AIが支配?10年後に医療事務の仕事は残っているの?

10年後に消える職業に医療事務が入っていることは、皆さんご存じでしょう。

AIによって今ある仕事がなくなるというのは最近よく聞く話です。

事務作業のルーチン業務というのは、AIが最も得意とするところ。

だとしたら医療事務って一番危ないんじゃないのか?

そう思う人がいても不思議ではありません。

「医療事務の将来性ってどうなの」

「今から医療事務の世界に飛び込んでも大丈夫かしら」

そんな不安をあなたは持っていませんか?

はたして10年後に医療事務の仕事は残っているのかどうか。

その点を検証してみましょう。

医療事務の将来性を知りたい人にとっては、きっと役立つ記事になるはずです。

AIが支配?10年後に医療事務の仕事は残っているの?

 

結論

 

医療事務の仕事は残り続けますが、求められるスキルが変わっていきます。

 

AI時代に必要なスキルは対人関係力と創造力。

 

医療事務でいえば「ホスピタリティ&コミュニケーション」と「マネジメント」の力です。

医療事務がなくなる?

2015年に株式会社野村総合研究所と英オックスフォード大学のマイケルA.オズボーン准教授及びカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究により、国内601種類の職業について10年後~20年後、今ある職業の約49%が人工知能やロボット等で代替することが可能であるとの推計結果を発表しました。

代替可能性の高い職業の理由としては「必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加えデータ分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については人工知能等で代替できる可能性が高い」としています。

そしてその職業の1つに医療事務が含まれています。

はたしてそれは当たっているのでしょうか?

AI

AIとは?

今回考察するにあたって1冊の本を参考にしました。

新井紀子著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」です。

著者の新井紀子氏は数学者で国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授。

そしてAI「東ロボくん」の研究開発プロジェクトディレクターです。

東ロボくんとはロボットは東大に入れるかというプロジェクトにおいて研究、開発が進められた人工知能のことです。

ですのでこの本はまさに現在の人工知能研究の最前線にいる人が考え結論づけた内容となっています。

私たちはAIに対して何か漠然としたイメージを持っていてそれはかなり偏った見方、思い込みをしている可能性があります。

そういったバイアスを排除してフラットに見るためにはその道の専門家が研究結果から導き出した結論を知ることが最も有益です。

そういった意味でこの本を読む価値は非常に高いと思います。

AIとは何かということの理解がきっと深まることでしょう。

前提知識

今回の内容はまさに理系の人が得意とし理解しやすい分野であると思いますが、バリバリ文系の私からすると言葉の意味さえもはっきりわかっていません。

ですので最初に言葉の説明をしておきます。

シンギュラリティ

 

技術的特異点、またはシンギュラリティとは未来学上の概念であり人工知能自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点の事である。

 

(ウィキペディア引用)

AIが人間を超える、AIが神になる、いうなればシンギュラリティという言葉は映画「ターミネーター」や「マトリックス」で描かれていた未来のようなものとだといえます。

ごまお

実際シンギュラリティの定義は難しい。解釈は人によってさまざま。

機械学習

 

明示的な指示を用いることなくその代わりにパターンと推論に依存して特定の課題を効率的に実行するためにコンピュータシステムが使用するアルゴリズムおよび統計モデルの科学研究である。

 

(ウィキペディア引用)

 

ディープラーニング

 

ディープラーニングまたは深層学習とは多層のニューラルネットワークによる機械学習手法である。

 

(ウィキペディア引用)

ディープラーニング(深層学習)とは人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつです。

AIの急速な発展を支える技術でありその進歩によりさまざまな分野への実用化が進んでいます。

近年開発の進んでいる自動運転車においてもカギとなっているのはディープラーニングです。

ディープラーニングの技術は人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模したシステムであるニューラルネットワークがベースになっています。

ニューラルネットワークを多層にして用いることでデータに含まれる特徴を段階的により深く学習することが可能になります。

多層構造のニューラルネットワークに大量の画像、テキスト、音声データなどを入力することでコンピュータのモデルはデータに含まれる特徴を各層で自動的に学習していきます。

この構造と学習の手法がディープラーニング特有でありこれによりディープラーニングのモデルは極めて高い精度を誇り時には人間の認識精度を超えることもあります。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」

この本で著者は今ちまたで言われているAIが神になる、AIが人類を滅ぼす、AIが自らの力で人間の知能を超える能力を持つシンギュラリティが来るという説はすべて誤りであるとしています。

著者はこう述べています。

論理、確率、統計。これが4000年以上の数学の歴史で発見された数学の言葉のすべてです。

そして、それが、科学が使える言葉のすべてです。

次世代スパコンや量子コンピューターが開発されようとも、非ノイマン型と言おうとも、コンピューターが使えるのは、この3つの言葉だけです。

真の意味でのAIとは、人間と同じような知能を持ったAIのことでした。ただし、AIは計算機ですから、数式、つまり数学の言葉に置き換えることのできないことは計算できません。

では、私たちの知能の営みは、すべて論理と確率、統計に置き換えることができるでしょうか。

残念ですが、そうはならないでしょう。

つまり

「今のところシンギュラリティは来ない。

なぜならコンピュータは四則演算しかできないから。

人間の認識していることすべてを計算可能な数式に置き換えることは不可能。

数学には論理、統計、確率があるが現在のAIで論理的に読んだり、考えたりはできない。」

ということです。

AIが得意なこと・苦手なこと

AIが得意なこと

 

・記憶すること

 

・データをロジカルに分析すること

 

・単純なルーティンワークをやり続けること

 

・膨大なデータに基づく判断

 

・単純な仕事・作業

 

AIが苦手なこと

 

・クリエイティブな作業

 

・0から1を創造すること

 

・人の気持ちをくみとること

役割分担

AIがある将来の仕事像を考えるとき大事なことは支配とか代替という見方ではなくて共存のしかたです。

それぞれが得意な分野を担当する役割分担という考え方です。

基本的にマニュアルになるようなことはAIやロボットに任せてマニュアルから外れるようなことや個別の対応が必要なことは人間が担当する。

知識、ルールを適用していくような業務はすべてAIにまかせる。

そのようなすみ分けが必要になります。

医療事務とAI

ここまでをふまえた上で10年後に残っている仕事、なくなる仕事、新たに生まれている仕事を予測しました。

残っている仕事

①ホスピタリティ&コミュニケーション

 

先に挙げた野村総研のレポートでは「他者との協調や、他者理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は人工知能での代替は難しい傾向がある」とされています。

 

医療事務でいえば受付や電話での対応や説明、クレーム対応などがこれにあたります。

 

病院の受付が他のサービス業と違っている点は相手が患者であるということです。

 

そこには相手の気持ちをくみとることが必ず求められます。

 

そして丁寧なコミュニケーションや込み入った説明が必要な業務に関してはやはり人間が対応しないとならないでしょう。

 

②マネジメント

 

AIの事務処理能力は圧倒的でそこに人間が入る余地はありませんが、そこから出してきたアウトプットをどう料理するかは人間の仕事です。

 

経営分析により重きが置かれ経営戦略や事業戦略を描ける人材がAIと共存できる人材となります。

なくなる仕事

①受付
②計算
③会計
④レセプト業務

 

自動受付機が普及したり保険証にICチップが埋め込まれたりすれば受付や保険証を登録する仕事はなくなります。

 

さらに自動精算機の普及で会計業務もなくなります。

 

またレセプト業務はコンピュータチェックが進んでいけばもう人がチェックするという必要もなくなります。

 

そしてこれらのことは実際もうすでに進みつつあります。

 

ここに関してはあと10年もかからないかもしれません。

 

ここで特に強調しておきたいのが、レセプトチェックについてです。

 

いまだにこの業務が医療事務の花形、主となる業務と思っている人がいます。

 

主となる業務であることは間違いありません。

 

ですが、レセプト業務に能力が特化しすぎている人、またはレセプト業務しかできない人は注意しておくべきです。

 

間違いなくレセプト業務はAIにとって代わられます。

 

それが5年後か10年後かはわかりません。

 

ですが未来永劫残る業務ではありません。

 

これは逆にいいことです。

 

レセプト残業というのがなくなるのですから。

 

医療事務=レセプトというイメージがいまだに強いですが、未来ではそのイメージもなくなっているかもしれません。

新たに生まれている仕事

①AIティーチャー

 

膨大なデータを記憶して処理することがAIが得意とするところですが、その能力を発揮するためにはデータやロジックを人間が教え込む必要があります。

 

業務上のノウハウや効率的に進めるための工夫、考え方などさまざまな情報を覚えさせることでAIの能力はどんどん高まっていきます。

 

そのようなデータや情報を教える役割を担う人が必要となります。

 

たとえばレセプト請求に関しては査定の傾向、特性、最近のトレンドなどを教える。

 

コメントについても過去の膨大なデータに基づき適正な内容を書けるように教えるなんてことを行える人が必要となります。

 

 

②話し相手

 

会話の相手をする仕事が新たな仕事として生まれるとのことです。

 

その根拠は超高齢化とAIの普及です。

 

高齢化が進みAIが普及することによって人と人とのふれあいの機会が減っていく可能性があります。

 

心身の不調で病院へ来ているのに誰も話し相手がいない、ロボットしか対応してくれない、ではより不調になってもおかしくありません。

 

そこには必ず人と人とのコミュニケーションがないといけないのです。

 

だとすればそのような役割自体が仕事となっても不思議ではありません。

まとめ

 

以上を簡潔にまとめます。

・AIの普及によって単純な事務処理スキルは必要のないものとして淘汰されます。

 

・AIと人間との役割分担が大事です。

 

・AI時代に必要なスキルは対人関係力と創造力。

 

・思考する力、創造する力、判断する力が重要。

 

・医療事務という職業はなくなる。(医療事務という呼び名は残ってもその中身は今とは異なる)

 

・一般的なスペシャリストでは将来的につらくなる。(超スペシャリストを目指すか、ゼネラリストを目指すか)

端的に結論を言うと

医療事務の仕事は残り続けるが、その働き方は今とは違ったものになる

ということです。

さらに言うなら、付加価値のない医療事務員はいらなくなる、ということ。

作業を仕事だと思っている人にとっては、かなり厳しい未来となるはずです。

今はまだ作業をするマンパワーが必要なので、あなたは必要とされているかもしれない。

でもそんなマンパワーがもう必要ないとなったとき、それでもあなたは必要とされる医療事務員でいられるか?ということです。

ホスピタリティ、コミュニケーション、マネジメント。

これらのスキルを高めておかなければ、将来においては医療事務員ではいられなくなるということ。

そこを意識しながら日々の業務に邁進しましょう !

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