2020年診療報酬改定に向けて中医協ではいよいよ第2ラウンドの議論が始まっています。
9月18日には中医協総会が開催され・リハビリテーション・医薬品の効率的かつ有効・安全な使用の2つをテーマとし議論がされました。
そのうち「医薬品の効率的かつ有効・安全な使用」については
①重複投薬の適正化
②入院時のポリファーマシー対策
③バイオ後続品の推進の3点が論点として提示さえました。
今回はバイオ後続品の推進について見ていきます。
ごまお
目次
バイオシミラーって何?【バイオ後続品】
結論
まずはバイオシミラーの認知度アップが必要です。
バイオ医薬品とバイオシミラー
そもそもバイオ後続品の推進についてと言われても何のことかよく分からない人のほうが多いと思います。
ですのでまずは言葉を覚え理解するところからはじめます。
キーワードはバイオ医薬品とバイオシミラー(バイオ後続品)です。
バイオ医薬品
バイオ医薬品とは?
バイオ医薬品とは遺伝子組み換え技術を応用し動物または微生物が持つタンパク質(ホルモン、酵素、抗体等)を作る力を利用して製造される医薬品のことをいいます。
ひとことで言うと「生物の力を利用してつくる薬」ということです。
従来の薬は薬品を化学反応させてつくる化学合成医薬品です。
それとは全く別の方法でつくられるのがバイオ医薬品です。
[pdf-embedder url=”https://ijikano.com/wp-content/uploads/2019/09/PDF-ファイル1.pdf” title=”PDF ファイル1″]そしてここでいう「生物の力」とはタンパク質をつくる力のことです。
ヒトのからだの15%~20%はタンパク質でできています。
タンパク質の働き
・臓器、筋肉の材料
・体中に酸素を運ぶヘモグロビン
・消化や血液の凝固・溶解などに不可欠な酵素
・ウイルスなどからからだを守る抗体
などはすべてタンパク質です。
バイオ医薬品=タンパク質でできた薬であり、生物の力を使ってつくったタンパク質(ホルモン、酵素、抗体など)を有効成分(病気に対して効果がある成分)とする薬ということです。
なぜ生物の力を利用するのか?
タンパク質はとても複雑な構造のため薬品を化学反応させてつくることが非常に難しいためです。
バイオ医薬品のデメリット
生物の力を利用して複雑な構造のタンパク質をつくることは開発、製造、品質管理が難しく高度な技術や大規模な設備そして数多くの試験が必要なため、どうしても値段が高くなってしまいます。
バイオ医薬品への期待
今まで治療が難しかった病気への効果が期待されます
<バイオ医薬品が使われている病気>
がん・糖尿病・関節リウマチ・肝炎・腎性貧血・血友病・クローン病など
バイオ医薬品の働き
①足りないタンパク質を補う
【対象の病気】糖尿病、腎性貧血、血友病など
②病気の原因を抑える
【対象の病気】がん、関節リウマチなど
バイオシミラー
バイオシミラーとは?
バイオシミラーはバイオ医薬品の本質であるアミノ酸配列は先行品と同一ですが細胞株や培養工程は製造業者により異なることから先行品と完全には一致しないものの医薬品としての同等性・同質性が担保されているものとされています。
シミラーとは「類似した、同様の、同類の」という意味です。
ですのでバイオシミラーは意味的には類似したバイオ医薬品ということになりますが、欧米では「almost the same(ほとんど同じ)」という意味で使われており同じ種類・性質であることを意味します。
バイオシミラーは日本ではバイオ後続品と呼ばれています。
つまりバイオ医薬品のジェネリックということで先行バイオ医薬品と同等・同質の品質、安全性、有効性をもつ医薬品ということです。
ジェネリック医薬品とバイオシミラー
ジェネリック医薬品
特許が切れた薬(先発医薬品)と「同じ有効成分」が「同じ量」含まれています
バイオシミラー
特許がきれたバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)と「ほぼ同じ有効成分」が「同じ量」含まれています
バイオシミラーは製造の特性上、有効成分が全く同じものはつくれません。
先発品とほぼ同じ「同等・同質」の医薬品という扱いです。
この同等・同質性を確認する臨床試験などをへて販売が承認されますが「同等性に懸念がある」などの理由で使用を促進することへの慎重論もあります。
まだまだ認知度不足
ジェネリック医薬品やバイオシミラーの活用は患者さん本人の経済的負担の軽減のみならず日本の医療費の抑制にもつながります。
国としてはどんどん促進していきたいところです。
ジェネリック医薬品についてはもう一般的に認知されているレベルかなとは思いますがバイオシミラーについてはまだ全然認知されていません。
まだ大多数の一般の人はバイオシミラーの存在さえ知りません。
ですのでバイオ後続品の推進をといってもまだ議論する土壌となっていない現状です。
今回厚労省側からは「バイオ後続品を知らない患者にバイオ後続品を推奨する際の情報提供」「新たにバイオ後続品を導入する、または使用中のバイオ医薬品をバイオ後続品に切り替える場合の患者への説明や症状の観察」などの評価を検討してはどうかとの論点の提示がありました。
しかしまずすべきはそのための土壌づくり、環境整備であり診療報酬評価には時期尚早との意見もあるようです。
バイオシミラーに関する医療従事者や患者・国民向けの普及啓発活動がまずは先決のようです。
まとめ
バイオシミラーの普及のさまたげの1つの要因が高額療養費制度と公費助成制度といわれています。
バイオ医薬品には高額なものが多いですが高額なゆえ高額療養費該当となります。
そうなると高額な先行バイオ医薬品を使おうが安いバイオシミラーを使おうがほとんど自己負担限度額は変わりません。
ですので積極的にバイオシミラーを使っていこうという動機づけを抑制する効果をもたらしてしまっているのです。
患者の立場からすると非常に優れた医療制度ではありますがそれがかえってブレーキとなっている側面もあります。
薬剤費の削減はこの先も常に向き合わなければならない問題です。
ジェネリック医薬品とバイオシミラーはそこを解決していく大きな柱の1つです。
診療報酬としてはそこをフォローするための施策をこの先もいろいろ打ってくるとは思いますが、バイオシミラーに関してはまだその入口手前といったところなのでしょう。
まずは一般の人に知ってもらう、そのための情報発信、情報提供の環境整備を進める。
バイオシミラーはこれから徐々にではありますが認知されていくことになるでしょう。