【もっともっと活用して!】医師事務作業補助者は費用ではなく原価です

医師事務作業補助者を配置することが、医師の負担軽減策としての効果が特に大きい

さまざまな調査でこのような報告がなされています。

2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されます。

そこに向かって診療報酬ではタスクシェアリング・タスクシフティングの推進を行っています。

前回(2020年)改定に引き続き次期(2022年)改定においても、この部分は評価対象となるところです。

よって「医師事務作業補助体制加算」の点数アップも行われる見込みです。

それほど医師の働き方改革には、医師事務作業補助者の配置が有効だと国は見ているのです。

しかし現実には配置人数が少なかったり、そもそも配置していないという医療機関もあります。

そこには加算を取りに行くよりも採用するスタッフの人件費の方が高くなる、という費用面の理由で断念する医療機関が少なくありません。

しかしちょっと待ってほしいのです。

医師事務作業補助者の人件費は決して費用ではないのです。

それは「費用」ではなく「原価」だということ。

今回はそこにフォーカスします。

医師事務作業補助者はもっともっと活用されるべき。

そのためにこの職種をどう捉えるのか?

最後まで読んでもらうことで、その捉え方のヒントにきっとなれるはずです。

【もっともっと活用して!】医師事務作業補助者は費用ではなく原価です

 

結論

 

医師事務作業補助者の人件費は「費用」ではなく「原価」です

医師事務作業補助者の人件費

人件費と医業収益

原価と費用(コスト)

一般的にまず原価とは売上原価、製造原価などがあり直接のコストを指し商品の仕入れ値等になります。

一方コストとは直接、間接に関係なく必要となる費用のことを指します。

病院においては次のように定義しておきます。

原価 → 病院の労働生産性を上げるために必須であるもの

 

費用 → 病院の経営効率化のために削減しても構わないものを含む

ですので結論の「医師事務作業補助者の人件費は費用ではなく原価」とは言い換えると、「医師事務作業補助者の人件費は病院の労働生産性を上げるために必須であるもの」ということです。

よって見方を変えると医師事務作業補助者を活用しないということは、病院の生産性を上げるひとつの手段を失っているともいえるのです。

労働集約型産業

病院は労働集約型産業です。

労働集約型産業とは、事業活動を営む上で労働力に対する依存度が高い産業のことをいいます。

一般的に従業員を数多く抱えるため、賃金コストの割合が高くなります。

一方、資本への依存度が高い産業は資本集約型産業といいます。

ですので病院経営の視点で見ると病院とは「ひと」が「もの」を使ってサービスを提供する労働集約型ビジネスなのです。

人件費率

労働集約型の特徴は人件費率が高いことにあります。

人件費率とは医業収益に占める人件費の割合を指します。

一般病院の人件費率は平均で50~55%です。

ケアミックス病院、療養病院、精神病院などはもっと高くなり55~60%になります。

ここで大切なことは

労働集約型産業の病院が業績を回復しようとする場合は、原価部門の人を増やさないといけない

ということです。

これは一般企業の経営戦略と真逆のやり方になります。

一般企業が業績を回復しようとする場合は、人を減らすという手段を使います。

しかしこれを病院で行うと業績は悪化します。

なぜでしょうか?

病院において医師、看護師、薬剤師、リハビリセラピスト、医師事務作業補助者などの生産部門職員はすべてコスト(費用)ではなくて原価だからです。

病院の収益アップに密接に関わっているもののひとつに施設基準があります。

7対1入院基本料、薬剤師病棟配置、リハビリ施設基準などを満たすためには必要な部署の人数を増やす必要があります。

しかしこれらのスタッフをコスト(費用)とみて削減してしまうとより上位の施設基準はとれなくなり、さらにマンパワー不足から来る医療の質の低下も引き起こしてしまいます。

その結果人を削減している以上に収入減が大きくなり相対的に人件費が高くなって病院経営が困窮する、という結果になってしまうのです。

医業収益を上げるには?

上記の通り人件比率を下げるために必要な人を減らしたり、給与を下げるという手法は逆効果となります。

労働集約型産業で人件費率を下げたいのであれば人件費を下げるのではなく、収益を上げるということに重きをおくべきなのです。

ですので1人当たりの労働生産性をいかに増やすか?という点に注力しなければいけません。

よって、原価部門の職員数を増やし医業収益を上げていくという方法がベストなのです。

医師事務作業補助者の役割

次に具体的に医師事務作業補助者を配置することによってどんなメリットがあるのか、医師事務作業補助者はどういう役割を負っているのか、という点を見ていきます。

機会損失コスト

機会損失という考え方があります。

これは発生した損失ではなく最善の意志決定をしないことによって、より多くの利益を得る機会を逃すことで生じる損失のことをいいます。

ですので本来時給の高い医師が代替性のある事務作業を行うことは、多大な機会損失コストが発生しています。

例えば、3,000円の診断書を1時間で4枚作成すると12,000円となります。

同じ1時間でも上部内視鏡検査を1時間で2件行うと11,400円×2=22,800円となります。

この場合10,800円が機会損失コストとなります。

つまり、医師には本来どちらをやってもらう必要があるのかということです。

代替性のある事務作業なら医師自ら行うことよりも、そこを医師事務作業補助者が行うことにより医師が診療に専念することで収益増が生まれます。

この機会損失コストというのは、かなり多くの場面で発生しているはずです。

さらに医師と医師事務作業補助者の時給の違いを見れば、診断書作成の利益率も大きく異なります。

トータルで見てどれが医師にして貰うべき業務なのか、どれを医師事務作業補助者にして貰うべき業務なのかを見極めることが大切です。

そしてそれを検討するには前提として、医師事務作業補助者を配置しておかなくてはならないということです。

つなぐ役割

外来に医師事務作業補助者を配置し業務移行を行うと、外来看護師の配置人数を減らすことも可能となり医療の効率化、看護職不足にも対応できる場合があります。

また医師事務作業補助者は医師の負担を軽減するだけではなく外来診療をはじめ、医師や他職種と患者をつなぐチーム医療におけるコーディネーター役としての機能も担うこともできます。

そして医師事務作業補助者が各種オーダーもれの確認や患者を把握することにより、診察の効率化や待ち時間の短縮にも期待できます。

さらに看護師にとっても本来の業務に専念することができ、すべてがプラス要素として働きます。

つまり、医師事務作業補助者が医療スタッフに加わるメリットはとても大きいということです。

代替性

チーム医療では代替性という考え方がとても重要です。

病院には国家資格者でしかできない業務というのがあります。

対して国家資格がなくても行える業務もあります。

そうなれば国家資格者はそれがなければできない業務に専念し労働生産性を上げる、国家資格者でなくても可能な業務は周りで支え行っていくというのがチーム医療です。

そしてまさにそこを担えるのが医師事務作業補助者だということです。

まとめ

 

医師事務作業補助者の人件費は費用ではなく原価。

そして労働集約型産業の病院では、戦略的に原価部門の人を増やすことが大事。

しかしただ増やせばいいというものではありません。

ポイントは戦略的に増やすということです。

医師のどのような業務をサポートしていくのか、それによって医師の労働生産性がどれほど上がるのか。

また医師事務作業補助者という人材をどう育成していくのか、管理、教育体制をどうデザインしていくのか。

すべてを見すえた上での方針、配置が必要です。

現在の日本の医療の水準は1人1人の医師の過重労働によって支えられているといっても過言ではありません。

ですがこれではダメだということで医師の労働環境改善、負担軽減という目的のために医師事務作業補助者という職種が生まれました。

働き方改革の面からも病院経営の面からも、医師事務作業補助者はまさしくキープレイヤーなのです。

キープレイヤーをどれだけうまく活用できるのか。

今まさに各医療機関の手腕が試されています。

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