという流れになっています。
メリット・デメリット
メリットとしては
・処方箋発行回数を削減でき、医師の業務を減らすことが出来る。
・診療にかかる時間や医療費(診察・処方代)を軽減でき、患者さんの負担を減らすことが出来る。
・国として医療費の削減につながる。
・医師は治療が必要な患者に専念でき負担が軽減される。
・薬剤師は医師から患者さんの経過観察が求められ専門知識をより発揮する機会が増える。
デメリットとしては
・漫然と処方が継続されてしまう恐れがある。
・医師と薬剤師のダブルチェックだったものが薬剤師のチェックになる為患者さんの状態の些細な変化に気づきにくくなりその結果健康被害が発生する可能性が高まる。
・医薬品の転売に悪用される恐れがある。
・薬剤師の技量によって再度受診するタイミングが変わってくる。
などがあります。
政策提言
健保連は次のような提言をしています。
・医師は、病状が安定し、繰り返し同じ処方を受けることが見込まれる患者に対し、処方内容および繰り返せる回数、有効期限等を決定し、かかりつけ薬剤師に限定してリフィル処方を行う。
・かかりつけ薬剤師が、処方医との情報連携を前提に、リフィル処方の患者に対し服薬期間中にわたって患者の服薬管理を行い、必要に応じて患者に医師への受診勧奨を行う。
・なお、残薬対策として、リフィル処方で規定された回数の調剤を行うと残薬が発生する場合、有効期限を超えた日数分の調剤はできない制度とする。
なおリフィル導入による医療費適正化効果は年間362億円が見込まれるとしています。
まとめ
リフィル処方箋の話は今までもありました。
過去にも経済財政諮問会議では診療報酬上の評価を調剤重視から服薬管理、指導重視へのシフトを具体的に検討すべきとし、リフィル処方箋の検討の提言が出された時もありました。
しかしここまでなかなか進んでいないことも事実で課題に対する懸念があることも確かです。
まず挙げられる課題としては薬剤師、薬局の役割、責任の拡大があります。
薬剤師の技量によって大きく異なる結果が出てしまいかねない状況が考えられます。
またいかに医師と薬剤師が連携をとっていくかというところもポイントとなってきます。
どちらにせよ優秀な薬剤師の育成が必要不可欠となってきます。
このリフィル処方箋の導入という話は単なる医師、患者の負担軽減というレベルのものではなく薬剤師のあり方そのものを問うてくる問題ですのでなかなか進んでこないのも当然ではあるのです。
しかし機は熟しつつあります。
医療費削減の大命題に加え、働き方改革の追い風が吹いている現在において医療費削減、医師のタスクシフティングの両方を満たせるリフィル処方箋は推進への議論が加速していってもおかしくありません。
全面的に導入されなくても最初は特定の患者群に絞って始める可能性もないとはいえません。
今後の議論の行方に注目です。