当ブログでは今までに何度もレセプト残業についての記事をあげてきました。





残念ながら医療事務=レセプト=残業という図式は昔も今も変わっていません。
残業削減の取り組みには個人の意識改革が必要だとはよく言われます。
ですが今回はその個人の意識改革ではレセプト残業なんてちっともなくならないよね、という話をします。
目次
個人の意識改革ではレセプト残業はなくならない【医療事務と残業】
結論
職場の、特に上司の意識改革が重要です。
昔も今も「レセプト=残業」
僕はずーっと前から不思議に思っていることがあります。
それはなぜこの令和の時代になっても依然としてレセプト残業なるものが存在しているのか?ということです。
当院ではレセプト残業なんてものはすでになく、レセ期間においてもみんな定時で帰っています。
僕はこれは今の時代においてはスタンダードだと思っていたのですが、近隣の病院の状況やネット等で見聞きした感じだとむしろ少数派のようです。
いまだに多数派はレセプト残業ありきのようです。
そして病院によっては、毎月10日までは休日であっても必ず出勤であるだとか、ゴールデンウィークであっても出勤だとか、正月であっても出勤だとかというところも少なくないようです。
そりゃあレセプトは10日までに仕上げなければいけないので、その期日に間に合わせるために平日だけでは間に合わないというのであればそれは仕方のないことです。
ですがその仕事の仕方は完全に昔のやり方です。
僕が20代だった20年以上前のやり方と何ら変わりありません。
まあ同じ仕事だからそれはそうなんじゃあ・・・という感想ではそれはいけません。
なぜなら僕が20代の頃は100%紙レセプトの100%目視点検だったからです。
それこそ現在のようなレセプトチェッカーなんてものはまだ世に出てきていませんでした。
コンピューターチェックなどというものがまだなかった時代です。
だから外来レセプトだと机の上に1000枚とか積み上げて1枚1枚隅々まで見て点検していました。
手元には解釈本、薬価本、検査本などをたずさえて、レセを見ては調べて、レセ見ては確認しての繰り返しでした。
ですので当然のように時間はかかります。
まして新人だとホントにめちゃめちゃ時間がかかります。
カルテも紙カルテなので病名つけに回すだけでもすべてのカルテを用意しないといけないし、カルテがないと探さないといけないしでホントに手間がかかりました。
今考えるとものすごく効率が悪い仕事の仕方に思えますし、生産性も高くはなかったと感じますが、それでもそれが当時の最善の方法だったのでしょう。
そして基本的にはすべてが手作業、すべてが目視点検での業務でした。
そりゃあ時間がかかってしまいます。
つまりマンパワーを突っ込んで数で押し切るみたいなやり方が昔のやり方だったのです。
ですのでマンパワーを突っ込めないところでは1人当たりの業務量が増え、残業で補うしかなくなるというのは当たり前の話だったのです。
今では考えられませんが、みんなで出前をとって夕飯を食べて、そこからまた続きのレセを見るみたいなこともしていました。
それぐらいしないと終わらないほど昔のレセ点検というのは手数の勝負だったのです。
効率化などという概念が存在しない、たた単純にゴリゴリ推し進める仕事だったのです。
つまりここでは何が言いたいのかというと、そのゴリゴリ進めていた時代と現在とでは業務の質がまったく違うのに、なぜ残業時間だけは同じように残っているのか?ということです。
今やレセプトチェッカー全盛の時代です。
すべてのレセを見ることなどもう必要ありません。
病院によっては外来レセプトのチェックはコンピューターチェックのみで完結しているというところも出てきています。
そして支払基金では将来的には全体の90%をコンピューターチェックで行うともしています。
ゆくゆくはレセプトチェックは人の手から離れていくものであるというのは周知の事実です。
ですのでテクノロジーの進歩によって僕たちの周りの環境は着実に進化しているのです。
ただ一向に進化していないのはそれを扱う人間だということです。
ハッキリ言って昔も今もレセプト業務のやり方ってほとんど何も変わっていません。
レセプトチェッカーがあろうがなかろうが、目視点検にはそれ相応の時間を使うのです。
そしてそこには生産性という概念はありません。
何時間でレセプトを何枚見ようとか、今月は前月の点検時間からもっと短縮させよう、とかそんなことを意識してレセプト業務に当たっている人ってそんなに多くないと思います。
レセ期間だから残業は当然あるもの、休日出勤もやむなし、そんな職場の風潮、個人の意識が依然として強いのは間違いのない事実です。
意識改革
残業が増えてくると当然組織の上層部からは残業を削減せよとのお達しが来ます。
そしてその指令は所属長を経由して各担当者へと下りていきます。
このときキーになるのが所属長である上司の考えです。
この上司がどういう考えなのかどうかですべてが決まるといっても過言ではありません。
そもそも残業削減には意識改革が必要だとはよく聞く文言ですが、それを担当者個人の意識改革と置き換えるのはあまり意味がありません。
なぜなら、たとえ個人が意識を変えたところで、頑張ったところでその影響力は決して大きくないし、その個人でできる努力には限界があるからです。
残業削減を行うのであればその対策は職場ぐるみでないとその効果は十分に発揮されません。
そしてそのとき全体に大きく影響を与えるのが上司の残業感なのです。
つまりレセプト残業をどう捉えているか?ということです。
先ほども話したように僕たちの年代、もしくはその上の年代の上司は間違いなくこれぞレセプト残業という時代を経験してきています。
ですがその同じ経験をしてきたような上司であっても、現在のレセプト残業に対する感覚というのは真っ二つにわかれます。それは、
・レセプトに残業はつきもの。レセプト残業やむなし派。
・レセプト残業なんてもう過去のもの。レセプト残業断固否定派。
の2つです。
そしてこれは僕の個人的な感想ですが、断固否定派の上司というのはそれほど多くないのではなかろうかと思うのです。
これには2つ理由があります。
まず1つ目が、長年の蓄積された経験によって「レセプト=残業」というバイアスがもうぬぐえない人がかなり多いからです。
人間は自分の過去を美化するものです。
ですので「レセプト残業した自分=頑張った自分」なのです。
であるならば現在においてもレセプト残業をしている担当者を頑張っているなと評価する上司がいても不思議でないわけです。
またこれは女性上司に多いのですが、「私たちの時代は大変だったんだから、あなたたちも同じ苦労を経験しなさい」というトンデモ理論を持っている人もいます。
これは両者とも過去の自分に縛られているのです。
つまり自分の経験だけを頼りに判断しているとも言えます。
そして2つ目が、レセプト残業を断固否定することによって業務に支障が出ることを恐れてできないという理由です。
たとえば残業時間を減らそうとすれば、前述したような完全コンピューターチェックの体制に移行すればそれは割とたやすく叶えられます。
さすがに入院レセプトは難しいですが、外来レセプトならできるでしょう。
そうすればレセプト点検の時間がまるまる削減できます。
でもそれを行っているところってまだ一部の病院だけだったりします。
それはなぜか?その答えは精度への不安です。
目視点検が入っていないレセプトで保険請求をして大丈夫なのか?一気に査定が増えたら・・・?というような疑念です。
やはり僕たちの年代から上はレセプト点検とは人の目で行うものだという刷り込みがされていますのでそう感じるのは当たり前なのです。
ですがレセプト点検とは何も仕上がった請求する用のレセを見るだけを言うのではありません。
コンピューターチェックを行うために査定内容をフィードバックし設定を行うこともレセプトチェックでありレセプト点検です。
そう考えればそっちの方がよっぽどレセプト点検なのです。
結局のところ人の目による点検というのは、その担当者ごとの力量差が顕著に出ます。
レセプト点検の精度が均一ではないのです。
そしてまた過去の査定内容のフィードバックがきちんとなされているのかといえば、またその点も個人の力量に左右されます。
つまり、精度の高い請求を行おうとすれば人の目は減らしてコンピューターチェックを主体にしていくのは当然の流れなのです。
それはわかっていても100%コンピューターチェックにするのには抵抗がある上司が多いのもまた事実。
そしてそれならばマンパワーに頼ることになるのですが、そこで残業時間を削ってしまえば十分な精度が保てなくなるのではないかという恐れ。
結局今までの精度を担保しようとすれば、今までどおりの残業時間の確保は必要。
ということで何も変わらないままレセプト業務は今も昔と変わりなく続いているのです。
ここまで書いてくると見えてくることがあります。
それは本当にレセプト残業を減らそうと思ったら、その効果が一番高いのは誰の意識改革か?ということです。
それは言うまでもなく上司なのです。
それに比べたら個人の意識改革なんてほぼ意味をなさないのです。
だって仕事を割り振っているのは上司ですから。
マネジメントしているのは上司なのです。
だから僕はレセプト残業がなくならない原因の9割は上司にあると見ています。
というかはなからレセプト残業をなくそうとしていない上司は山ほどいると思います。
それはレセ期間だから残業があっても仕方ないでしょというおごりと、レセプト残業はゼロになんかできやしないという決めつけと、残業を抑制することによって請求の精度が落ちることは絶対避けたいという自己保身から作られた思想です。
だから残業が減らないのは上司が無能だからとなるのです。

無能だからというのは言いすぎかもしれませんが、それほど上司の思想はその部署全体の残業の増減に影響を与えるということです。
まとめ
個人の意識改革ではレセプト残業はなくならない。
これは間違いなくそうだとは思いますが、そもそもみなさん自身レセプト残業をなくそうとしているのか?
「そんなことうちの部署では到底ムリ」そう思ってはいないでしょうか。
それは全然ムリではありません。
ただ繰り返しますが個人レベルでの対策、改革では功を奏しない可能性が高いです。
そこはやはり職場ぐるみで取り組まないとなかなか上手くいきません。
そして一番変えるべきは上司の意識です。
でもそれが最も期待薄ですって。
そうかもしれません。
だとしてもこれだけは肝に銘じておいてください。
レセプト業務は時間じゃないです。
重視するのは時間ではなくて生産性を上げること。
費用対効果を意識すること。
あなたが1時間残業することで発生する残業代以上の働きをあなたはできていますか?
それができていないのであれば、さっさと帰ったほうがいいです。
残業して満足感に浸れるかもしれませんが、それではあなたは役には立っていない。
逆に足を引っ張っているのです。
何より残業に頼る仕事ぶりではあなたの市場価値はいつまでたっても上がっていきません。
レセプト残業は決してなくならないと思うのか、なくせると思うのか。
その前提がどちらなのか、決めるのはあなたです。
そしてその選択で道は大きくわかれます。
「レセプト=残業」の呪縛からはもう解き放たれましょう。