当院には回復期リハビリテーション病棟があります。この病棟は急性期での治療後症状が安定しはじめた時期(回復期)において集中的なリハビリテーションを実施することで低下した能力を再び獲得する為の病棟となります。
元来回復期リハビリテーション入院料については専従医師やリハビリスタッフの配置など施設基準を軸にした評価が行われてきました。
それが2016年度改定ではアウトカム評価が導入されました。これは6単位以上のリハビリテーションを抑制する為に導入され2年間に渡り運用されましたが結果として単位数の抑制までには寄与しませんでした。
しかし、在棟日数の短縮の効果が認められた為、2018年度改定では更なる在棟日数短縮も狙いアウトカム評価の厳格化を推し進めてきました。
リハビリテーションについては今後益々質が問われてくることになります。今回はその部分のいわゆるアウトカム評価について見ていくことにします。
目次
アウトカム評価とは?
アウトカムとは結果、成果という意味で、リハビリテーション病棟での怪我や病気による機能障害においての改善度や回復率を指標で評価するしくみを言います。
リハビリテーション実績指数
アウトカム評価の指標となるのがリハビリ実績指数と呼ばれるものです。
2018年度改定ではこのADLの維持、改善度合いを評価するリハビリテーション実績指数を診療実績を評価する指標として使用し、従来の3区分の入院料を6区分に再編しました。
より高い入院料を算定する為には設定されているリハビリ実績指数をクリアしなくてはならなくなりました。
実績指数の計算方法
実績指数は次の計算式にて求められます
「各患者の在棟中のADLスコアの伸びの総和」を「各患者の(入棟から退棟までの日数)/(疾患毎の回復期リハビリテーション病棟入院料の算定上限日数)の総和」で割ったもの
※ADLスコアの評価についてはFIMの運動項目を用いる
FIMとは
FIMとは、「Functional Independence Measure」略語で、1983年にGrangerらによって開発されたADL評価法です。FIMを日本語でいうと「機能的自立度評価法」といいます。
FIMの評価項目は、運動項目と認知項目の計18項目で、各項目を1点7点の7段階で評価します。
FIMの評価項目は、セルフケア・排泄コントロール・移乗・移動を含めた運動項目、コミュニケーション・社会的認知を含めた認知項目の計18項目から構成されています。この中から実際の計算では運動項目の13項目を使用します。
実績指数を上げるポイント
計算式が長い文章で分かりにくいのですが、分かりやすくざっくり言えば分子の値を大きくするか分母の値を小さくすることで指数は上がります。
実際にはどうすればいいか?
分子を大きくするとなればFIM利得(入院時から退院時にADLを評価するFIM指数がどれだけ上がった)を増やす、ということになります。
よく言われているのは術後や発症後の早期に受け入れ、介入です。早く介入すれば機能は改善しやすいと言われていて実際その傾向は見られます。
これは回復期リハビリテーション病棟協会や様々な学会、厚労省等でそれを示唆する資料が多く出ています。
分子を小さくするには在棟日数の短縮となります。
国の施策としては患者を在宅に誘導するということが診療報酬全体での大前提であり、リハビリテーションについては科学的に適切に実施されれば患者の日常生活機能が回復するというエビデンスに基づいています。
そうであるならば質の高いリハビリをより短期間で行えることが入院料の評価を上げる方法であるということは理にかなってはいます。
チェック項目
チェックする点としては
①急性期病院との連携がスムーズに行われ、リハビリテーション効果が上がりやすい早期に入棟しているか。
②集中的なリハビリテーションが提供されているか。
③退院調整がスムーズに行われ、早期退院が図られているか。
④在宅復帰の場合、適切な在宅サービス提供がなされているのか。
などがあります。
特に実績指数を高めようとしていくと病床回転率が高まり病床稼働率がどうしても落ちてきます。
それを避けるには入退院支援の強化が必須となります。入棟患者をいかに確保するか、いかにベッドコントロールを行うかが重要です。
まとめ
近頃急性期病院ではケアが充実し早期に適切なリハビリが行われることなどにより重症度の高い患者が少なくなってきたと指摘されてもいます。
昨年の2018年改定を契機に回復期リハを行う病院の淘汰がもう既に始まっています。まさにリハビリテーションの質が大きく問われています。
リハビリ実績指数のベースとなるFIM利得は摂食(口からの食事)や排泄(トイレ動作)の自立によって高くなります(リハビリ実績指数が上昇)。
逆に歩行は自立しているがオムツをあてているという場合はあまり高くなりません。
これは日常生活に戻れるよう摂食や排泄のリハビリを推し進めるべきとの国からの強いメッセージです。
次期診療報酬改定では診療密度、アウトカムが今以上に重要視されてきます。
また回リハ病棟でのリハビリテーションが包括となるのではとも言われています。
そうなるとまさに回リハサバイバルなのです。
当院も生き残れるのかどうか、常に危機感をもって進んでいます。